その日、私はいつも通り仕事を終え、家路を歩いていた。 
空はすでに薄暗く、西空は綺麗な茜色に染まっていた。 

角を曲がる。 
周りに人影がなくなり、歩いているのは私だけになる。 
どこかの家の夕食だろうか? 
風に乗ってカレーの匂いが私の鼻をくすぐっていった。 


ああ、とてもゆっくりした時間が流れている。 

と、そんな私に話しかけるものがいた。 

「おねがいします!!たすけてくださいぃぃ!!」 

見れば、小汚いボロボロのれいむが電柱の影にいた。 

「にんげんさん!おねがいします!!れいむはどうなってもいいから!! 
 おちびちゃんだけでもたすけてください!」 

そう言うとれいむはこちらに向かって土下座をするように倒れ、 
2本のもみあげを器用に差し出すように持ち上げた。 

差し出されたのは1匹の子まりさ。 
衰弱しているのか、虚ろな目をしており、呼吸も荒い。 
適切な治療を受けなければ今夜にでも永遠にゆっくりしてしまう、そんな状態だった。 

「れいむはかいゆっくりでした!!このこにはしっかりとしつけをしました! 
 まりさによくにたとってもゆっくりしたいいこなんです!!だから・・・!」 

黙っている私を、話を聞いてくれる人間さんだと勝手に判断したのだろう。 
矢継ぎ早に説明を始めるれいむ。 
その姿は全くゆっくりしていない。 

だが、おおよその事態は把握できた。 
れいむは自分を飼いゆっくりと言ったが、「元」飼いゆっくりだろう。 
でなければこんなにボロボロな訳がない。 
おそらく野良まりさと勝手に赤ゆを作り、飼い主に捨てられた類のゆっくり。 

『れいむ、番はどうした?子供は一匹だけか?』 
どれだけこの子まりさがゆっくりできる存在か無駄にしゃべり続けるれいむを遮り、私は短く質問をした。 

「ゆ・・・まりさはかりにいったままかえってこなかったんです・・・。 
 おちびちゃんはたくさんいたけど・・・」 

そこまで聞けばもう十分だ。 
野良生活に慣れていないれいむは番のまりさを何らかの理由で失なった。 
元飼いゆっくりで狩りも、身を守る術も十分に行えないれいむは 
次々に我が子を失っていったのだろう。 
そして最後の1匹も衰弱し、最終手段として人間を頼った・・・。 

『・・・ありきたりだな』 
「ゆ゛!?」 

そう、ありきたりだ。こんなゆっくりなどそこら中にたくさんいる。 

(・・・まぁ、ゲスやでいぶでないだけマシな部類だが、な) 

『で、この子まりさを私にどうして欲しいんだ?永遠にゆっくりさせればいいのか?』 
「ゆ゛!!?ち、ちがうよ!!たすけてほしいんです!!」 

ふむ、違うのか。 
そうした方がこちらとしても楽だし、長く苦しむよりはいいと思うのだが。 

「おねがいします!!れいむはどうなってもいいから!! 
 おちびちゃんだけでもたすけてください!」 

このとおりですから!と、再び土下座らしきポーズをとる。 

(ふむ・・・) 

『・・・れいむはどうなってもいいんだな?』 
「ゆ、ぐ・・・はい!れいむ゛ばどうなっでもがまいばぜん!!」 

まだどこか覚悟できていないのだろう。半泣きになりながらそう宣言するれいむ。 
だが、まあいい。半泣きとはいえ断言できる程度の覚悟があるのなら十分だろう。 

『いいだろう、助けてやろう』 
「ゆ!ほんとうですか!!」 
『・・・線引きはしておこう。助けるだけでいいんだな?』 
「ゆぅ・・・で、できればかいゆにしてあげてください! 
 のらはゆっくりできないんです! 
 このままだといつかまたおちびちゃんはまたゆっくりできなくなります!!」 

こいつ・・・要求を上げやがった。 

『・・・飼いゆねぇ・・・まぁいいだろう』 
「ゆ!?ほ、ほんとうですか!?」 
『ああ、本当だ。・・・ただし、本ゆんが飼いゆになることを拒否したらその時は飼わんぞ』 
「ゆ、それでかまいません!!」 

ふむ、まぁこんなところか。 
『では最終確認だ』 

1つ、れいむはどうなってもいいから子まりさを助ける。 
2つ、子まりさが希望すれば、飼いゆにする。 
3つ、拒否した場合は飼わない。 

「ゆ・・・ゆっくりりかいしました・・・」 
『よろしい。ではまずは治療だが、ここでは無理だ。家まで案内しよう』 



そうして私は子まりさを飼うことになった。 



「おにいさん!ゆっくりおはよう!」 
『ああ、おはよう、まりさ』 

いつも通り、2階で目を覚ました私は、1階のリビングでまりさと挨拶をし、 
まりさのおうちとして与えたケージの扉を開けてやる。 

あの日、一晩オレンジジュースの点滴を受けたまりさは朝には元気になっていた。 
そして、『飼いゆになるか?』という質問に「なる」と答えた。 

『ゆっくり眠れたかい?』 
「ゆ!ゆっくりできたよ!べっどさん、ふかふかさんでありがとうね!」 

元気よくケージを飛び出たまりさは自分のおうちにそう、声を掛ける。 
飼いゆっくりとなった最初の頃は、親が恋しかったのだろう。 
巣として与えたケージの中、毎晩ひとりの寝床を涙でぬらしていたが、今ではそんなこともない。 

『ほら、朝ご飯だ』 
「ゆっくりただきます!」 

また、れいむの言うとおり、一通りの躾はされていたらしく、行儀良く餌を食べ、決まったところをトイレにするなど、私を困らせることも少なかった。 

『では、行ってくる』 
「ゆっくりいってらっしゃい!」 

そうして私はいつも通り、再び2階に上がり、用事を済ませてから仕事に出かける。 
これがまりさを飼い始めてからの、いつもどおりの朝。 
いつもどおりのまりさのいる生活。 



そして、これが最後の朝だった。 



いつも通り仕事を終え、帰宅した私を迎えたのは、まりさともう1匹、薄汚いれいむだった。 
「「ゆっくりしていってね!」」 
『・・・・・・』 
「ゆ?おにいさん、どうしたの?」 
「ゆふふふふ、きっとあまりのゆっくりさにことぼをうしなっているんだよ!」 
「ゆ!きっとそうだね!れいむはとってもゆっくりしてるからね!」 

そう言うと2匹はゆんゆんとお互いをすりすりし始めた。 
薄汚いれいむの頭には赤ゆが5匹実り、ゆらゆらと揺れてる。 

『・・・ああ、そういうこと』 

それを見た私は、すぐさま状況を理解した、 
これまたありきたりの展開なのだろう。 

「おにいさん!れいむはまりさのはにーだよ!れいむもかいゆっくりにしてね!」 

ほらきた。 

『まりさ、野良はゆっくりしてないから、一緒にゆっくりしてはいけないと言っていただろう?』 
「ゆぅ・・・で、でもれいむはとってもゆっくりしたれいむで・・・!」 
『しかも勝手に赤ゆっくりまで作って。約束を破ったね?』 
「で、でもあかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!!」 
「ゆぷぷ、そんなこともわからないなんて。ばかなの?しぬの?」 

・・・しかもゲス気質のあるれいむか。 

やはり約束させたとはいえ、まりさの望むままに、自由に外に出られるようにしていたのがまずかったのだろう。 
優秀なゆっくりとはいえ、所詮は欲望に正直なゆっくり。 
まりさは約束を破り、 
禁じられた野良ゆっくりに恋をして、 
ゆっくりできるからと禁じられた赤ゆを作り、 
それを理由にれいむも飼いゆにしてみんなでゆっくりしようとしたのだろう。 

・・・ありきたりだ。実にありきたりだ。 

「・・・ゆ?おにいさん?」 
『・・・まりさ。れいむを飼いゆっくりにすることはできない』 
「「ゆ゛!?」」 
『だから、まりさ、選べ。 
 れいむと赤ゆのことを捨てて忘れて、飼いゆっくりで居続けるか 
 れいむと赤ゆとゆっくりするために、飼いゆっくりをやめるか』 
「ゆ゛っ!!?どぼじでぞんなごというの゛!?」 
「ま、まりさ!れいむかいゆっくりになれるんじゃないの!?」 

『選ぶんだ、まりさ。本当なら約束を破ったお前を問答無用で捨てても良いし、殺してもいい。だが、お前の母れいむとの約束があるから選択はさせてやる』 

あの時、私は母れいむに約束した。まりさを助けると。まりさが望むのならば飼いゆにすると。 
約束を破ったまりさを罰するのに、私が約束を破るわけにはいかない。 
だから、選ばせる。 
まりさが希望すれば飼いゆにする。 
まりさが拒否すれば飼わない。 
母れいむとの約束だ。 


「ゆ・・・ゆぐ・・・ま、まりさは・・・」 
「まりさぁ・・・」 

『選ぶんだ、まりさ』 



結局、まりさはれいむと赤ゆを選んだ。 
野良はゆっくりできないと飼いゆになるよう望まれたまりさは、 
まりさが拒否したことで野良となった。 
母れいむと約束した日からずいぶんと日は経っていたが、約束は約束だ。 

その日のうちにわずかばかりの選別とともに、まりさは私の家から去っていった。 
意気消沈したまりさと、まりさを「うそつき」とわめき散らすれいむはあの日と同じ、茜色の空の下に消えていった。 

私といえば、まぁ、それなりに可愛がっていたまりさに裏切られ、数日は落ち込みもしたが、今ではすっかりと前の、まりさののいなかった頃の生活に戻っている。 

今日も私はいつも通り仕事を終え、家路を歩いていた。 
最近は日が落ちるのも早くなり、空は綺麗な茜色から藍色に変わりつつあった。 
色々あったが、季節はゆっくりと巡っていっている。 

角を曲がる。 
相変わらずここからは周りに人影がなくなり、歩いているのは私だけになる。 
どこかの家の夕食だろうか? 
風に乗って焼き魚の匂いが私の鼻をくすぐっていった。 

ああ、とてもゆっくりした時間が流れている。 

と、そんな私に話しかけるものがいた。 

「おねがいします!!たすけてくださいぃぃ!!」 

見れば、小汚いボロボロのあのまりさが電柱の影にいた。 

「おにいさん!おねがいします!!まりさはどうなってもいいから!! 
 おちびちゃんだけでもたすけてください!」 

そう言うとまりさはこちらに向かって土下座をするように倒れ、 
脱いだ帽子をおさげで器用に差し出すように持ち上げた。 

差し出されたのは1匹の子まりさ。 
衰弱しているのか、虚ろな目をしており、呼吸も荒い。 
適切な治療を受けなければ今夜にでも永遠にゆっくりしてしまう、そんな状態だった。 

「まりさがばかでした!!のらはぜんっぜんゆっくりできません!! 
 このこにはしっかりとしつけをしました! 
 とってもゆっくりしたいいこなんです!!だから・・・!」 

黙っている私を、話を聞いてくれていると勝手に判断したのだろう。 
矢継ぎ早に説明を始めるまりさ。 
その姿は全くゆっくりしていない。 

『まりさ、愛しのれいむはどうした?子供は一匹だけか?』 
どれだけこの子まりさがゆっくりできる存在か無駄にしゃべり続けるまりさを遮り、私は短く質問をした。 

「ゆ・・・れいむはでいぶになっちゃって、もうぜんぜんゆっくりできないんだよ・・・。 
 おちびちゃんはれいむによくにたこはたくさんいたけど・・・」 

そこまで聞けばもう十分だ。 
元々ゲス気質のあったれいむは、子を産み、でいぶと化した。 
れいむは自分と同じれいむ種だけを優遇し、1匹だけ生まれた子まりさを冷遇したのだろう。 
そして、野良生活に慣れていないまりさは満足に狩りもできず、得られる餌は少ない。 
愚図、全然ゆっくりできないと罵倒され、自分によく似た子はどんどん衰弱していく。 
全くゆっくりできなくなったまりさは子まりさを連れて巣を飛び出し、最終手段として人間を、元飼い主の私を頼った・・・こんなところだろう。 

『・・・ありきたりだな』 
「ゆ゛!?」 

そう、ありきたりだ。しかもほぼ母れいむと同じ会話展開だ。 
いやはや、親子というのはこんなところまで似るのかと感心する。 

『で、この子まりさを私にどうして欲しいんだ?永遠にゆっくりさせればいいのか?』 
「ゆ゛!!?ち、ちがうよ!!たすけてほしいんです!!」 

ふむ、違うのか。 
そうした方がこちらとしても楽だし、長く苦しむよりはいいと思うのだが。 
それに、もうまりさは自分の意志で野良になっているのだ。母れいむとの約束は果たされていて、もう守る必要もない。 

「おねがいします!!まりさはどうなってもいいから!! 
 おちびちゃんだけでもたすけてください!」 

このとおりですから!と、再び土下座らしきポーズをとる。 

(ふむ・・・) 

『・・・まりさはどうなってもいいんだな?』 
「ゆ、ぐ・・・はい!までぃざばどうなっでもがまいばぜん!!」 

まだどこか覚悟できていないのだろう。半泣きになりながらそう宣言するまりさ。 
さすが親子。ここまで似るか。 
ゆん生の大半を私と過ごしたはずなのだが「3つ子の魂、百まで」ということか・・・。 

いいだろう。ここまで同じ展開なのだ。興が乗った。 
私も同じことをしてやろう。 

『いいだろう、助けてやる』 
「ゆ!ほんとうですか!!」 
『・・・線引きはしておこう。助けるだけでいいんだな?』 
「ゆぅ・・・で、できればかいゆにしてあげてください! 
 のらはゆっくりできないんです! 
 このままだといつかまたおちびちゃんはまたゆっくりできなくなります!!」 

ははははは!また一緒だ! 
こみ上げる笑いを必死に押さえつける。 

『・・・飼いゆねぇ・・・まぁいいだろう』 
「ゆ!?ほ、ほんとうですか!?」 
『ああ、本当だ。・・・ただし、本ゆんが飼いゆになることを拒否したらその時は飼わんぞ』 
「ゆ、それでかまいません!!」 
『では最終確認だ』 

1つ、まりさはどうなってもいいから子まりさを助ける。 
2つ、子まりさが希望すれば、飼いゆにする。 
3つ、拒否した場合は飼わない。 

「ゆ・・・ゆっくりりかいしました・・・」 
『よろしい。ではまずは治療だが、ここでは無理だ。家まで案内しよう』 

・・・すばらしい。たまらない! 
ここまで、ここまで一緒か!まりさ! 
いいだろう!あの時と同じように約束は守ろう! 


そしてお前は知ることになる! 
お前が飼いゆになるのと引き替えに母れいむがどうなったのかを! 


家に着き、まずあの時と同じように、オレンジジュースの点滴を用意し、子まりさの治療を始める。 

『・・・これで明日の朝には元気になっているはずだ』 
「ゆ・・・よかったよ。ありがとう!おにいさん!」 

目に見えて顔色の良くなった子まりさを見て、ほっとしたのだろう。 
まりさの顔にも笑顔が戻った。 

『さて、まりさ。お前はどうなっても構わないんだったな?』 
「ゆぐっ!?・・・ゆ、か、かまわないよ・・・」 

ははは、本当に素晴らしい。 
まりさ、お前は知らないだろうけど、母れいむもそんな顔をしていたよ。 

『ではこっちだ、まりさ』 
「おそらをとんでるみたい!?」 

まりさを持ち上げ、リビングを出る。 
目指すは、2階。まりさが入ったことのない場所だ。 

『お前は2階に上ったことがなかったよな?』 
「ゆ?そうだよ。のぼっちゃだめっていわれたし、かいだんさんはゆっくりできないよ・・・」 

そうだ、その通り。 
2階に上がってはいけない。それもまりさとした約束の一つだった。 
まぁ、まりさの場合、1度だけ約束を破って上ったことがあったが、派手に転がり落ちて餡子を吐くほど床に叩きつけられ、それ以来近づこうともしなかったが。 

『懐かしいな。お前の母親もこうやって2階に連れていったよ』 
「ゆ!? おかあさん!?」 
『ああ、そうさ』 

2階の1室。寝室の隣のドアを開ける。 

『ただいま、いい子にしていたかい?』 
「「うー☆」」 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・どぼじでれみりゃがいるの゛ーーーーーー!!!」 

そこにいたのは、れみりゃ。金バッチをつけた成体が1匹と銀バッチの子が2匹。 
3匹ともうれしそうに部屋を飛び回っている。 

『何でって・・・飼ってるからだよ』 

私の言葉に呆然とするまりさ。 

「まさかまりさのかわりに!?」 
『馬鹿言うな。あの成体が子ゆっくりの時からずっと飼い続けているんだ。お前は関係ない』 

そう、私はれみりゃを飼っている。子ゆっくりからここまで育て上げた。 

「で、でも、あかちゃんはだめって・・・!」 
『お前も我慢していればそのうち許してやったさ。同じ飼いゆの番を探してね』 
「ゆぅーーーーーーーーーーーー!!?」 

「うー☆」 
と、子れみりゃが1匹、近づいてきた。 
「ゆわわわわ! こないでね!? こないでね!?」 
『よしよし、待て!』 
「「うー☆」」 

私の「待て」を聞き、3匹とも床に着陸し、こちらにキラキラと催促するような目を向けてくる。 

「ゆわ、ゆわ・・・!」 

未だ逃げ出そうとするまりさを左手でしっかりと押さえつけ、私は部屋にある防音ケースからあるものを取り出し、床に放り投げる。 
「ゆべっ!!いちゃいよ!ゆっきゅりしちぇにゃいにぇ!」 
それはれいむ種の赤ゆ。 

「ゆ!?」 
まりさが混乱しているようだが、放っておく。 

『よし!』 
「「うー☆」」 
「ゆ?ゆぴぃーーーーーー!!れみりゃだーーーー!!こっちこにゃいでにぇ!」 
「うー☆」 
「ゆぴぃ!!?」 
「うー☆」 
「ゆべぇ!?」 
「うー☆」 
「ちゃべ・・・ゆべぇ!・・・にゃいでにぇ!・・・れい・・おいじぎゅ・・にゃ・・!!」 

私の号令を聞き、赤れいむに群がるれみりゃ達。 

「・・ゆ゛・・・・・もっちょ、ゆっきゅ・・・」 
「「うー☆」」 

あっというまに赤れいむはれみりゃ達の餌となって皮だけを残し、消えた。 
「ゆ・・・ゆぅ!?おにいざん!!なんなのごれ!!?」 
『れみりゃにご飯をあげたのさ』 
「ゆぅ!?」 

れみりゃは捕食種だ。最初はゆっくりフードで育てていたのだが、ある時から生き餌に替えた。 
生き餌の方が食事毎の狩りが運動になるのか、元気で調子も良くなるのだ。 

「うー」 
『足りないのか?まぁ待て。今日は特別なごちそうがあるからな』 
「「うー☆」」 
「お、おにいざん!?まざがばでぃざがぞのごぢぞうじゃないよね!!?」 

ほう、勘が良いな。だが、残念。 

『はずれだ、まりさ』 
「ゆ?」 
『ほら、これがごちそうだぞ』 
「「うー☆」」 

「ー・・・ー・・・」 

ケースから取り出したそれは成体のれいむ。 
身体にはいくつものチューブが繋がっている。 

「ゆ?なんなの、このれいむ・・・」 

チューブはオレンジジュースや精子餡の詰まった容器に繋がっている。 
これはれみりゃ達のための、生き餌を作る赤ゆ製造器。 

「ぜんぜんゆっくりしてないよ・・・」 

足は動かぬように焼かれ、口も縫いつけられ、目だけが虚ろに光っている。 

と、その虚ろな目が驚きに見開かれ、光を取り戻す。 
「ゆ?なんなの?」 
「ーーーー!!?ーーーーー!!?」 
光を取り戻した目は、まりさを見ている。 
必死に何かを伝えようとしているようだ。 

『・・・それ、お前の母親な』 
「ゆ゛!?」 

そう、このれいむはあの母れいむだ。 
あの日、自分はどうなってもいいと言ったれいむは赤ゆ製造器となった。 
1匹の自分の子を救うために、それよりも多く、自分の子を生き餌として産んだれいむ。 

「ーーーーーーーー!!ーーーー!!」 

その身体はもうボロボロで、皮はひび割れている。 

『・・・対面はこれぐらいで良いか。れみりゃ』 
「ゆ゛!?まってね!?おにいさんまってね!?」 
「ーーーーーー!!ーーーーーーーー!!」 

『よし!』 

「「うー☆」」 
れみりゃ達がれいむに飛びかかる。 

「ーーーーーー!!??」 
「やめてね!?おにいさん!?やめてね!?」 

ゆっくりと中身を吸われていくれいむ。 
長い間、全くゆっくりできていなかったその中身はさぞかし甘くなっていることだろう。 

『・・・れいむ、私は約束を守ったよ。まりさは飼いゆっくりになって、ここまで大きくなった。残念ながら勝手に野良と番になって飼いゆでいることを拒否して野良に戻ってしまったけどね』 

「ーーーーー!!??」 
れいむが暴れ出す。 
それは痛みのせいか、それとも我が子の現状を聞いたからか。 

『そしたら今日、まりさが私に助けを求めてきたんだよ。あの日の君のように』 

「ーーー!?」 
繋がっていたチューブが外れていく。 
オレンジジュースが、精子餡が飛び散るが、気にせず独白を続ける。 

『そう、あの日の君のように、だ。さすが親子だね。細部は違うものの、まったく同じ展開だったよ』 

「ーーーーーーーゆがべへぇ!?」 
暴れたからだろうか?縫いつけていた口が開いた。 
これにも構わず続ける。 

『台詞も同じだったよ。自分はどうなってもいいから、子供を助けてくださいってね。大丈夫、君の孫にあたる子まりさは助けたよ』 

「ゆがっ!?ぐべっ!?」 
ふと見れば、まりさはおそろしーしーを漏らしていた。 

『あまりにも一緒すぎてね。感動すら覚えたよ。だから』 

「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 
痙攣が始まる。もう長くはない。 

『だから同じ約束をした。この「野良まりさ」は君と同じになる』 

「「ーーーーーーーーーーー!!」」 

最後の叫びはれいむとまりさ、親子のものだ。 
れいむは中身が無くなった断末魔の叫び。その中に我が子の末路を知った絶望も混じっていただろうか? 
そしてまりさは自分のこれからを知った叫び。 

「「うー☆」」 
れみりゃ達が満足そうに飛び回っている。 
さぞかし、甘いごちそうだったのだろう。 

『よかったな、れみりゃ・・・さぁ、「野良まりさ」君』 
「ゆ゛!?やめでね!?ゆっぐりざぜでね!!? 
 ゆ、ゆ、ゆわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 



「・・・ゆ?きょきょは?」 
『ゆっくりおはよう、まりさ』 
「ゆ?にんんげんしゃん?」 
『昨日のことを覚えているかな?君のお父さんに頼まれて君を助けたんだけど』 
「ゆっ!おぼえちぇるよ!ゆっくちありがちょう!」 
『なに、感謝するならお父さんにしなさい。自分はどうなってもいいから、子供を助けてくださいって言って、君を助けるために頑張った・・・いや、「頑張っている」んだから、ね』 
「ゆ!?そうぢゃよ!おちょうしゃんは!?」 
『別の場所で「頑張って」いるよ。・・・ところでまりさ』 
「ゆ?」 
『私の飼いゆっくりになるかい?』 


そうして私は「まりさ」を飼うことになった。 
さて、2階に上がってれみりゃ達に生き餌をあげよう。 
それからまたいつも通り、仕事に出かけよう。 

そう、前と同じ、「まりさ」のいる生活だ。 

【おわり】