ある街にどこにでもいる野良まりさが住んでいた…。
「もう辺りは暗くなってきたのぜ。今日はあそこでごはんさんを食べる日なのぜ。」

まりさの言う「あそこ」というのは…

「やぁまりさ。そろそろ来るころだと待ってたよ。」
ある裏路地で一人の老人が皿を片手に立っていた。

「いつもありがとうなのぜ。」


裏路地で待っていてくれたのはあるカフェのマスターで
料理が残っていたりするとまりさに店の裏路地で食べさせてくれるのだ。

「やっぱり…ますたーの料理は絶品なのぜ!」
まりさがおいしそうにマスターの料理を頬張りながら褒める。

マスターが照れくさそうに答える。
「ははは。君はいつも褒めてくれるね。ありがとう。喜んでくれて有難いよ。」

ここは唯一まりさが良い食事を安心してお腹いっぱい食べることのできる場所である。
週に1回ここでマスターの料理を食べるという約束をしているのだ。

「ぷはー!おいしかったのぜ!」
まりさは満足げに言い、綺麗に皿を舐めマスターに皿を返した。

「おや、もういいのかい?」

「十分なのぜ!ありがとうなんだぜ!また来週くるのぜ~」
まりさは元気いっぱいに答えた。

「来週じゃなくても…いつでも来てくれていいんだよ?」
マスターが優しく微笑む。

しかしまりさは
「大丈夫なのぜ。じゃあまりさはもう行くのぜ!またよろしくなのぜ~」
といつも通り言ってどこかへと帰っていく。

路地を出ていくまりさを見つめながらマスターは思う。
「どうしていつも一週間に一回だけしか来ないのだろうか。嫌われているのか?
 いや、ここには欠かさず笑顔でいつも来るんだ。それは無いだろう…。
 まりささえ良かったら飼ってやってもいいんだが…。」

一方、マスターの悩みを知る由も無いまりさは…
「今日もますたーの料理はおいしかったぜ!
 でも…今日もますたーは毎日来てもいいよっていってくれたのぜ…。
 でもやっぱり毎日行ったら迷惑になるのぜ。そうしたらますたーに嫌われてもう来れなくなるのぜ…。」

まりさはまりさなりに色々考えていたのだ。
しかし考えすぎて空回りになってしまっているのは言うまでもない。

このまりさはゆっくりにしては優秀な方でバッジを取れば銀バッジは確定だろう。頑張れば金も夢ではない。
しかしそれはバッジ試験を受けさせてくれるような優しい人間に出会えれたら…だ。

まりさは野良なので普段、生物以下の扱いを受けることになる。
そんな苦しい日々もマスターと話し、マスターの料理を食べている間は忘れられるのだ。

まりさとマスターはひょんなことから出会いこういう良い関係になっている。
野良にとってはこれはチャンスで幸運で奇跡なのだ。しかしまりさは普通以上にマスターの事が好きになってしまったため
迷惑をかけてしまうという不安が先立ってしまい思い切りを出すことができないのだ。

目の前にあるチャンスを我がものにしようか迷っている状態なのだ。このチャンスをどう生かすのかは
まりさ次第なのである。


まりさは住処である段ボール箱に戻った。
中には少量のエサと拾った小さな毛布。段々季節は寒くなってきた。
まりさはマスターを思いながら毛布に包まって眠りについた。

翌日、
野良ゆの日常であるゴミ捨て場漁りに行った。
ゴミ回収業者が来る前にエサと成り得るものを採って逃げないとゆっくりごと回収されてしまう。

ゴミ捨て場に到着するとゴミ捨て場周辺に住まう野良ゆ達が集まっていた。

「やぁまりさ…おはようだぜ。」
ここら辺を取仕切る長のまりさが挨拶をしてきた。
こちらも挨拶をする。
「おはようなのぜ長。」

「今日は新入りが来たんだ。一応知らせておく。」

長の後ろから出てきたのはふてぶてしい顔をしたれいむだった。
「へっ!なんてきたないまりさなんだろうね!はやくれいむにあまあまをよこせっ!」

長がフォローするように説明する。
「このゆっくりは飼い主に捨てられたみたいなんだぜ。まぁゆっくりできないが見殺しにはできないから
 こうして野良の生き方を教えてやるのぜ。」

「そ、そうなのかぜ…」
他ゆんのエサを横取りしようとしているれいむを横目に返事をする。

「じゃあ人間さんに見つからないうちに早くエサさんを探して逃げるのぜ。」
と長が言い、新入りのれいむを諭しながらエサを漁っている。

「これは長もたいへんなお荷物を抱え込んだようなのぜ…」
まりさは同情の笑みを浮かべた。

しばらく漁っていると予想よりも早い時間に遠くから車がやってきた。

「!? まだこの時間は来ないはずなのに…。あ、あの車は!加工所だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
車に描かれた加工所マークをいち早く確認した長が叫ぶ。

周りのゆっくり達は予想外の敵により焦る。

「みんな!落ち着くのぜ!いつものところに隠れるのぜ!!」
長が指揮を執って誘導する。それにまりさも従う。

しかしその混乱の中一匹大声で喚くものがいた。
「うるちゃいねぇ!れいみゅのすーぱーむーちゃむーちゃたいむをじゃまするとせいさいするよ!!」

驚きの行為に声を荒げる長。
「何をしてるんだぜ?!ゆっくりしてないでにげるんだぜ!!」

しかし長の忠告を無視しひたすらエサを漁るれいむ。

加工所の車がゴミ捨て場の目の前に止まってしまった。

ゆっくり達を誘導し終えた長とまりさは仕方なく近くの茂みに隠れれいむの様子を見た。

車から降りてきた加工所職員の声が聞こえる。
「ここか?ゆっくりによるゴミ荒らしの報告があったのは。」
「ああ。蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったがな。…ん?」

未だ残飯に貪り付いているれいむが見つかった。

「おい…」

「うるさいねくそじじぃ!!れいみゅのすーぱー…」

れいむが言い終わる前に男に摘み上げられた。
「ああ~典型的なゲスだな。バッジが千切られた後もある。こいつは即処理でいいな。」

するとれいむがとんでもないことを発した。
「しょり!? …こんなにかわいいれーみゅをころすくらいならあそこにいるにげたげしゅたちをころちてね!すぐでいいよ!」

「!?」
長とまりさは驚いた。このれいむは平気で同族を売ったのだ。

思いがけない情報に思わず加工所職員の顔から笑みがこぼれる。
「ほぅ…。れいむちゃん。他のゆっくりはどこに逃げたんだい?なるべく詳しく教えてほしいな。」

「れいみゅはやさしいからおしえてやるよっ!いったられいみゅをあまあまのあるあんぜんなところにつれていってね!」

「ああ…分かったから早く言え。逃げられてしまうだろう…。」

「れいみゅをみすてたのやつらはあのあなからにげてこのさきのふほうとうきがたくさんのばしょにすんでるよ!」

「不法投棄なんて言葉知ってるのかw まぁ良い。良い情報をありがとう。じゃあれいむちゃんにはお礼をしなきゃね。」
ひどく冷たい言葉で言い放った。

「やっとりかいできたみたいだねくしょどれい!はやくあみゃあみゃを…」



グシャァ



話し終わる前に掴まれていたれいむはその職員に握り潰された。

「まったく…ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ話しやがってよぉ!大人しく聞いていれば好き勝手言いやがって!」
その職員は餡子まみれの手に向けて怒鳴った。

すると…
「うっ…でいびゅばっ…ごひゅぅ…」
まだ死んでないようだ。しかし中枢餡も潰れかけ体は原型を留めていない。

「チッ…まだ死んでないか。しぶとさだけはさすがだな。」

「でいぶばもっどゆっくじぃj「グチャァ!!」・・・・」
れいむが叫ぶ間も与えずれいむを地面に叩き付け息の根を止めた。

「まったく…イライラさせやがって…」
れいむの遺骸を踏み潰しながら言う。

「後輩よ…加工所職員合ってないんじゃないのか?鬼威山オーラが出まくってるぞ。
 感情に流されるとやっていけないぞこの仕事は。」
もう一人の職員がイライラをなだめる。

「そうですか…先輩。まぁとりあえずこいつが言っていた野良ゆ達のたまり場にでも行きますか。」

「そうだな」

そう言った後2人は車に乗り込みれいむの言った場所へと車を走らせた。

その一部始終を見ていた長とまりさは危機を知らせるべくたまり場に急いだ。

「ゆゆっ!あのでいぶ平気で仲間を売って同族殺し相当のことをしでかしたから当然の報いなのぜ。」
急いで走りながら長は怒っていた。

「でも今は危険を急いで仲間たちに知らせなくちゃいけないのぜ!」
まりさは長を急かしながら急いだ。


しばらくしたらたまり場に2匹が到着した。まだ加工所の職員達は着いていないようだ。

長が声を張り上げて叫んだ。
「全ゆん!聞くのぜ!一匹のゲスによってここが人間さんにばれたのぜ!急いで別の場所に逃げるのぜ!!」

その声を聞いた野良ゆ達は驚いて急いで逃げる準備をする。

「ゆんやー!!にんげんさんはゆっくりできないよー!」「わかるよー!にげないとだめなんだよー!」
「せんりゃくてきてったいむきゅ!」「おちびちゃんたち!さぁゆっくりしてないでついてきて!」

準備をした野良ゆ達は長とまりさを先頭に予備引っ越し先であった建築現場に移動した。

「ここまできたら大丈夫だろうなんだぜ。
 みんな、持ってきた食料を一ヵ所に溜めていつまで持つか計算しておくのぜ!」

この群れは比較的賢い長により躾がされているためある程度は知能が高く統率が執れているのだ。


_一方元たまり場では…

「…ここがあいつの言ってたたまり場なんだが…」

「くそっ!あの腐れ饅頭!嘘つきやがったのか!?群れごと殲滅してやりたかったのによぉ!!!」
近くにあったアルミ箱を蹴とばしながら怒った。

「落ち着け後輩。ここにゆっくりが物を食べた跡と寝泊まりした跡が残っている。俺たちと
 あのでいぶのやりとりを見たやつがいるようだな。」
至って冷静な口調で考察する先輩職員。

「それにしてもこんなに早く逃げれるものですかねぇ?」
イライラ混じりに後輩職員が問う。

「それなりに頭のキレるゆっくりがいるようだな…まぁ久しぶりに楽しめるかもしれんな…」
常に冷静で無表情だった先輩職員の顔に不気味な笑みが浮かんだ。

「でも逃げられたしもう追跡は不可能ですかねぇ?」
溜息を吐きながら残念そうに言う。

しかし先輩職員は悪戯な笑みで答えた。
「いや、そうとも限らない。ゆっくりの力によって逃げられたのならゆっくりの力を使って探せばいい…」

その言葉の意味を理解した後輩職員。
「あ~トランクに積んでるあれですね。」

「そうだ。あれだ。」
そう言うと車のトランクを開き複数のゲージを外に出した。

「さぁ・・・出てこい・・・。ゆっくり狩りの時間だ。」
ゲージを勢いよく開けると中から物凄い速さで何かが飛び出しどこかへ飛んで行った。



===あとがき===
ご精読ありがとうございます。
めちゃくちゃ悩んだ末、個人的に気に入った「オレセカあき」と名乗らさせてもらいます。
こういうのは読者の方からつけてもらうのでしょうが、まぁふたばじゃないのでお許しを。

前回の伏線をガン無視した連載物です。
人間が出てこないのはもう少し待っててくださいw
スランプでなかなかしっくりする作品が書けなくて今回の作品も妥協点が多い気がするかもです^^;

過去投稿作品
「俺と世界とゆっくりと」全五話
「選択」
「家ゆ駆除ハウス」