「ゆ~ん、ゆっくりしたあかちゃんだよぉ~」 
れいむは額から生えている茎に実った赤ゆっくりを眺めつつ嬉しそうに呟いた。 
「はやくあかちゃんとゆっくりしたいよ。あかちゃん!ゆっくりしないではやくうまれてね」 
そう言ったのは番のまりさだ。 

「そんなにあわてないでね。あかちゃんはもうすぐうまれてくるよ」 
れいむの言う通り赤ゆっくりはもう生まれてもいい状態だ。今日明日にも生まれてくるだろう。 
「あかちゃんがうまれたら……まりさはいっぱいあそびたいよ!あかちゃんとおいかけっこしたり……」 
「れいむはね!れいむはね!いっぱいおはなししたいよ。おうたもいっしょにうたいたいよ!」 
「あと…」 
「あとはね…」 
「「いっぱいすりすりしたいよ!!」」 
2匹は幸せの絶頂にあった。結局今日は生まれなかった。2匹は少し残念そうな顔をして眠りについた。 
「あかちゃん…もうすぐあえるね…」 
「おとうさんだよ…まりさが…おとうさん…」 
2匹の寝顔は幸せそうだった。



そして次の日、まりさが目覚めると3匹の赤ゆっくりが生まれていた。 
「れいむ!れいむぅ!!おきてよ!!うまれたよ!!あかちゃんがうまれたよぉ!!」 
まりさの声でれいむが目覚めた。2匹の目の前には赤れいむが2匹、赤まりさが1匹。れいむとまりさは嬉しそうに同時にこの言葉を発した。 
「「あかちゃん!!ゆっくりしていってね!!」」 
この言葉からゆっくりのゆん生が始まるのだ。赤ちゃんはどんな声をしているんだろう?ちゃんと挨拶言えるかな? 
れいむとまりさはわくわくしながら返事を待った。 
「「「…………」」」 
だが3匹の赤ゆっくりは何も喋ってくれなかった。 
「ゆ?ゆゆ……?ど…どうしたの?ゆっくりしていってね!!」 
「あかちゃん?おおきなこえでいってね!!ゆっくりしていってね!!」 
れいむとまりさはもう1度挨拶した。 
「「「…………」」」 
3匹は何も答えてくれなかった。 
「どぼじでぇぇぇ!!!??あかぢゃん!!!ゆっくりじでいっでね!!!」 
「れいむとまりざのあかぢゃんなのにぃぃぃぃ!!!!ゆっぐりじでいっでね!!!!ゆっくりしていってね!!!!」 
2匹は半狂乱になりながら繰り返し挨拶し続けた。それでも3匹は黙ったままだ。 
「ゆがあぁぁぁ!!!!どぼじでなにもしゃべっでぐれないのぉぉぉ!!!??」 
「あがぢゃんどうじだのぉぉ!!!??ゆっぐりでぎないの!!?どうじぢゃっだのぉぉぉ!!!!?」 
挨拶を返してくれないことをゆっくりはとても嫌う。それが我が子であればなおさらだ。 
「ゆぐっ…も…もじがじだらぁ……いやぁぁぁ!!!ぞんなのやだぁぁぁぁ!!!!」 
れいむは3匹が永遠にゆっくりしてしまったのではないかと泣き崩れてしまった。 
「れ…れいぶぅ!!そんなごど…そんなこどないよ!!!だって!!!だってあかちゃんものすごくゆっくりしたおかおだよぉぉ!!!!」 
まりさの言う通り3匹の表情はとてもゆっくりしていた。真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。そしてニッコリと微笑んだ口元。 
これが永遠にゆっくりしてしまったゆっくりの顔のはずが無い。今存分にゆっくりしている顔だ。 
「じゃ…じゃあ…どぼじでなにも…しゃべっでぐれないのぉ………」 
「そ…それは…あ…あかちゃんだからだよ!!あかちゃんだからまだしゃべってくれないんだよ!!」 
まりさは必死にれいむを慰めた。 
「そ…そうだよね!!まだあかちゃんだもんね!!れいむ…びっくりしちゃったよ!!」 
れいむの表情がコロッと変わった。いつの間にかれいむの額から生えていた茎が折れていた。 
「ゆ!!そうだよ!!あかちゃんおなかがすいてたんだね!!いまあげるからね」 
植物型妊娠で生まれた赤ゆっくりが食べる最初のご飯はこの茎だ。甘くてまろやかでとても美味しいのだ。ママの味といったところか。 
「さぁあかちゃん!!いっぱいたべてね!!」 
「とってもおいしいよ!!ゆっくりたべてね!!」 
れいむとまりさは茎を食べやすい大きさに切り3匹の赤ゆっくりの前に並べた。

シュッ

「ゆ?なんのおと?…ゆぅ……あれ?」 
「なに?どうしたの?……ゆぅぅ…なんだか…ねむくなってきた…よ…」 
「ゆぅぅぅ……ゆぅ……」 
「ゆぴぃ……ゆぴぃ…」 
突然何かスプレーのような音がした。れいむとまりさは眠ってしまった。


「ゆ!!あれ?れいむ…ねちゃったんだ」 
「ゆっくりおきるよ……ゆ!れいむ!!あかちゃんがごはんたべたよ!!」 
れいむとまりさが目覚めると赤ゆっくりの前にあった茎が無くなっていた。 
「ゆ~ん。あかちゃんがとってもゆっくりしたおかおだよぉ」 
「すりすりしようね」 
真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。そしてニッコリと微笑んだ口元。赤ゆっくりの表情は実にゆっくりとしていた。 
れいむとまりさは3匹のところへ行き親愛の印である頬擦りをした。 
「す~りす~り。ゆゆ~ん。あかちゃんとってもやわらかくてゆっくりしてるね」 
「あかちゃんとすりすりするととってもゆっくりできるよ」 
気付けば辺りは薄暗い。れいむとまりさは赤ゆっくりにすりすりしながら再び眠りについた。



(おちょうしゃんといっぴゃいおいかけっこすりゅんだじぇ!) 
(おきゃあしゃんといっぴゃいおうちゃうちゃいちゃいよ!) 
(おきゃあしゃんといっぴゃいおはなちちたいよ!) 
(いっぴゃいしゅりしゅりしちゃいよ!! ) 
(ゆ?にゃんだかあっちゃかいよ) 
(にゃんだきゃおしょらをういちぇるみちゃい) 
(ゆ?あんよしゃん?) 
3匹の赤ゆっくりが眠っていた。1匹の赤まりさがふるふると震えそして目をパッチリと開けた。 
「ゆっくちうまれちゃよ!!まりちゃはまりちゃだよ!!」 
その声に連鎖するように残りの2匹の赤れいむもふるふると震え目をパッチリと開けた。 
「りぇいむはりぇいむだよ!!ゆっくちうみゃれちゃよ!!」 
「れいみゅはれいみゅだよ!!ゆっくちちていっちぇね!!」 
3匹はキョロキョロと辺りを見回した。まず目に入ったのは自分の姉妹。3匹はすぐ仲良くなった。 
「まりちゃがしゃきにうまれちゃんだじぇ!だきゃらまりちゃがおにぇえちゃんだじぇ!」 
「りぇいむはりぇいむだよ!ゆっくちよろちくにぇ!」 
「おきゃあしゃんは?ゆぅ…おきゃあしゃんにあいちゃいにぇ!」 
3匹は部屋中を見回した。すると少し先に大きなゆっくりが2匹。リボンを付けたゆっくりと帽子を被ったゆっくりだ。 
「ゆぅ!!あしょこにいりゅよ!!」 
「おきゃあしゃぁん!!おちょうしゃぁん!!」 
「まりちゃがいちばんのりなんだじぇ!!」 
3匹は一目散に駆けた。一番乗りは元々体力がある赤まりさだ。 
「ゆ~んおきゃあしゃん!!おちょうしゃん!!ゆっくちちていっちぇね!!」 
遅れて2匹の赤れいむもやってきた。 
「りぇいむはりぇいむだよ!!おきゃあしゃん!!おちょうしゃん!!ゆっくちちていってにぇ!!」 
「れいみゅはれいみゅだよ!!ゆっくりちていっちぇね!!」 
ちょっとだけ間があいた後に大きな2匹のゆっくりが声を出した。 
「「ゆっくりしていってね!」」 
「「「ゆぅぅ!!ゆっくちちていっちぇにぇ!!」」」 
赤ゆっくり達は生まれて初めての挨拶に喜び2匹の大きなゆっくりに飛び付いた。 
「ゆ~ん。おきゃあしゃんやわりゃきゃくちぇきもちいいにぇ!」 
「しゅ~りしゅ~り」 
「ゆ~ん。ゆ、にゃんだきゃおにゃかしゅいてきちゃったよ!」

ポトッ

「ゆ?にゃに?」 
何かが落ちる音がした。3匹は後ろを向いた。 
「ゆぅぅ!!ごはんしゃん!!」 
「おいちしょうだよ!」 
「しゃっしょくたべりゅんだじぇ!!」 
3本の緑色の茎が並べられていた。3匹は茎に齧り付いた。 
「むーちゃむーちゃ。ゆぅ~ちあわちぇぇぇ!!」 
「あみゃくちぇおいちいよ!しあわしぇぇ!!」 
「むーちゃむーちゃ。へぶんじょうちゃい!!!」 
生まれて初めての食事に舌鼓を打った。満腹になると目付きがトロンとなった。 
「ゆぅ~。にゃんだきゃねみゅくなっちぇきちゃよ…」 
「おにゃかいっぴゃいなんだじぇ……」 
「ゆっくちおやちゅみすりゅよ……」 
3匹はそのまま眠りに付いた。



 *** 
「どうだ?」 
「完全に騙されちゃってますよ。疑おうともしない」 
「やっぱ餡子脳だもんなぁ」 
「実験は成功ってとこか」 
「もう少し様子見ましょう。明日辺りにはもう何かしら気付きますよ」 
「明日は手出しするのはやめとくか」 
「それがいいですね」 
 ***



そして次の日になった。 
「ゆぅぅぅぅ!!!!どうじであいさつしてぐれないのぉぉ!!!?」 
「どぼじでごはんたべないのぉぉぉ!!!!?」 
れいむとまりさは泣き出していた。いくら挨拶しても赤ゆっくりが応えてくれない。ご飯を置いても食べようともしないのだ。 
「あ…あがぢゃん!!ごはんだよ!!ごはんたべようね!!」 
れいむは口移しでご飯を食べさせようとしたが赤ゆっくりは口を開けようとはしなかった。 
「たべでよぉぉ!!!おいじいよ!!ごはんたべないどゆっぐりでぎないよぉぉ!!」 
ご飯は赤ゆっくりの口の中に入ることなく床に落っこちた。 
「どぼじでぇぇ!!!?きのうはたべでぐれだのにぃぃ!!!」 
「あがぢゃん!!もじがじでゆっぐりでぎないの!!?ゆっぐりでぎないならそういっでぇぇ!!!」 
だが赤ゆっくりの表情はゆっくりとしていた。真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。そしてニッコリと微笑んだ口元。 
どう見たってとってもゆっくりした表情だ。 
「ぞ…そうだ!!おうただね!!おかあさんのおうたがききたいんだね!!!うたうよ!!うたうからゆっくりしてね!!」 
れいむはお得意のお歌(笑)を歌い始めた。 
「ゆ~。ゆっくりのひ~♪まったりのひ~♪」 
音程バラバラで何処がどう上手いのか良く分からないがゆっくり視点では上手い部類らしい。 
「ど…どう?ゆっくりできたでしょ!!あかちゃん!!ゆっくりしていってね!!!」 
「「「…………」」」 
反応は無い。 
「ゆがああぁぁ!!!どぼじでなにもしゃべっでぐれないのぉぉ!!!?」 
半狂乱になるれいむ。今度はまりさが何か閃いた。 
「わかったよ!!あかちゃんはからだをうごかしたいんだよね!!……ゆ~ん!!ここまでおいでぇ!!!」 
まりさは数歩駆けた。赤ちゃんはきっとおいかけっこがしたいんだよ。赤ちゃん早くここまできてね!! 
「「「…………」」」 
反応は無い。うんともすんとも言わない。微動だにしない。不気味な静けさが走った。 
「ゆがぁぁぁぁ!!!!!どうじではじっでごないのぉぉぉ!!!!?」 
まりさも半狂乱となった。そんな2匹にお構いなく赤ゆっくりの表情はゆっくりとしていた。 
真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。そしてニッコリと微笑んだ口元。さっきから何も変わらないとてもゆっくりした表情だ。 
「これじゃいっじょにゆっぐりでぎないよぉぉ!!!おはなじじだいぃ!!いっじょにおうだうだいだがっだのにぃぃ!!!」 
「わがらないよぉぉ!!!どうなっでるのぉぉぉ!!!?うごいでよぉぉ!!!」 
2匹はゆっくりできていなかった。でも3匹の赤ゆっくりはゆっくりしていた。赤ゆっくりの表情はゆっくりとしていた。 
真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。そしてニッコリと微笑んだ口元。6つの瞳は真っ直ぐに2匹の方向を向いていた。 
「ゆぎぎぎぃぃ!!!どぼじであがぢゃんはゆっぐりじでるのぉぉ!!!?」 
「どぼじでゆっぐりじでるのぉぉ!!?でいぶだちはゆっぐりでぎないのにぃぃ!!!」 
自分達がゆっくり出来てないのに赤ちゃん達はゆっくりしている。それがまず2匹にとって不思議だった。 
元はといえば赤ちゃん達がご飯を食べない、喋ってくれない、動いてくれないから自分達が困っているというのに。 
「ゆがぁぁぁ!!!!ゆっぐりじでるんだっだらしゃべっでね!!!ゆっぐりじでいっでね!!!」 
「そうだよ!!!ゆっぐりじでるんだったらちゃんどあいさつじようね!!!」 
「「「…………」」」 
やっぱり返事は無い。でも表情はそのまま。真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。そしてニッコリと微笑んだ口元。もう何回目だ? 
「ゆがぁぁぁぁぁ!!!どうじでぞんなにゆっぐりじでるのぉぉぉぉ!!!!!!??」 
「もうおごったよ!!!!おとうさんがおしおぎずるよ!!!!」 
相手が子であっても自分だけがゆっくり出来ないのは我慢できないようだ。まりさは赤ゆっくりに突進した。 
「ま…まりざぁ!!だべぇぇ!!!!そんなごどじだらゆっくりでぎなぐなっぢゃうぅぅ!!!!」 
れいむはまりさを止めようとしたがまりさは止まらず赤ゆっくりを突き飛ばした。 
「ゆふぅ……ゆふぅ…いまならあやま……ゆ!!ゆぅぅぅぅ!!!!!」 
まりさは呻いた。弾き飛ばされた3匹は少し先でバラバラに着地したが3匹ともゆっくりとした表情のままなのだ。 
「まりざぁぁ!!!あがぢゃんがゆっぐりでぎ…」 
「ゆがあぁぁぁぁぁぁぁ!!!どぼじでゆっぐりじでるんだぁぁぁ!!!!?」 
まりさは赤れいむの所へ走った。そのまま突き飛ばしたが赤れいむは壁にぶつかりながらも表情はゆっくりとしたままだった。 
「ゆぎぃぃぃ!!!!ゆっぐりでぎないげすはせいっさいだよ!!!!」 
まりさは一心不乱に赤れいむを踏み潰した。 
「いだいでじょ!!!いだいでじょ!!!あやまっでね!!!あやまっだらゆるじであげるよ!!!」 
「…………」 
「ゆぎゃああぁぁ!!!でいぶのあがぢゃんがぁぁぁ!!まりざぁぁぁ!!!いいかげんにじでね!!!」 
「ゆぎぇっ!!!!」 
れいむは潰される我が子に悲鳴を上げまりさに突進した。まりさは吹っ飛ばされた。 
「まりざぁぁぁ!!!なにやっでるのぉぉぉ!!!!あがぢゃんがじんじゃうでじょぉぉぉ!!!」 
「ゆぎっ!!で…でぼ……ゆ!!!ゆがああぁぁぁ!!!まだあんなかおじでるぅぅぅ!!!!」 
あんなに痛めつけたはずなのに赤れいむの表情は全く変わらない。少しぺちゃんこになってるが表情はゆっくりしたままだ。 
「どうなっでるのぉぉぉ!!!?どぼじでゆっぐりじでるのぉぉぉ!!!!?」 
「ま…まりさ?」 
まりさの慌て様にれいむが焦った。 
「そのごおがじい!!!!どぼじでへいぎなのぉ!!!?ゆっぐりでぎないよぉぉぉ!!!」 
「ゆ…ゆぅ?」 
れいむは赤れいむを見た。普通あんなに痛めつけられたなら泣いたり苦痛に顔を歪ませているはずなのにゆっくりとした表情なのだ。 
「な…なんで?ど…どうなっでるの?」 
れいむも慌てだした。おかしい!!この子達はおかしすぎる!! 
「こんなゆっぐりじでないゆっくりはまりざのおちびぢゃんじゃないよ!!!」 
まりさはターゲットを赤まりさに変えた。赤まりさを突き飛ばし何度も何度も踏み潰した。 
「ゆ………ゆ……」 
れいむはその異様な光景に固まっていたが何度も踏み潰されている赤まりさの表情が全く変わらず微笑んだままなのに戦慄を覚えた。 
「ゆぅぅぅ!!ごわいよぉぉ!!!!どぼじでわらっだままなのぉぉぉ!!!?」 
「でいぶもやるんだよ!!!!あがぢゃんは……ごいづらが!!こいづらがどこかにかくじだんだよぉぉぉ!!!」 
れいむも赤ゆっくりを攻撃し始めた。とにかく不気味でしょうがない。もう赤ちゃんがどうのとか関係無くなった。 
「このっ!!!ごのっ!!!ごのぉぉぉ!!!」 
「ゆっ!!ぐり!!でぎない!!げすは!!せいっさい!!だよ!!!この!!このぉ!!!」 
れいむとまりさは何度も何度も3匹の赤ゆっくりを踏み潰した。 
「じねぇ!!!ゆっぐりでぎないげすはゆっぐりじないでじねぇぇぇ!!!!」 
「あがぢゃんのかだぎだぁぁ!!!じねぇぇぇ!!!」 
何度も何度も突き飛ばした。 
「ゆふぅ…ゆふぅ……」 
「これで………かたぎは…とっだよ……」 
自分達が知りうる攻撃は全て喰らわせた。流石にもう死んだだろう。2匹はそう思っていた。 
「ゆぅぅぅ!!!!まだゆっぐりじでるぅぅぅ!!!!」 
「どぼじでじなないのぉぉ!!?なんでわらっでるのぉぉぉ!!!?」 
3匹はまだ表情を変えていなかった。何度も踏み潰されたせいで若干潰れておりボロボロだがそれでもまだゆっくりとした表情だ。 
そして3匹の6つの瞳は真っ直ぐに2匹の方向を向いていた。 
「ごっぢみるなぁぁぁ!!!ゆっぐりでぎないぃぃぃ!!!!」 
「ごわいよぉぉぉぉ!!!!ごっぢみないでぇぇぇぇ!!!!」 
れいむとまりさは3匹にじっと見つめられていた。濁りの無い真っ黒でつぶらな瞳が6つこちらをじっと見ているのだ。 
「ごっぢみるなぁぁぁぁぁ!!!!!あっぢいげぇぇぇ!!!!」 
まりさが1匹づつ遠くに弾き飛ばした。2匹は明後日の方向を向いたが1匹だけまだこちらを微笑みながら見つめていた。 
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!!!こ…ごわいよぉぉ!!!!ぼういやだぁぁぁ!!!!」 
れいむはあまりの恐ろしさに成体ゆっくりにもかかわらずしーしーを漏らしていた。 
「ごっぢみるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ゆぎぃぃぃぃぃぃ!!!」 
まりさは怒り狂ってこちらを見つめていた赤ゆっくりをさらに痛めつけた。何度も踏み潰し髪の毛を咥えて遠くに投げ飛ばしたりした。 
「ゆっぐりずるなぁぁぁぁ!!!!さっざとじねぇぇぇぇ!!!」 
漸くその1匹も違う方向を向いてくれた。これでれいむとまりさを見つめる赤ゆっくりはいなくなった。 
「ばりざぁぁぁ!!!ごわいよぉぉぉ!!!!でいぶをひどりにじないでぇぇぇ!!!」 
れいむはまりさにしがみ付いた。 
「でいぶぅぅぅ……まりざだって…こわがっだよぉ……」 
2匹は隅っこで固まって宥め合っていた。結局その場所から一切動かずその日はそこで眠りについた。



多分ほとんどの読者の方はお気づきであろう。勿論3匹の赤ゆっくりはゆっくりではない。その正体は…ぬいぐるみである。 
新製品開発計画でゆっくりのぬいぐるみを試作したのだ。様々な用途が期待されている。まずは純粋に人間の玩具として。 
飼いゆっくりの玩具として。この他に野良ゆっくり避けに利用できる可能性がある。今回は野良ゆっくり避けに利用できるか調べているのだ。 
まずぬいぐるみを本物のゆっくりと勘違いしてくれなければならない。そのためまずぬいぐるみの弾力や肌触りをゆっくりに近づけた。 
さらに飾りは本物のゆっくりから採取したものだ。ゆっくりは飾りで個体を認識するという。ゆっくりが飾りを大事にするのはそこにある。 
え?飾りを取られたゆっくりはどうなったのかって?さぁね。食料にされたか捨てられたか潰されたかのかもね。どうでもいいことだ。 
一方れいむとまりさはペットショップから調達したものだ。少し前の銀バッジ試験に受からなかった落ちこぼれだ。 
植物型妊娠させてから加工所内部の1室であるこの部屋に運ばれたのだ。透明な箱の中に入れられ観察されている。 
赤ゆっくりは茎から落ちる直前にそっと加工所職員がハサミで切り落とし親ゆっくりとは別の箱の中に入れられている。 
れいむとまりさが入っている箱には本物の赤ゆっくりの代わりに赤ゆっくりのぬいぐるみを3つ置いておいた。 
ちなみに3匹の赤ゆっくりが入っている箱には成体ゆっくりのぬいぐるみが2つ置いてある。 
実験では人間の姿は見せないようにしている。人間を見れば親がどうの子がどうのとゆっくりが五月蝿くなりそうだからだ。 
では3匹の赤ゆっくりがいる箱の様子を覗いてみよう。



「おきゃあしゃぁぁん!!へんじちでよぉぉぉ!!!ゆっきゅりちていっちぇね!!ゆっきゅりちちぇいってにぇ!!」 
「どびょじでへんじちちぇくれにゃいにょぉぉ!!!?りぇいみゅのこちょがきりゃいなにょぉぉ!!?」 
「ゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!!まりちゃにあいちゃちゅちてよぉぉぉ!!!」 
生まれた次の日、こちらも早速問題が発生していた。親が返事してくれないのだ。 
「もちかちてちんじゃっだのぉぉぉ!!!?やぢゃぁぁぁぁ!!!ゆぇぇぇぇん!!!」 
「まぢゃおはなちちてにゃいよぉぉ!!おうちゃだっちぇまだなにょにぃぃぃ!!」 
「まりちゃをひちょりにしにゃいでよぉぉぉ!!!ゆわぁぁぁぁん!!!!」 
この様子を観察していた加工所職員は顔を見合わせた。今日は一切の介入はしないつもりなのだ。実はぬいぐるみには仕掛けがある。 
内部にレコーダーが入っておりリモコン操作で音声が出るようになっているのだ。昨日は生まれたばかりだったので何回か返事をさせた。 
だがこのままでは親を死んだと思い込んでしまい後の実験に支障をきたしそうだ。 
「「ゆっくりしていってね!」」 
仕方が無いので今だけリモコンを押した。とりあえずこれで親は死んでいないと分かってくれるだろう。 
「ゆぅぅぅぅ!!!おきゃぁしゃぁん!!おちょうしゃぁん!!」 
「ゆっくちしちぇいってにぇ!!ゆっくちしちぇいってにぇ!!」 
「ゆぎゅっ……よきゃっちゃよぉ…こりぇでゆっくちできりゅよ!!」 
赤ゆっくり達がぬいぐるみと頬擦りしている隙に箱の中に餌を入れた。この後は何が起きようとも絶対に介入しない。 
「おきゃぁしゃん!!りぇいみゅはおうちゃがうたいちゃいよ!!」 
「おちょうしゃん!!まりちゃはおちょうしゃんとおいかきぇっこしちゃいよ!!」 
「れいみゅはね!れいみゅはね!おはなちがちたいよ!」 
朝食後赤ゆっくり達は親ゆっくりと遊びたいとせがんだ。 
「「…………」」 
しかし返事は無い。そりゃそうだ。ぬいぐるみだもん。 
「ゆ?ゆ?」 
「おちょうしゃん!!おちょうしゃぁん!!」 
「れいみゅはね……ゆ~おきゃあしゃんがだいちゅきだよ!!おきゃあしゃ……おきゃあしゃん?」 
「「…………」」 
何度問いかけても返事をしてくれない。 
「おうちゃ!!おうちゃぁ!!うちゃってよぉぉ!!!れいみゅとうちゃおうよぉぉぉ!!」 
「どびょじでこっちきちぇくりぇないにょぉぉ!!!?おいかきぇっこちようよぉぉぉ!!うぎょいちぇよぉぉ!!」 
「にゃにかいっちぇよぉぉぉ!!!おはなちちちぇね!!れいみゅのこちょがきりゃいなのぉぉ!!?」 
「「…………」」 
返事は無い。微動だにしない。次第に赤ゆっくり達は泣き喚き出した。 
「どびょじでうぢゃっでぐりぇないのぉぉぉ!!!!!?うぢゃいぢゃいぃぃ!!!おきゃあじゃんとうぢゃいぢゃいのにぃぃぃ!!」 
「おぢょうじゃぁぁん!!!!はちりょうよぉぉ!!!うごいぢぇね!!うごいぢぇぇぇ!!!」 
「ゆぇぇぇぇん!!!おはなぢちちゃいぃぃ!!!れいみゅのこちょきりゃいになりゃないでよぉぉぉ!!!!」 
「「…………」」 
「「「ゆぇぇぇぇぇぇん!!!!むちちないでぇぇぇぇ!!!!」」」 
3匹は必死に親を呼びかけた。顔をうずめて押し出そうともした。 
「ゆっくちちていっちぇね!!ゆっくちしちぇいってにぇ!!」 
「「…………」」 
「ゆわぁぁぁぁあん!!!どびょじでむちちゅるのぉぉぉ!!!!ゆっくちでぎにゃいぃぃぃ!!!」 
「おちょうしゃん!!まりちゃにいじわりゅちないでにぇ!!ゆぅぅぅぅぅ!!!!ゆぅぅぅぅ!!!うぎょいちぇね!!」 
「…………」 
「ゆぅぅぅぅぅ!!!!!うぎょいてよぉぉぉ!!!!はちってよぉぉぉ!!!まりぢゃど…あしょんでよぉぉぉ!!!」 
「おはなじじでよぉぉぉ!!!なんでみょいいきゃらおはなちじようよぉぉぉ!!!」 
「「…………」」 
「ゆわぁぁぁぁん!!!ひぢょいよぉぉぉ!!!」 
そのうち3匹は親から離れ3匹で遊び始めた。自分達が嫌われていると思ったのだ。 
「ゆ……っきゅ……ゆぅぅ……」 
「おきゃあしゃぁぁん……ゅぇぇ……ゅ…ゅ…」 
「ゅ……ゅ……」 
「「「ゆわぁぁぁぁぁぁん!!!!」」」 
一番親に甘えたい時期だ。なのに親は全く相手にしてくれない。3匹で遊んでいてもやっぱり頭の中は親との楽しい一時を思い浮かべていた。 
「おきゃぁしゃぁぁん!!」 
時々赤ゆっくりが大きなぬいぐるみのもとへ走った。もしかしたら今から遊んでくれるかもしれないと淡い期待を抱いて。 
「「…………」」 
何度も何度も赤ゆっくりはやってきた。まだ微かに期待を抱いているのだ。だがその期待は悉く潰された。 
「むぢぢないぢぇぇぇぇ!!!」 
「ゆっくちぢようよぉぉぉ!!ゆっぐちぃぃぃぃ!!」 
「ぎりゃいになりゃないでぇぇぇ!!いっじょにゆっぐぢぢようよぉぉぉ!!」



 *** 
「全く疑ってませんよ」 
「ほとんど結果は出たな。まだ期間が余ってるけどここで終わりにしちゃうか?」 
「もう1日だけ見てみましょうよ。まだ2日じゃないですか。それに少し面白いこと考えちゃいましたよ」 
「何だ何だ?」 
「実はですね……」 
 ***



「ゆ……ゆぅ……ゆ!!!いないよ!!!よ…よがっだぁ…」 
「ま…まりさ?どうしたの?」 
「みてよ!!れいむ!!!あのゆっくりできないこたちがいなくなったよ!!!」 
「ほんとだ!!!よがっだよぉ…これで…ゆっくりできるね!!」 
次の日れいむとまりさが目を覚ますと昨日散々痛めつけてもゆっくりしていたあの赤ゆっくり達が消えていた。 
「れいむぅ……」 
「まり……ゆぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 
れいむはまりさを見て悲鳴を上げた。 
「れ…れいむ?」 
「どぼじでそごにいるのぉぉぉぉ!!!!ごわいよぉぉぉぉ!!!!」 
「ど…どうしたの?ゆ…?ゆ…?」 
「のっでる!!!まりざのおぼうじざんのうえにのっでるよぉぉ!!!!」 
「ゆぎぃ!!!!うぞでじょぉぉぉ!!!!」 
まりさの帽子の上に赤ゆっくりのぬいぐるみが2つ乗っかっていた。しかも新品のぬいぐるみだ。 
「ゆぎぃぃぃぃ!!!!はなれでぇぇぇぇ!!!!はなれでよぉぉぉ!!!」 
まりさは一心不乱に帽子を揺らした。だが離れる気配は無い。それもそのはずだ。糊でくっ付けているのだ。 
「でいぶぅぅ!!!どっでぇぇぇ!!!ごれどっでよぉぉぉ!!!」 
堪らずれいむに助けを乞うた。だがれいむは怖くて中々近づけなかった。 
「みずでないでぇぇぇぇ!!!ごわいぃ!!どっでよぉぉぉ!!でいぶぅぅ!!!でいぶぅぅ!!!」 
「ゆ…ゆ……ゆ…」 
れいむは怖がりながらも1歩ずつ近付いた。 
「ゆわぁぁぁぁ!!!はやぐぎでぇぇぇ!!はや……ゆ…ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 
突然まりさが悲鳴を上げた。 
「でいぶぅ!!!いる!!!いるよぉぉぉ!!!でいぶのおりぼんざんに…いるぅぅぅぅ!!!!」 
れいむのリボンに赤ゆっくりのぬいぐるみが1つくっ付いていた。勿論糊付けしてある。 
「う…うそでじょおぉぉ!!!!だっで!!だっできのうせいさいじだのにぃぃ!!!!」 
れいむとまりさは何やら喚き散らしながら走り出した。そうすればぬいぐるみが離れてくれると思ったからだ。 
「どれだぁ!!?とれだよね!!……ゆわぁぁぁ!!!どれでないよぉぉ!!!!」 
「どぼじではなれでうれないのぉぉ!!!!あっぢいっでよぉぉ!!」 
自分の事に精一杯で最早番のことを心配している余裕は無かった。 
「おでがいだがらぼうじざんがらはなれでよぉぉぉ!!!」 
「でいぶのおりぼんざん!!おりぼんざん!!ゆっぐりでぎなぐなるぅぅぅ!!!」 
そのうち壁に頭をぶつけるようになった。こうすればぬいぐるみが離れてくれると思ったからだ。 
「いだいぃぃ!!おでがいだがらあっぢにいっでね!!!ばりざのぼうじからはなれでよぉぉぉ!!!」 
「おりぼんさんがらはなれでぇぇぇ!!!ぼういぢゃいのはやぢゃぁぁぁぁ!!!」 
だがぬいぐるみは離れない。 
「いやぁぁぁぁ!!!はなれでぇぇぇ!!!はなれ……ゆ…ゆあぁぁぁぁぁぁぁ………」 
まりさが顔を真っ青にした。 
「ゆあぁぁぁぁ!!!ごべんなざい!!ごべんなざい!!!」 
まりさは急に謝り始めた。 
「ど…どうじだの?…まりざ…まりざぁ…」 
「ゆるじでぐだざいぃ!!ぎのうせいざいじですいばぜんでじだぁ!!!すいまぜんでじだぁぁぁぁ!!!!」 
昨日まりさはこのぬいぐるみに何をしただろうか。蹴飛ばした。踏み潰した。投げ飛ばした。突き飛ばした。 
その仕返しをされていると思ったのだ。だから今帽子の上にいる。まりさを踏み潰しているのだ。 
「ごべんなざいぃ!!!ごべんなざいぃ!!ばりざがわるがっだでずぅぅ!!ゆるじでぐだざいぃぃ!!!ゆるじでぐだざいぃ!!!」 
そのうちれいむもどういうことか理解したようだ。れいむもまりさと同じ事をこのぬいぐるみにしたのだ。 
「ゆるじでぇぇぇ!!!でいぶをゆるじでよぉぉぉ!!!ごべんなざい!!ぎのういじわるじでごべんなざいぃぃぃぃ!!」 
れいむとまりさはずっと謝り続けた。だがぬいぐるみはうんともすんとも言わない。微動だにしなかった。 
「ゆぁぁぁぁ!!!」 
まりさはついに帽子を脱ぎ捨てた。 
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!!そ…ぞんながおじないでぇぇぇぇ!!!」 
真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。そしてニッコリと微笑んだ口元。2つのぬいぐるみが帽子にちょこんとくっ付いていた。 
2日前と全く同じ表情。何も変わっていない。微笑みながらまりさをじっと見つめていた。 
「いやぁぁぁぁ!!!ゆるじでぇぇぇぇぇ!!ぼういやだぁぁぁ!!ごっぢみないでぇぇぇぇ!!!!」 
まりさは帽子を遠くに投げ飛ばした。 
「いやぁぁぁ!!ばりざぁぁ!!!!どっでぇぇぇ!!でいぶの!!でいぶのおりぼんざんもどっでよぉぉぉ!!!!」 
れいむもリボンを外そうとした。が、自分ではリボンを外せない。 
「ゆぎゃぁぁぁ!!!はやぐぅぅぅ!!!はやぐどっでぇぇぇぇ!!!」 
まりさはれいむのリボンを取り外すと遠くに投げ飛ばした。 
「ばりざぁ!!ばりざぁぁぁ…」 
「でいぶぅぅ……」 
2匹はぴったりとくっ付いてガクガク震えていた。 
「ごわいよぉ……ごわいよぉぉ…ゆるじでぇ…」 
「ゆぅぅぅ……ゆぅぅ……ぼう…いじわるじないでぇ…」



 *** 
「最高だったな!!こりゃ面白いわ」 
「もう1日だけ延長しちゃいます?」 
「これは実験だよ。個人的にやれよ」 
「餓鬼の方はどうだった?」 
「昨日と変わらずだよ。しくしく泣いて時々ぬいぐるみに近寄って…の繰り返し」 
「じゃ、実験はここまでだな」 
「予想以上でしたね。まさか本物と間違えてくれるなんてね」 
「ここまで勘違いしてくれるなら駆除用じゃないぬいぐるみは少しゆっくりと差を付けた方がいいですね」 
「飼いゆっくりが本物と間違えてしまうと色々問題が起きそうですね。で、具体的にどう差をつけるんですか?」 
「例えば飾りの色を変えるとか…髪の毛の色を変えるとか…肌触りも変えたほうがいいですね」 
「まりさの帽子が紫色だったり髪の毛が赤かったり…」 
「そして"うふふ"って鳴くんですね。分かります」 
「とりあえず実験は成功だ。報告書提出すれば終了だ」 
「あの、奴らどうするんですか?」 
「あぁ。ゆっくりか。そうだな…戻しておいてやれ」 
「そうですね。実験に付き合ってくれたんですしやっぱり実の親子が一番ですよね」 
「明日朝にでも一緒の箱に入れてやろう。それがいい」 
ちゃっちゃと報告書を書き終え職員達は退社した。


「いっけね。忘れ物したわ」 
1人の職員が忘れ物を取りに部屋に戻ってきた。 
「ゆぅぅぅ……」 
「あがぢゃぁん……ゆぅぅ……」 
ゆっくり達の寝言が聞こえた。時刻はまだ夜8時にもなってないが辺りを暗くしたためかもう眠っているのだ。 
彼はふと赤ゆっくり達が入っている箱の中を覗いた。 
「ゆぅ………ゆぅ……」 
「ゆ……ゆぅん……」 
2匹は少し寂しそうな顔をして眠っていた。 
「…ゆっく……おきゃ……しゃん…まっちぇぇ……ゆ…ぇぇ……」 
1匹の赤れいむだけ涙を流しながら眠っていた。可哀相に、夢の中でも親のことを考えているようだ。 
「……。少し可哀想だな」 
少し気の毒に思った。彼は部屋の電気を消してからそっと赤れいむを掌に乗せた。非常口の蛍光灯だけが光っていた。 
「ゆ?」 
赤れいむが目を開けた。だが真っ暗で自分がどこにいるのか目の前に誰がいるのかさっぱり分からなかった。 
「明日、お前達の本当のお母さんとお父さんに会わせてあげるよ」 
優しい口調でそう囁くと赤れいむを元の場所に戻した。せめて良い夢くらいはみせてやろうと思ったのだ。 
「ゆぅ?……おきゃあ…しゃん?………ゆぅ……ゆ……」 
赤れいむはまどろんでいた。すぐに夢の世界に戻ってしまった。今のもどうせ夢の中のことなんだろう…。 
 ***



「ゆぅ……ゆっくち…おきりゅよ…」 
次の日赤まりさが目覚めた。目の前には大きなゆっくりが2体。どうせ…今日も相手してくれないんだろうな。赤まりさはそう感じていた。 
「ゆぅ……ごべん…な…ざい…」 
「ゆるじでぇ……」 
「ゆ!!!」 
赤まりさは目を疑った。昨日一昨日と全く相手にしてくれなかった親が今日は何かを喋っているのだ。しかも動いている。 
「りぇいみゅ!!りぇいみゅ!!おきりゅんだじぇ!!ゆっくちちないでおきりゅんだじぇ!!」 
いつの間にか生まれたときのだぜ口調が戻っていた。赤まりさは大いに期待しているのだ。 
「ど…どうちたの…」 
「おにぇえちゃん…どうちたの?」 
「ゆっくちちないでおみぇみぇをあけりゅんだじぇ!!おきゃあしゃんとおちょうしゃんがうぎょいてりゅんだじぇ!!」 
「「ゆ!!」」 
赤れいむ達はびっくりして目を覚ました。 
「ゆぅ……ゆるじでぇ…」 
「やべでぇぇ……ごないでぇ…」 
れいむとまりさは悪夢にうなされているようだ。 
「ゆ!!ほんちょうだよ!!」 
「しょういえば!!ゆん!!れいみゅきにょうゆみぇをみちゃよ!!」 
「ゆみぇ?」 
「あちたになっちゃらほんちょうのおきゃあしゃんとおちょうしゃんにあわしぇてくりぇりゅって!!」 
「ゆぉぉ!!じゃあありぇがまりちゃたちの!!」 
「ほんちょうのおきゃあしゃんとおちょうしゃんなんだにぇ!!」 
3匹は目をキラキラさせた。 
「ゆぅ…なんのさわぎなの?」 
「ゆわぁぁぁ!!……ゆ…ゆめ?」 
3匹の声にれいむとまりさが目を覚ました。 
「ゆ!!おみぇみぇがあいちゃよ!!」 
「ゆゆゆぅ…」 
「「「おきゃあしゃぁん!!!おちょうしゃぁん!!!ゆっくちちちぇいっちぇね!!!」」」 
3匹は一斉にれいむとまりさの所へ駆けていった。 
「ゆぅぅぅ!!!」 
「ど…どぼじでぇぇぇ!!」 
「「どぼじでうごいでるのぉぉ!!どぼじでごっぢぐるのぉぉ!!!!!」」 
れいむとまりさにとっては悪夢再来といったところであった。しかも2匹は夢の中でもうなされていたのだ。 
「ごっぢぐるなぁぁぁぁ!!!」 
「でいぶはにげるよぉぉぉ!!!ごないでぇぇぇ!!!」 
れいむとまりさは逃げ出した。 
「ま…まっでよぉぉぉ!!!」 
「ゆあ!!おいかきぇっきょだにぇ!!まりちゃがちゅかまえりゅんだじぇ!!」 
「ゆぅ!!れいみゅもぎゃんばりゅよ!!」 
3匹は追いかけっこだと勘違いしていた。 
「まちゅんだじぇぇ!」 
「おきゃあしゃんはりぇいみゅがちゅかまえりゅよ!」 
「おちょうしゃんはれいみゅがちゅかみゃえるよ!」 
3匹は笑顔だ。だがれいむとまりさにとってはその笑顔が何よりも恐ろしかった。そして赤ゆっくり特有の真っ黒でつぶらでキラキラした瞳。 
れいむとまりさの脳裏にはあの微笑を湛えたぬいぐるみが浮かんでいた。 
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!ゆるじで!!!ゆるじでよぉぉお!!!」 
「あやばっだのにぃぃ!!!いっばいあやばっだでじょぉぉぉお!!!」 
れいむとまりさは3匹を潰そうとはしなかった。潰そうとしても潰れない。そんな事をしたらお仕置きされる。そう考えていたからだ。 
「ゆぅ~んちゅかりぇたんだじぇ…」 
赤ゆっくりの体力はすぐに無くなる。3匹はもう疲れきっていた。 
「おきゃあしゃん!れいみゅちゅかれちゃったよ!こっちきちぇよ!しゅりしゅりしようよ!」 
「りぇいみゅもつかりぇちゃった!やっぴゃりおきゃあしゃんとおちょうしゃんはしゅごいにぇ!」 
3匹は笑顔でそう言った。 
「ゆぁぁぁぁ!!!ぐるなぁぁぁぁ!!!ごっぢぐるなぁぁぁぁ!!」 
「いやぁぁぁぁ!!!すりずりなんがじだぐないぃぃぃ!!!」 
れいむとまりさの拒否反応に3匹は戸惑った。 
「ゆ…にゃ…にゃにいっちぇるんだじぇ?」 
赤まりさが少し近付いた。 
「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!ぐるなぁぁぁ!!!」 
「でいぶはにげるよぉぉぉ!!ぼうゆるじでぇぇえ!!!!」 
れいむとまりさは再びパニックになり逃げ惑った。 
「ゆぅぅぅぅぅ!!!しゅりしゅりしちゃいよぉぉぉ!!!」 
「どびょじでれいみゅからにぎぇりゅのぉぉぉ!!!?いっちょにゆっくちちようよぉぉぉ!!!」 
「もうはちりぇにゃいんだじぇぇ!!とみゃってよぉぉ!!」



 *** 
「早速あのぬいぐるみ、駆除に使ってみたいだってさ。駆除部門から注文来たよ」 
「駆除部門ってそろそろ大規模に駆除するんですよね。実践投入ですか」 
「そういえばどうですか?あの家族」 
「それがなぁ…聞いてくれよ。親が子供を避けてるんだぜ」 
「え?もしかしてぬいぐるみの方に情が移ってるんですか?」 
「ひでぇ話だよな。自分の子供を避けるなんて」 
「どうするよ?」 
「あぁ。俺にいい考えがあるよ」 
 ***



「ゆぎぃぃぃぃ……い…いぢゃいよぉ……」 
「でいぶの…ゆっぐりじだ…あんよじゃんがぁ…」 
れいむとまりさは足を焼かれた。逃げ出さないようにじっくりと真っ黒になるまで焼かれたのだ。もうこれで動くことは出来ない。 
「ゆ!おきゃあしゃん!!」 
その声にれいむとまりさは目を見開いた。 
「ゆぅ!あんにゃときょろにいりゅよ!」 
「きゅうにいにゃくなっちゃからびっくりしちゃったんだじぇ」 
れいむとまりさの目の前には3匹の赤ゆっくりがいた。 
「おきゃあしゃん!!いっぴゃいしゅりしゅりしようにぇ!」 
「こんどはおちょうしゃんのおぼうちしゃんのにゃかをたんきぇんしゅるんだじぇ!」 
「おきゃあしゃん!!いっちょにうちゃおうにぇ!」 
3匹はゆっくりと近付いてきた。 
「ゆあぁぁぁぁ!!ゆぎぃぃぃぃぃぃ!!!うごいでぇ!!うごいでぇぇぇぇ!!あんよざん!!」 
「いやぁぁぁぁ!!どぼじでぇぇぇ!!!でいぶわるいごどじでないのにぃぃ!!!」 
れいむとまりさはもう生きた心地がしなかった。 
「ゆぅん!ちゅかまえた!しゅ~りしゅ~り」 
まずは赤れいむ。れいむに寄り添いすりすりと思う存分頬擦りをした。 
「ゆひぃぃぃぃぃぃ……」 
れいむは身の毛が弥立つ思いだった。 
「おちょうしゃんのおぼうちしゃんはまりちゃよりもおおきいんだじぇ!」 
赤まりさはまりさの帽子の中へ入った。 
「ゆぎぇぇぇぇ……ゆわぁ……ゆあぁぁぁぁぁ…」 
頭の上を何かがもぞもぞと蠢いている感覚がした。 
「おきゃあしゃん!!れいみゅといっちょにうちゃおうにぇ!!ゅ~♪ゅゅ~♪」 
「ゆひぃ!!ゆひぃっ!!」 
「ゆん?おきゃあしゃん!!おうちゃだよ!!おうちゃ!!」 
「ゆ……ゆ……」 
もうれいむとまりさは限界だった。2匹の中で何かがぶっつりと切れる音がした。 
「ゆきぇきぇきぇきぇきぇきぇきぇきぇきぇきぇきぇ!!!!!!!!!」 
「ゆきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!!!!!!!!」



 *** 
「お?良かったな。喜んでるじゃん」 
「本当の子供に会えて良かったですね」 
次の瞬間れいむとまりさは大量の餡子を吐き出していた。


【おわり】



========あとがき===============
このテーマは結構難しかったですね。最初に思いついたネタはまんまキリライターさんの絵でしたし。 
「どうじでつむりにうんでくれなかったの!」→「おちびちゃんがぐれちゃったぁ!」っていうやつ。 
自分はそれプラス「どうじでつむりにうまれてくれなかったの!」→「むちゃいわないでぇ!」 
「なんでおねえちゃんはつむりじゃないの!」「なんでいもうとはつむりじゃないの!」etc 
で群れはつむりを生むために交尾しまくり。つむりじゃない子供は追い出されるか挨拶する前に殺す。 
そして群れは滅びましたとさ。こんな感じ。 




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挿絵:儚いあき