まだ陽が昇る気配さえない宵闇、時計の時針が3の半ばを挿す普通の人間ならばまだ淡い夢の中であろうこの時間帯に 僕は隣室の壁を叩く不愉快な雑音で叩き起こされた、眼も半開きに寝癖で跳ね返った髪をわしゃわしゃと掻き毟りながら 
※飼いゆっくりと主人のお話です 
※れいむは冷遇されます 
※うどんげは優遇されます


騒音の元凶である隣室を覗く、そこには成体サイズより一回りも二回りも巨大なバランスボールサイズのゆっくりれいむが 
実に不機嫌そうに眉と唇を吊り上げ壁に突進している最中だった。

「おまえなぁ……今何時だと思ってるんだよ……」 
「ゆゆっ、くそどれいおそいよ!ほんとにゆっくりできないぐずどれいだね!!」

ぶくぶくに太り顎と頬の肉をたっぷり蓄え肥えた身体をぶるんぶるんと左右に振って憎たらしい顔でこちらを罵倒するゆっくりれいむ 
 髪飾りのリボンに装着されたゴールドのバッジ、不本意ながらこのれいむは僕の飼いゆっくりだ。

「きゃわいいれいむがうんうんをしたんだよ!くそどれいにしょりさせてあげるからゆっくりしないでしまつしてね!のろまなぐずはきらいだよ!!」

 見ると近くに特大サイズのうんうんが存在感をアピールするが如く聳え立っている。 
 メタボれいむにしてこのうんうん有りと言わんばかりだ。

「……うぇ……」

「ゆっくりしないでかたずけてね!くそどれいはれいむをゆっくりさせるぎむがあるんだよ!!」

 騒ぎ立てるれいむに苛立ちを隠せないまま僕は舌打ちをして巨大なうんうんを処理する。

「いましたうちしたね、れいむのごーじゃすなうんうんをしょりさせてあげてるのにみのほどをわきまえるべきだよ!」 
「……ッチ」 
「ぐぞどれい”ぃい”い”のぶんざいででいぶにしだうぢずるなんで!!!ばがなのぉおおお?じぬのぉおおお!?」

 脂肪の塊の戯言を無視して僕はゆっくり用の低級食『それなりフード』をれいむ用の食皿に盛る。 
 するとれいむは今まで怒っていたことも忘れてそれに齧り付く。

「それなりー!それなりー!ゆふっー、こんなまずいごはんじゃでいぶはまんぞくしないよ!ゆふっ、ゆふっ!!ゆっくりしないであまあまをよこすんだよ!!」

 不満気にも関わらずガツガツとそれなりフードを掻き込むれいむは、むしゃむしゃと頬の贅肉を上下させて更にあまあまを要求してくる始末だ。 
 僕は呆れて項垂れつつ、腹が膨れればもう起こされることはないだろうとれいむを無視して部屋を後にした。 
 寝室に戻り再び眠りにつこうとするが、れいむに罵倒され腹の虫が治まらないのか眼が冴えてしまった。

 昔はこんなんじゃなかったのに……。

 2年前に我が家にやってきたゴールドバッジを装備した子ゆっくりれいむ、当時は人間である僕をゆっくりさせる使命を果たすべく 
仕事帰りの僕にゆっくりしていってねと優しく可愛らしい表情で語り掛け、明け方には僕が寝坊しないように目覚まし代わりに 
ゆっくりとしたお歌を熱唱するなど穏やかな時間を提供してくれた、ペットとしてではなく家族として心底可愛がったものだ。 
 だが、今になって思えば甘やかし過ぎてしまったと後悔している。 
 必要以上に甘い洋菓子を与えたり、れいむの些細な失敗も躾として叱ることをせず、れいむが好きなようにと惰性的な毎日を送らせてやった結果、気がつけば一般ゆっくりの成体サイズであるバレーボールを飛び越えてバランスボール級にまで膨れ上がったドス一歩手前のメタボれいむが我が家でのうのうとしている始末だ。 
 性格もゴールドバッジを象徴するゆっくりたちとは著しく懸け離れ、ゲス化を辿る一方で、 
何度か捨ててしまおうと思ったが、その度に昔の可愛かった時期のれいむが思い浮かびそれを踏み止まらせた。 
 まるで熟年期の夫婦のような関係になってしまったと僕は自嘲気味に思い耽っていると、再び意識が薄れ始めゆっくりと夢の中へ落ちていった。

 そういえば、それなりフードがもう切れ掛かっていたっけ……ないとないで騒がしいから……明日、仕事帰りに……。


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 翌日、僕は仕事帰りにゆっくりショップに立ち寄った。 
 この店は僕がメタボれいむを買った店で、れいむ用の餌はここで揃えている為に店員の女性に顔を覚えられるほどの常連客になっていた。 
 僕はいつものようにお徳用それなりフードを二袋抱えレジに行こうとすると、ゆっくり展示用のケースに胴付きゆっくりが座っているのを見掛け立ち止まった。 
 ちょこんと隅の方で座り、しわしわのウサ耳をひょこひょこと揺らすそれはゆっくりうどんげだった、何故か子供用のお絵かきボードを首からぶら下げている。 
 基本的にこの店の店頭に並ぶ胴付きはゆっくりれみりゃかふらんがせいぜいで、ゆっくりうどんげは僕の記憶では一度み見たことがなかった。 
 希少種ほど貴重ではないが見掛ける頻度は少ない、その程度の認識しかない僕であったが何故かそのうどんげに惹かれるものがあった。

「あっ、こんばんわー、今日もれいむちゃんのお餌ですか?」

 ボーっと突っ立ってうどんげを見つめていた僕にこの店のオーナーである若い女性店員がのほほんとした口調で声を掛けてきた。 
 僕は軽く会釈して頷くと、僕の視線がうどんげにあったことをその店員は気付いたようで商売の匂いを感じ取ったのか微笑んで擦り寄ってきた。

「そのうどんげちゃんどうですか?れいむちゃんのお友達にぴったりだと思いますよー」 
「あっ、いやその……」

 歯切れの悪い口調の僕にお姉さんは買ってって下さいと言わんばかりに満面の笑みを浮かべてくるので 
僕は話を逸らすためにどうしてうどんげが売られているのか尋ね返すことにした。

「この店でうどんげが並ぶなんて珍しいなって思って見てたんですよ」 
「あぁ……まぁこちらとしても色々ありまして、まぁお値段の方の横にある注意書き通りなんですけど、このうどんげちゃんお話することができなくって……あっ、でも素直でとっても可愛いんですよ!」

 そう言われ値段を見るとかなりの格安で売りに出されていることに気付いた、更にその横にお姉さんが言った通り喋ることができないと注意書きがあった。 
 俯いていてどこか暗い表情のうどんげをしらーっと覗く、僕は研究所から回された改良種の問題児か苛めにあって精神的なストレスから言語障害のあるゆっくりなのかと勝手に憶測を膨らませていると、ふいにケージの中のうどんげと眼があった。 
 うどんげは見知らぬ人間の姿に驚いたのかびくんっと跳ね後ずさる。 
 恐がらせてしまったと僕は顔を遠ざけると、うどんげは何を思ったのかぶら下げた子供用のお絵かきボードに何かを書き、それを僕に提示した。

 そこには――。

『ごめんなさい』

 曲がった拙い文字でそう書かれていた。

「えっ?」

 理由が分からない謝罪文に僕は首を傾げた、遠くから見るうどんげは何故か目尻に涙を浮かべており今にも泣きそうな様子で手に持ったボードを小刻みに揺らしている。 
 そこで僕は気付かされた、全身を震わせ怯えるうどんげの仕草は反射的に謝っているものであると、どうしてそうなのかは僕の理解の範疇にない。 
 しかし、ただ一つ言えることがある、このうどんげは、何か、そう何かとっても守ってあげたくなる――そんな愛おしい感情、幼い頃のれいむと似たものがあると。

「あの在庫処分ってありますけど、このまま売れ残ったら?」 
「……えぇ……その……私たちも、商売ですから……」

 このまま売れ残れば加工場送りは免れない、『いいのか?』という自問が過ぎったとき、僕は既に行動に移していた。



「ありがとうございましたー!」

 店員の高らかな声に後押しされるかのように僕は店を出た、その手にはうどんげが収納されたゆっくり用ボックスが。 
 衝動買いに近い買い物であったが後悔はない、むしろこのまま見過ごしていた方がきっと後悔していただろう。 
 僕はメタボれいむのような失敗をしないと心に誓い家路についた。

「くそどれいゆっくりしすぎだよ!!ゆっくりしないでれいむのごはんをよういするんだよ!!それからうんうんのしまつもするんだよ!!」

 家に帰ると早速小五月蝿いメタボれいむがまるで期待していない出迎えをしてくれた、メタボれいむの視線の先にうどんげがいることに気付くとしかめっ面で尋ねてきた。

「ゆ!こぎたないゆっくりがいるよ、くそどれい!!ゆっくりできるゆっくりはれいむだけでじゅうぶんだよ!ゆっくりしないですててくるんだよ、ごしゅじんさまのめいれいだよ!」 
「小汚くないわ!お前も自分の成りを見てから物を言え!!」 
「はんろんはゆるさないよ!れいむのめいれいはぜったいだよ!!くそどれいはじぶんのみぶんをわきまえるべきだよ!!」

 相手にしていられないので僕はメタボれいむを無視して、狭いケースに入れられたうどんげを抱き上げ玄関前の廊下に降ろしてやる。 
 緊張がピークに達したのか、きょろきょろと辺りを見回して不安そうに頭を左右に振っている。

「大丈夫だよ、ここはお兄さんのお家だよ、それからうどんげのお家にもなるんだよ」

 なるべく心配させないようにと優しい口調で語りかけたつもりであったがうどんげは数歩下がってお絵かきボートにペンを走らせた。 
 高い位置から覗くと再び『ごめんなさい』と書き込んでいるのが見えたので、僕は慌ててうどんげに大丈夫だからね、落ち着かせるために何度も言い聞かせた。 
 うどんげを慣れさせるのはなかなか骨が折れそうだと思いながらも、長いスタンスで解していこうと決意し僕はうどんげを拾い上げる。

「お腹減ってるよね?まずはご飯にしようね」

 わしゃわしゃと頭を撫でてやる、やはりうどんげはまだぎこちない様子が抜けない、一方突然の新参者に不愉快な感情を爆発させるのは当然メタボれいむだ。

「ゆー!あんなゆっくりがいたられいむはゆっくりできないよ!このおうちはれいむのものなんだよ!!」 
「ゆ!くそどれい!!へんじをするんだよ!!!」

 台所から聴こえるのは僕の鼻歌だけで、メタボれいむを相手にする返事など一切返ってこない。 
 れいむは憤慨し奇声を上げたまま怒りの矛先を向けるが如く廊下の壁へ突進した。


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 それから三ヶ月が経過した。メタボれいむの世話はそこそこに、僕はうどんげに首っ丈だった。 
 うどんげの警戒心が薄れ始めたのは一ヶ月目のときだった。 
 『ごめんなさい』としか書かなかったお絵かきボードに始めて『ありがとう』と書かれたのは何気ない食事の時、ついに苦労が報われたと思えば次のステップもあっという間だった。 
 ずっと無表情だったうどんげが僅かに笑い、進んでお手伝いを始め、お皿を割ってしまって軽く叱り付けた時もその意味を理解し反省した。 
 僕は日々成長していくうどんげの様子を見るのが実に幸福感のある出来事だと思えて仕方がなかった。 
 ただ一つ、何度も喋る訓練をさせたが未だにその口から声が出ることはなく、会話は専らお絵かきボードを使ってのことが気がかりではあったが。

「それじゃあ言ってくるね、お留守番頼むよ、うどんげ」

 仕事に出掛ける僕をうどんげは『いってらっしゃい』と書かれたボードを掲げ見送った。 
 その背後で反骨精神の眼差しをぎらぎらと輝かせるメタボれいむ、それもそのはず、うどんげが来てからというものれいむの冷遇は更に加速し今では完全な除け者状態だからだ。

「ぜんぶあのこぎたないゆっくりのせいだよ!れいむのゆっくりぷれいすをのっとろうとするげすだよ!!げすはゆっくりしないでしねばいいんだよ」

 メタボれいむはまだ理解していない、こうなったことに自分の非があること、それを認めず他人の所為にしようとする浅はかさ。 
 ゆっくり特有の自分勝手で自己中心的なその思考回路はついに最悪の行動に移そうというところまできていた。

「ゆ!!あのげすゆっくりはせいさいするよ!!」

 台所にいるうどんげは、うどんげ用に作った足場に立って朝食に使った食器を拭いている最中だった。 
 覚束ない手付きであったが、少しでも主人であるお兄さんの役に立ちたいという気持ちが健気な行動を促していた。 
 そこに忍び寄るメタボれいむの影、れいむはその巨体を利用して跳躍、二回目のステップを踏んで勢い良くうどんげに突進した。 
 バランスを崩し激しく転倒するうどんげ、持っていた食器が散乱し砕け派手な音を奏でる。 
 立ち上がろうとするうどんげの前に立ちはだかるメタボれいむ、贅肉をべっとりとくっ付けた顔はニヤリと不気味な笑みを浮かべている。

「ぜんぶおまえがわるいんだよ!ゆっくりりかいしたらしんでね!!」

 襲い掛かるメタボれいむ、その巨体では幾ら胴付きのうどんげでも回避することは敵わず、伸し掛かられ押し倒されるとうどんげは身動きが取れなくなる、首に掛けたお絵かきボードも遥か彼方に飛んで真っ二つに割れてしまった。

「ゆっゆっゆっ!!いいきみだよ!!くやしかったらさけべばいいよ!!」

 声を出せないことを知っているメタボれいむは実に満足そうに大笑いをすると、逃げようと必死のうどんげの耳飾りに徐に喰いつく。 
「げすにかざりはいらないよ!ゆっくりかみちぎるよ!!」

 メタボれいむはそのままうどんげの右耳を食い破った、引き裂かれた右耳、れいむは汚物でも捨てるようにペッと吐き出して伸し掛かったうどんげからゆっくりと離れた。 
 目指す先には割れた食器、お皿が砕けピザような形になった破片を口で加えると、メタボれいむは勝ち誇ったように眼で笑った。

「ゆふふ!!!いまずぐ、でいぶのおぶぢがらででぐならいのぢまでばどらないであげるよ!ゆっぐりぢないででてっでね!!」

 最後の警告のつもりらしい、右耳を失ったうどんげはゆっくりと立ち上がる、しかし怯えてはいない。 
 意志のある緋色の眼だ、うどんげには言葉には出来ないけれど一つの思いがあった。 
 それは自分をよくしてくれるお兄さんにありがとうと自分の言葉で伝えることだった、だからここで逃げる訳にはいかない。 
 ここで逃げてしまえばきっと一生お兄さんにそう言葉に出来る機会もチャンスもなくなってしまう、 
 うどんげにはそう思えて仕方なかったのだ、だからこそ、うどんげは立ち向かった。

「それならひょうがないね!!ゆっぐりごろじであげ――」 
「やばいやばい!!定期券忘れた!!」

 踏み出そうとしたメタボれいむが硬直した、台所の扉付近にはれいむの言うくそどれいこと僕が立ち尽くしている。 
 状況は明らかだ、右耳を失い震える足で対峙したうどんげ、そして凶器を突き立てるメタボれいむ。

「ゆゆっ!くそどれい、これは――」

 ゴォオオンと激しい強打音、メタボれいむは顔面から物凄い勢いの下方から抉りこむようなローキックを受け冷蔵庫にぶちあたり停止した。

「ゆぐぇえええ!!な”、な”にずるのぉおおお!?」 
「れいむ……お前、なにやった……」

 メタボれいむは戦慄した、見上げた先にまさしく鬼の形相を具現化した僕の姿があったからだ。

「まぁいい、後でたっぷり聞いてやる……それより、うどんげ!!大丈夫か!!」

 急いで駆け寄り、うどんげに腕を回して身体に異常がないか確かめる、耳が残念なことになっているが他は特に外傷はないようだ。 
 抱き抱えられたうどんげはきゅっと僕の服の裾を握り締めると、口を小さく動かして――。

「おにいさん……ありがとう……」

 と始めて言葉を発した、それに満足したうどんげは小さく笑って意識を失った。 
 ただ意識を失っただけであると安堵した僕はうどんげを寝室のベットに休ませると、改めてメタボれいむと対峙した。

「正直に言え、お前、うどんげに何をした」

 蹴られた痛みに悶えまだ動けないでいるメタボれいむは無様に涎を垂れ流しながらうわ言を呟く。

「あ”のごぎだないぐぞゆっぐりのぜいだよ!で、でいぶはわるぐないよ!!」

 物置から取り出したゴルフのドライバーをぶんぶんと振り回して、僕はもう一度尋ねた。

「次はないぞ、正直に言え」 
「ぐぞゆっぐりがおぞっでぎだんだよ!!でいぶはぜいどうぼうえ――」

 フルスイングでメタボれいむの横っ腹にドライバーを叩きつける、ゆぐぼぉおお!!と奇妙な悲鳴を挙げてメタボれいむが痙攣する。 
 思った通り、肉付いたその身体は強打を緩和するタフさを持っていた、言い換えればどんなに甚振ってもなかなか死なないということだ。

「僕がお前を仕方なしに飼ってやってたのは、飼い主としての責任があったからだ」 
「ゆぐぉ!!やべろ!!ぐぞどれい、やべろ!!!!!」

 メタボれいむの悲鳴など無視して僕はひたすら殴り続ける、これまでの鬱憤を晴らすべくかのように。

「どんなに罵倒されても、どんなに憎たらしくても、どんなに不愉快でも、最後まで面倒みるのが筋だと信じてた」 
「ゆうぇええええん!!!やべでぇ!!いじゃいよぉおお!!でいぶじんじゃうよぉお”お”お”!!!」」 
「だがこれはどういうことだ!!お前は気に食わないゆっくりがいたら殺そうとするゲスだったのか!?僕はお前がどんなに可愛くなくともそこまで非道なことをするゲスじゃないと信じてたんだぞ!!」 
「でいぶがわるがったでずぅ!!でいぶのぜぎにんでず!!ゆるじで!!もぶゆるじでぐだざいぃいいい!!!!」 
「人間の世界じゃなぁああ!!人を傷付けてごめんなさいで許されることなんかないんだよぉお!!!!」

 思いっきり背中が悲鳴をあげるほど軋ませ、全身全霊のフルスイングをお見舞いするとメタボれいむは絶叫するのも忘れてその場に倒れ込んだ、口から泡を吹いている。 
 しかし僕の気は晴れない、ドライバーの先端をコンロの炎で入念に焼きつつありったけのオレンジジュースをバケツに投入し、気絶したメタボれいむにぶっ掛け意識を強制的に引き戻した。目覚めたメタボれいむは僕の姿を見て怯え特大のうんうんを捻り出した。

「ぐ、ぐぞどれ……お、おでぃざん、で、でいぶは――」 
「言い訳無用、お前との縁は今日までだ、ゆっくりりかいしたらはんせいしろ!!」

 熱したドライバーの先端をメタボれいむの右眼に押し付ける、じゅうじゅうと饅頭の皮が焼け香ばしい匂いが室内に充満する。

「ゆぎゃあ”あ”あ”あ”!!!!でいぶの、でいぶのおべべがぁあ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!」

 更に追撃、今度はドライバーを剣道の面を打つように真上に振りかざすと、メタボれいむの頭を割るつもりで叩き落す。

「チャー、シュー、メン!!!」 
「ぎょゆあげぇえ”え”え”え”え”!!!でいぶの、あだばがばべぶー!!ばべぶぅううう!!!!!」

 僕は仕事に行くことも忘れて延々と3時間、上司から掛かってくる電話も無視してメタボれいむの制裁を行った。 
 しかしいくら甚振ってもメタボれいむは永遠にゆっくりすることなく、絶え絶えながら生き延び、不本意ながら僕の体力が先に尽きる事態に陥ってしまった、僕はこのメタボれいむを殺すことを諦め、近所の加工場に連絡を入れた。

「……はぁ、はぁ……あぁもしもし?加工場ですか?……あの、引き取ってもらいたいゆっくりが……いるんですけど……」

 こうして2年と半年に渡る、僕とメタボれいむの関係は加工場に引き取られる形で終わりを告げたのだった――。


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「んほぉおおおおぉおおお!!!とかいはなれいむねぇえええええええ!!!!!」 
「んほぉおおおぉおお!!!れいむにぺにぺにこすりつけるとすごくきもちいいわぁああ!!!!!」 
「やべでぇえええ!!れいぱーありずはゆっぎゅりでぎないぃい”い”い”い”!!!!!」 
「んほおおおぉおお!れいむは『つんでれ』ねぇええええ!いいわぁ、とかいはなあいをおしえてあげるわあぁあ!」

 加工場の赤ゆっくり製造ラインに一際大きなゆっくりれいむがいる。 
 そのれいむのラインだけれいぱーありすが三匹も寄り添い、ぺにぺにを擦り付けている、加工場の職員によって開けられた追加のあにゃるから押し込まれる大量の精子餡、信じられないことに伸びた茎は30本近くにものぼり、それらは黒ずむこともなくすくすくと育っている。 
 それも一重にドス一歩手前の巨体なゆっくりれいむだからこそ成せる行為だろう。

「ずっぎりじだぐないぃいい!!ぼうずっぎりばいやぁああああああ!!!!!」 
「んほぉおおおおぉおおお!!!いいわぁれいむ、もっとよぉおお!!もっとぉおおおお!!!!」

 加工場に引き取られたメタボれいむの日々はまさに地獄の連続だった。 
 朝は7時から起床し、加工場が定時を迎える夕方5時まで延々と子作りを強要される毎日、ボロボロになり限界を超えているメタボれいむ、どうして、何が悪かったのか、足りない餡子脳で自問を繰り返すが答えは見つからない。 
 絶望の中でメタボれいむはある希望を胸に抱いた。 
 それはあのくそどれいがいつか迎えに来るというどこから湧き出たのか分からない自信で、あの小汚いゆっくりに一時的に魅了されているだけで、必ずれいむの必要性に気付きくそどれいの方から謝りにくるだろうと信じて疑わなかった。 
 そんな絶対にありえない拠り所を持ったれいむに困惑しているのは加工場の職員たちだった。 
 ゆっくりは恐怖によって甘みがます、僅かでも希望的観測が残っていようものならメタボれいむが産む子供にも影響を及ぼすのだ 
 所長命令で、元飼い主であった僕に依頼が入ったのはつい先日のこと、僕はメタボれいむの望みを粉々に打ち砕くべく快く協力を了承した。

 今日もれいぱー地獄を味わうメタボれいむ、あにゃるから押し込まれる精子餡に反応して伸び出る茎、落ちていく赤ゆっくり、ハァハァと嗚咽を漏らし必死に耐え続けるメタボれいむであったが、ある人影を見てれいむは眼を輝かせた。

「ぐ、ぐぞどれい!!!!」

 加工場の見学ラインに僕の姿を見たからだ、腕には耳がすっかり治ったうどんげが嬉しそうに抱かれ、加工されていくゆっくりたちを蚊帳の外から見つめていた。 
 僕は一際大きいメタボれいむを見るとうどんげと一緒になってまるで哀れな小動物を見るかのように微笑み手を振った。

「ぐぞどれいぃいいいい!!ゆっぐりじないでひぎどっでね!!!ごんどはでいぶもどれいをだいぜづにずるよぉ!!!」

 防音が施されたガラス越しにメタボれいむの叫びは届かない、僕とうどんげは加工場の職員に案内され次の加工ラインに進んでいく。

「まっでぇ!!まっでぇええ!!いがないでぇえええ!!だずげでぇえええええ!!!!!ゆっぐりざぜでええええ!!!!」

 姿が見えなくなって、メタボれいむはようやく気付いてしまった。 
 もうくそどれいはれいむに完全に興味がなくなってしまった事実を、唯一胸に秘めていた希望が砕け散った瞬間、 
メタボれいむはどうすることもなく壊れたようにケタケタと笑い始める。

「ゆひゃぁああ!!ゆひゃはや!!ゆーひゃひゃひゃ!!!」

 後に加工場で歴代1位に君臨し、多くの赤ゆっくりを産み落としたゆっくりとして名が語られる事になるメタボれいむ。 
 絶望にどっぷりと浸かり優良な子を産むゆっくり母体として、メタボれいむの長い長い第二のゆん生は始まったばかりだ――。



【おわり】



========あとがき============
本作品が初投稿です、走り書きな上に拙い文章ではありますが自分なりに頑張ってみました 
ここまで読んでくださって感謝です!お付き合いありがとうございました!



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挿絵:おまんじゅうあき