ここは、いつも賑やかなとある街。
一人の青年が野良ゆっくりに絡まれていた。
「おねがいじまずうう!れいむをがいゆっぐりにじでぐだざいいいい!」
絡まれているというより、懇願されていると言うべきか。こんなのは実によくあることだ。
そして、実際に飼ってもらえるケースなどほとんどない。
薄汚い野良など飼ったところで人間との生活に適応できるはずもないからだ。
この青年もそんなことくらいわかりきっている。
にも拘らず青年は、立ち止まってれいむの話を聞いている。それには訳があった。
「れいむはがわいぞうなんでずうう!おぢびぢゃんはみんなたりないこなんでずうう!」
「ゆちっ…!ゆちちちちい!」
「ゆちゃあぁ!ゆぅ~あぁあ!」
「ゆきっ!ゆきっきききぃ!」
このれいむ、赤ゆっくりが三匹いるのだが、全てが足りないゆっくりであった。
その訳は、妊娠中に人間から受けた虐待が原因だ。
母れいむの胎内にいる時に衝撃を受けたせいか3姉妹の中枢餡は傷つけられたが、
しかし1匹も永遠にゆっくりすることはなかった。
そして、幸か不幸か、晴れて足りない3姉妹が誕生したというわけだ。
「う~ん、どうしようかなぁ…」
「おでがいでずうう!」
「ゆぴぅー!いぎゃああ!」
青年と母れいむが会話している間も、足りない3姉妹は奇声を上げ続け、
糞尿をまき散らしたりしながら転がりまわっている。
よく見ると3匹とも、体中に痣が見られる…
青年はその様子を見ても一切表情を変えることはなかったが、
母れいむが、子ゆっくりが近くに来るたびに顔が引きつっているのを見てニコリと笑った。
「あぁいいよ、飼ってあげよう。」
「ゆ…ゆぅうう!ほんとうに!?じゃああまあま!あまあまちょうだいねええええええ!」
「あまあまは今持ってないのさ。家に帰ったらあまあまをあげるさ。」
「じゃあはやくおうちにつれてってねえええ!ぐずぐずしないですぐでいいよ!」
「ゆぎぃあ!ぴぃいあああう!」
「うぎっ!ぴゅいぃぃ!」
「ゆぴっちちちぃ!」
飼ってもらえると分かった瞬間、いきなり態度が大きくなる母れいむ。
赤ゆっくりたちはというと相変わらず奇声をあげ転がっている。
やはり母れいむはそんな子らが近づいてくると顔を引きつらせる。
「あぁ、でも3つ、僕と約束だ。」
「ゆゅっ!?」
「1つ、ご飯は僕が用意しよう。そしてその子達のご飯は君の役目だ。それでいいかい?」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「そしてもう1つ、きちんとその子達を育てるんだ。でないとお仕置きだよ。きちんと育てられたらご褒美をあげるからね。」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「最後の1つ、飼いゆっくりになるからには、もう野良には戻れない。いいかい?」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「よーし、じゃあ僕との約束だ!」
青年はれいむのもみあげに小指を絡ませ、指切りげんまんをしている。
それにしてもこのれいむ、青年の提案に即答するあたり、内容はあまり頭に入っていないだろう。
ただ青年の言葉に返答していれば、早く連れて帰ってもらえるという魂胆なのか。
「じゃあちょっとだけ準備するから待っててね。」
「はやくしてね!れいむもうまちきれないよ!」
そして青年は後ろを振り返り、しゃがみこんだ。
…しかし、何かの準備などをする様子はない。ただ無表情でその場にしゃがみ込んでいるだけだ。
やがて、れいむが独り言を言いだした。
「ゆふふ…かいゆっくり…かわいいれいむにはとうっぜんのことだね!」
「ゆっぴぴぴぴぴ!ゆちぃいゆちゆち!」
「ゆぅうう!ちかよるなああ!かいゆっくりになれたからおまえたちはもうようなしだよ!」 『バシッ!』
「ゆ…ゆぎゃああああ!」
「まったく…いままでれいむのうんうんやしーしーをたべさせてやったおんもわすれて…」
「ゆぴょうぁあああ!」
「ゆっがああ!ぎだないいいい!うんうんまみれのげすめええ!あっちいけえ!」 『バシッ』
「ゆっぴゃああああん!」
「おうちについたらもうこんなののめんどうみるぎりはないよ!まったく!」
青年が後ろを向いただけでもう聞こえていないと思ったのか、次々と本音がれいむの口から飛び出す。
心底我が子を見下しているのだろう。その言葉からは侮蔑こそあれ、愛情など一片も見られない。
3姉妹の体中に見られる痣は、こうして母れいむから虐待を受けたからだ。
今まで殺さなかったのは、ただ飼いゆっくりにしてもらうための交渉材料にしか過ぎなかったから。
しかし青年は母れいむの言葉を聞くと、口の端を吊り上げ静かに笑う。青年の目は何処までも昏く、しかし本当に嬉しそうであった。
青年は立ち上がり、くるりと振り向く。
「やぁやぁ待たせたね!さぁ、行こうか!」
「ゆぅう!おそすぎだよ!」
「悪かったね。その子達は僕が持とう。転がってしまうと危ないからね!」
青年は3姉妹を持ち上げると、そのまま手の平の上に載せた。
そして母れいむを引き連れて帰路へと着いた。
「さぁ着いた。ここが僕の家さ。」
「ゆ…ゆわぁああああああ…」
青年に連れられて入った家の中は、れいむにとってまさに桃源郷であった。
風が吹きすさぶこともない。気温も適温。そしてこたつの上には美味しそうなあまあまが置いてある。
地面もアスファルトのように固く、無機質な物とはまるで違う。
想像していた以上の飼いゆっくり生活がれいむの眼前に広がっていた。
れいむは感嘆し、落涙しながらうれしーしーを漏らすという、ゆっくりにとっての喜びを表す、最高の表現をしている。
「どうだい、れいむ。今日からここに住むのさ。」
「……」
「ん、どうしたんだい?れいむ。」
れいむは青年の言葉に返事もせずただ震えていたが…やがて、ようやく口を開いた。
「ここを…ここを、れいむのゆっくりぷれいすにするよ!」
そしてその口から飛び出したのは、家主が横にいる状況にもかかわらず、おうち宣言であった。
「おうち宣言…か。」
「そうだよ、ここはれいむのおうちだよ!はやくあまあまもってこい!どれい!」
「どれい?」
「はぁああ~!?れいむのかわいさにくっぷく!してれいむをかいゆっくりにしたんでしょおおお!?」
「あ~…あぁ、あぁ…そういう事か。あははは、これは一本取られたなぁ!」
「わらってないではやくあまあまもってこいいいいいい!」
「ほ~ら君達、今日からここに住むんだよ~。」
「ゆっぴゅううう!」
「ゆぴっちちちちちち!」
「ゆちゃぁああ~!」
「むしする…ゆ、ゆゆゆっ!?なんだかゆっくりできないはこだね!げすどもはそのなかがおにあいだよ!」
案の定、家についた途端ゲスの本性を現した母れいむ。
れいむの可愛さに負け、飼いゆっくりにした→つまり青年は奴隷。
これがれいむが家に着くまでの間に組み立てた論である。なるほど、全くわからん。
青年はというと、そんなれいむを意に介さず、大きな箱…俗にいう〝透明な箱〟に3姉妹を入れている。
赤ゆっくり達を入れ終えた後、青年はれいむを持ち上げた。
「おそらをとんでるみたい!」
「じゃあ、行こうかれいむ。」
そのまま青年は歩き出した。
「ゆぅう!あまあまああああ!」
こたつを横を通る際、甘味の横を通る。
れいむは舌をピンと伸ばし、甘味へと伸ばす…が、スルー。
「ゆぁあああ!あまあまああ!」
台所のテーブルを横切る際もその上においてある甘味に舌を伸ばすが…またスルー。
「ゆっがあああ!いいかげんにしろおおおお!れいむをおろせええ!」
「はは、悪いね。今降ろすよ。」
そう言いながら青年がれいむを降ろした場所は…調理台の上であった。
青年は包丁入れから包丁を取り出し、右手に持つ。
「よっ。」
「ゆぅうう!?」
左手で、れいむをさかさまに転がす。そして…
「スパッ…とね!」 『スゥウ…』
「ゆぎっ!ゆっぎいいいい!?」
れいむの右頬からあんよを通り、左頬へと包丁の刃を滑らせる。
きれいな真一文字の切り口がれいむの体に刻まれた。
「これで終わりだから、おとなしくしなよ。」 『バリバリバリッ!』
「ゆっぎゃああああああああああああ!」
切り口の中に両手をかけ、口をこじ開けるかのように無理やり開く。
れいむのあんよから頬にかけてぱっくりと開かれ、中の餡子がそこから覗いている。
「よーし、これで終わりだ。れいむはいい子だなあ。」
「ゆ、ゆひ、ゆひ…」
満面の笑みでれいむを労う青年。
そして逆さのままれいむを持ち上げ、透明な箱のある部屋へとれいむを持っていく。
「よし着いた。れいむ、ゆっくりしていくんだよ。」
「ゆうぅうー!」 『ブチュルルル!』
れいむを箱の中にちゃんとした姿勢で置いてやると、自重であんよから餡子が漏れ出す。
もうこれでれいむのあんよが機能することは二度とない。
れいむが置かれた場所は、箱の端っこ。動けない上に目の前に壁があれば、いよいよ何もできないだろう。
足りない3姉妹は、母れいむがそんな状況にも拘らず、青年が置いた毛布の上で身を寄せ合い安らかに眠っている。
「ど、どぼじでごんなごどずるのおおおお!?」
「ほらほら君達起きるんだ、お腹すいただろう?ご飯の時間さ。」
「ねえええええ!きいてるのおおお!?なんでなのおおおお!?」
「んー、うるさいなあ。僕の話を聞いてなかったのかな?」
「うるざいいいい!はやくれいむをなおぜええ!あとあまあまもっでこいいい!やくっそくでしょおおおおお!?」
「そう、あまあまはちゃんとあげるさ。僕は約束は守るからね。」
「じゃあはやく…」
「ただし!」 『ズブッ!』
「ゆぎゃん!」
れいむの言葉を遮り、餡子がむき出しになっている頬に手を突っ込み、餡子を指で穿り出す青年。
そして指の先についた餡子を口に入れた。
「んー…いいあまあまじゃないか。僕があまあまをあげるのはその子たちにさ。」
「ゆ…ゆゆゆ?なにぞれえええええ!」
「いやいや、君にあまあまをあげるとは言わなかったじゃないか!」
「ゆぎぎぎ…じゃあごはん!はやくごはんもってこいいいいいい!」
「やだなぁ、もうちゃんとご飯は用意してるよ!」
「…ゆ?」
「ご飯は確かに用意した!そしてその子たちのご飯は君の役目というわけさ!約束したろう?」
「ゆ?ゆ?ゆ?ゆ?ゆ?」
れいむは、青年のいうことが全く理解できていないようだ。
「よいしょ。」 『ズブッ!』
「ゆぴいい!」
「ほら君達、ご飯だよ~。」
「ゆぴっちぃい!」
「ゆっぴゃあ!」
「ゆうぅうあああー」
起こした足りない3姉妹にきちんと見せつけるようにしながら、れいむの体から餡子を穿り出す。
そして指先についた餡子を3姉妹の口元に持っていくと、3姉妹はその餡子にむしゃぶりついた。
そのやりとりをしばらくぼーっと聞いていたれいむだが…やがて、さぁ、と顔色が変わる。
「ご、ごはんって…まさか…」
「だから何度も言ってるじゃないか、ご飯は君の役目だって!」
「ゆ、ゆわわわわ…」
ようやくれいむは理解した。
れいむの役目は、〝足りない3姉妹にご飯をあげる〟のではなく、
文字通り〝足りない3姉妹のご飯〟なのだと。
青年が〝ご飯を用意する〟と言ったのも、れいむにご飯を用意するのではない。
先ほどれいむに施した加工のことである。
「うそつき!うそつき!うそつきいいい!」
「嘘なんてついてないさ。僕は君に条件を出して、君はそれを理解した。ちゃんと約束もしただろう?」
「もうやだあああああ!おうちかえしてええ!かいゆっくりなんていいからああああ!」
「駄目駄目、もう野良には戻れない。それも約束したよね?」
「…ゆ、ゆひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
そうこうしている内に、れいむの体から漂う甘い香りに惹かれ、足りない3姉妹がじわりじわりとれいむににじり寄る。
どれも、まともに体のバランスすら取れないのか、少し進むたびにコロンと転がってしまったりしているが、
それでも確実にれいむの方へと歩を進めている。
「ゆぎち!ゆっち!」
「ぴぎゃあ!ゆっちゃあああ!」
「あうあー!ぴうええ!」
「おぉ!あんよがじょうず、あんよがじょうず!ご飯は目の前だぞ!頑張れー!」
「や、やめてね!おちびちゃん!おねがいだからこっちこないでね!」
必死に懇願するれいむだが、その言葉が3姉妹に届くことなどない。
届いたとしても、3姉妹が求める餡子と、母れいむとの間にどんな関係があるか結びつけることはできないだろう。
3姉妹はただ、目の前で甘い香りを放つ食料を求めるだけだ。
「ゆっちちちち!」 『ガブッ』
「ゆっちゆっち!」 『ガッ』
「ううう、ゆっぎゅううう!」 『ガブ』
「ゆんやああああああ!」
そしてむき出しになった餡子にかぶりついた。
3姉妹は喜びのあまりか、その場でうんうんとしーしーを垂れ流す。
それはれいむの餡子に直撃し、苦痛をもたらすが、何より…
「ゆぎっ!ぐざい!ぎ、ぎだない!いやあああああ!」
己の体内に汚物を直接かけられるのだ。
綺麗好きなゆっくりにとって、その苦痛たるや計り知れないものがあるだろう。
そして自分を苦しめるのは、自分が心底軽蔑している足りないゆっくり、ましてや赤ゆっくりである。
それに対して手も足も出せないれいむの心情はいかがなものだろう。
「ゆぴぃ…」
「ゆちちち…」
「ゆっちち…」
「ゆひぃ、ゆひぃ、ゆひぃ…」
3姉妹は母れいむを存分に堪能した後、また毛布に戻り身を寄せ合い眠る。
こうして、れいむ一家の飼いゆっくり生活が始まったというわけだ。
そして1週間が過ぎた。
未だ、れいむ一家の飼いゆっくり生活は順風満帆だ。
「ゆっちちちち!」
「ゆぴぴぴぴぴぴぴぴ!」
「ゆぎゃうあう!」
「ゆひぃいいい!こっちこないでぇええ!おねがいしますううう!」
3姉妹はもう子ゆっくりと言える大きさにまで成長した。れいむは、ご飯の役目をしっかり果たしている。
あの後、箱の端に居たら後ろが見えないだろうということで、青年はれいむの目の前に大きな鏡を置いてやった。
これで3姉妹がれいむに近づいてくる様子を見ることが出来るだろうという、粋な計らいだ。
「お、おにいざん…」
「ん?なんだいれいむ?」
3姉妹は食事を済ませ、またいつものように眠る。
青年はそれに飽きることもなく、家にいるときは基本的に箱の近くでその様子を眺めながら
本を読んだり、テレビを見たりしている。
「おねがいですう…もう、ころしてくだざいいい…」
「うーん、それはつまり、お仕置きしてほしいってことなのかい?」
「はいい!そうでずう!おねがいじます!ごろじで!ごろじでええ!」
「いやーそれは出来ないね。約束は守らないと。」
「ぞんなやぐぞぐじでないでじょおおおおおおおおおおお!?」
「いやいや、君が子育てをしなかったらお仕置きすると僕は約束した。そして今その子達は君のおかげで すくすくと成長してるじゃないか!
だから君にご褒美として食べ物をあげこそすれ、お仕置きするなんてとてもとても…れいむは謙虚だなぁ!」
「いやぁあああああ!」
こうして、これからもれいむ一家の飼いゆっくり生活は順調に続いていくのだ。
あれから更に時が経った。
既に成体にまで成長した足りない3姉妹の食事ペースにれいむの体の再生能力は追い付かず、
もうれいむの体はご飯としての役目を終え、この世に欠片も残らなかった。
流石に成体ゆっくりが3匹もいるとあの箱は手狭になったので、青年は部屋の一角に柵を設け、そこを3姉妹の居住空間としている。
3姉妹は、意外と手がかからないみたいだ。
自分のうんうんやしーしーを汚いと思わないばかりか、食料として消費してゆくのでいつの間にか片付いている。
しかし、元はと言えば自分たちの体から出たものだ。それだけで食料として足りるわけもないが、そこに関しても問題はない。
「おねがいです!まりざはがいゆっぐりでじだ!」
「うーん…」
「まりざをがいゆっぐりにじだら、おにいざんのいうごどをぢゃんどぎぎまず!おにいざんもゆっぐりざぜであげられまず!」
「ふむ、ちゃんとぼくの言うことを聞くのかい?」
「はいいいいいいい!」
食料は、こうして街を歩いていれば向こうから寄ってくるのだ。こんなに経済的なことがあるだろうか。
「ははは、いいよ。飼いゆっくりにしてあげようじゃあないか!」
「ゆ?ゆゆゆ!?あ、ありがどうございまずうううううう!」
「あぁ、でも3つ、僕と約束だ。」
「ゆゅっ!?」
「まず1つ…」
今日もまた、青年と野良ゆっくりの間で約束が交わされるのであった。
【おわり】