ここは人里から少し森に入った所にある、平和でのどかなゆっくりプレイス。 
気候も穏やかで大きな動物もおらず、背の低い草が青々と茂り、 
木々も程よくまばらに生えているため、日の光も柔らかに大地を包む。 
豊かにして優しい、実にゆっくりとしたゆっくりプレイスであった。 



「ぱちゅり~!きのみさん、たくさんとれたのぜ!」 
「むきゅ~・・・むきゅん!おつかれさま! 
じゃあ、これとこれはほぞんしょく、あとはみんなでたべましょう。」 
「ゆっくりりかいしたのぜ!みんなー!ちょぞうこまではこぶの、てつだうのぜ!」 
「「「わかるよー!!」」」 

こんな場所なら当然だろうが、ここにはゆっくりの群れが住み着いていた。 
まだ住み着いて一回しか冬を越していない、若い群れだ。 

長はそこそこ賢いぱちゅりーが、補佐はその旦那さんであるまりさが行っている。 
頭脳労働はぱちゅりーが行い、その提案に沿って群れを動かすリーダーがまりさの役割。 
あえてぱちぇを長としているのは、その方が群れのみんなが言う事を聞いてくれそうだからである。 
元からリーダー格のまりさについては、特に肩書きを必要とはしてなかったのであろう。 
ともあれ、能力をきちんと考えた役割分担で、群れの運営はなかなかに上手くいっていた。 


そんなゆっくりプレイス内にある一本の枯木の根元。 
そこにれいむは住んでいた。 

「おかーさん!おかえりなさい!!ゆわーい、いもむしさんだー!」 
「おちびちゃん、ただいま!」 

れいむはまだまだテニスボールサイズの子ゆっくり。 
赤ちゃん言葉は抜け切り、お外を元気に跳ね回れる程度には成長しているものの、 
まだまだ独り立ちは先のことだ。 
それでも、父まりさが狩りの途中に命を落として以降、、 
母れいむが狩りに行っている間は、妹たちの世話をしながらお留守番を一生懸命がんばっている。 

「はやくむーちゃむーちゃさせちぇにぇ!れいみゅ、おなかぺーこぺーこにゃんだよ!」 
「ゆゆ!?れいむ、おかーさんにおかえりなさい!がさきでしょ!」 
「ゆぴっ!?・・・ゆぅ、ゆっくちおかえりなしゃい・・・ごめんにぇ。」 

そんなれいむには、2匹の妹達がいる。 
好奇心旺盛で元気いっぱい、少々わがままなのが玉にきずだが、 
それでも姉である自分のいうことは素直に聞く次女れいむ。 

「むーちゃむーちゃ、むーちゃ、ち、ち、ちあわちぇー!!」 
「ま、まりさぁ。おくちのまわりがよごれてるよ。ぺーろぺーろ。」 
「ゆぅぷ、ちゅっきりー!おねーしゃん、ありがちょーなのぢぇ!」 

それと、とっても甘えん坊で、いつも自分にべったりの、お姉ちゃん子の末っ子まりさ。 

れいむの可愛い妹達。 
ホントは姉妹ももっと多かったのだが、野生の世界は全員無事に成長させてくれるほどには甘くない。 
それでも、れいむは優しい母れいむと、自分を慕ってくれる妹達に囲まれて、 
この上なくゆっくりした毎日を送っていた。 



「しつれいするみょ~ん!おちびちゃんたち、あそびにいこうみょ~ん!」 
「わかるよー。ちぇんたちとおそとであそぼうねー。」 
「むほぉ!むほぉぉ!」 

れいむ一家が仲良く昼ごはんをむーしゃむーしゃしていると、 
今日も群れの保育担当であるみょん達が、赤ゆっくり達に遊びのお誘いに来た。 
天気のいい日には、この群れでは赤ゆっくり達を広場に集め、みんなで仲良く遊ばせているのだ。 
同年代の赤ゆっくり達を仲良く遊ばせることで、将来大きくなってからも群れが結束するように、との考えである。 

まあ実際のところは、手のかかる赤ゆっくり達を一時的にでも一か所に集めて管理し、 
親ゆっくり達の負担を軽減しようという狙いがあったりするのだが。 

「ゆあーい!れいみゅ、みょんおにぇーしゃんたちと、あしょんでくるにぇ!」 
「ゆふふ。じゃあ、みょん、ちぇん、ありす。おちびちゃんをよろしくね。」 
「むほぉおお!!」 

「ゆぃ。まりしゃ、おかーしゃんとゆっくちしゅるのじぇ!」 
「ゆ?ゆふふ。おちびちゃんは、まだまだあまえんぼさんだね。」 

もちろんどんな赤ゆっくりでも連れていくわけではない。 
ベッドから這い出れない、生まれて数日以内の赤ゆっくりは、もちろんおうちで母親が世話をするし、 
末っ子まりさのようにまだまだ精神的に幼い赤ゆっくりは、両親の元に残ることも多い。 

「おかーしゃん!おねーしゃん!いってくるにぇ!」 
「「ゆっくりいってらっしゃい!!」」 

ともあれ、普段おうちからも出してもらえない赤ゆっくりにとって、 
この青空お遊戯会は、おとな社会への最初の一歩なのであった。 
次女れいむは保育みょん達の方に跳ねながら、母達に輝くような笑顔を見せて出発の挨拶をした。 



「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 

そしてこれが、れいむ一家が仲良く顔を合わせた最後の時になった。 



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「むきゅきゅ、まりさ。むれのおちびちゃんたち、ゆっくりしてるわね。」 
「そうなのぜ~。これもぱちゅりーのおかげなのぜ~。」 
「むきゅぅん。まりさがきょうりょくしてくれてるからよ。ゆぅ・・・すーりすーり。」 
「だ、だめなのぜぇ。こんなおそとですっきりーなんて、はずかしいのぜぇ。すーりすーり・・・」 

群れの素晴らしいゆっくりっぷりに、思わずすっきりーしてしまいそうになる長ぱちゅりー達。 
保育みょん達が集めた赤ゆっくり達は、その長ぱちぇと補佐まりさが見守る小さな広場の中で、 
楽しそうな声を上げながら遊びまわっていた。 


「おし~りふりふり、の~びの~び!うんうんさんも~おでかけするよ~!す~す~、すっきり~!」 
「「「うんうんしゅるよ~!しゅっきり~!」」」 

保育ちぇんは最近お腹の調子が悪いおちびちゃん達を集め、お通じをよくするうんうん体操をさせる。 

「むほぉおお!むほぉおお!むほぉ!」 
「「「みゅ、みゅほぉおお!!ちゅ、ちゅっきり!」」」 

保育ありすは赤ありす達を集め、都会派になるための礼儀作法やコーディネート技術を教えている。 

「ちょうちょしゃん!ゆっくちまっちぇ~!」 
「ゆっくちこっちにくるのじぇ!まりしゃがむーちゃむーちゃしてあげるのじぇ!」 
「おはなしゃん、れいみゅにゆっくちたべられちぇにぇ!」 

また、お腹がすいた赤ゆっくり達は、狩りの練習を兼ねて野原の美味しい恵みを味わう。 

本能的に備わっているのであろう。 
遊びの内容も、将来おとなになってから役立つ技能を身につけるのに必要なものなのだ。 

「まりしゃがぷくーするのじぇ!ぷっきゅ~!」 
「ゆわわ~、しゅごいにぇ!まりしゃはさいっきょうのゆっくりだにぇ!」 
「ゆゆぅ~ん。でも、おとーしゃんのほうが、ぷっく~はおっきいのじぇ!おとーしゃんがさいっきょうなのじぇ!」 

口の中に空気を溜めて体を膨らませる、威嚇行動であるぷくーの練習をしている赤ゆっくりもいる。 
これなら、将来は家族達を守っていける、立派なおとなになれることだろう。 

「かけっこだよー!ちぇんについてこれるー。」 
「みゅほぉ!みゅほおお!!」 
「あ、ありしゅ?おめめがこわいよー!?」 

森で生きるには、駆けっこの速さも大事な技能だ。 
多くのおちびちゃん達は、有り余る元気を発散させるように、広場の端から端まで元気に跳ねまわっている。 

・・・この広場で遊ぶおちびちゃん、群れの次代を担う新しい生命達は、 
子育てのベテランである保育ゆっくり達に見守られ、元気に遊びながら目に見えるほどスクスクと成長し続けていた。 
その明るい未来に、一点の曇りすらないかのように・・・ 




ガサッ。ガサッ。 

「ゆぅ?」×200 

そこに、なんの前触れもなく、突然の来訪者が現れた。 

「むきゅ?・・・にん、げんさん?」 

それは、長ぱちゅりーを含め、群れでも数匹しか見た事のない生き物。 
ゆっくりと同じ言葉を使い、胴付きゆっくりのような体を持った不思議生物。 
・・・『にんげんさん』。 

「ぽかーん。」×200 

赤ゆっくり達は、その未知の生物を見て、逃げるでもなく声をかけるでもなく、 
口をぽかーんと開けてその姿を見上げていた。 

にんげんさんは、ひとりではなく、この広場をぐるっと囲めるほどの人数がいて、 
そして手には、先端が赤くメラメラと燃える棒、松明を持っていた。 
まだ真昼間で、森の中でも心地よいほど明るいというのに。 



しばらくお互いに無言のまま、広場には静寂が続いた。 

「おにーしゃん!ここは、れいみゅたちのゆっくちぷれいすだよ!ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」 

その静寂を破り、最初ににんげんさんに声をかけたのは、ここにいた赤ゆっくり達の中でも特に好奇心の強いゆっくり。 
あの、れいむ一家の次女れいむだった。 



ジュゥゥ・・・ボゥワッ! 

そして、次女れいむがおにいさんに近づき、声をかけると同時に、 
その頭に松明の火が押し付けられた。 

「ぴぃうっ?・・・ぴ・・・」 

妹れいむは、か細い悲鳴をわずかにあげてころころと2、3回転がると、そのまま炭になって動かなくなった。 



「・・・・・・むきゅぅぅうう、みんなにげてぇぇえええ!!」 

突然の光景に、ここにいた全てのゆっくりが考える事を止めたかのように茫然となった中で、 
長ぱちゅりーの叫びが静寂を切り裂いた。 

「ゆ、ゆわぁぁああ!おちびちゃんたち、ちぇんのおくちにはいってねー!」 
「むほぉおお!むほ、むほぉっ!」 
「みんな、はやくまりさのおぼうしにはいるのぜ!にげるのぜぇええ!!」 

「めらめらしゃんは、ゆっくちできにゃいぃぃ!」 
「ゆぴぁああん!おにぇーしゃんのおくちに、ゆっくちはいりゅよ!ゆっくち!!」 
「ゆっくちー。おくちのなかなら、あんしんだにぇ!」 

長の叫びは、群れの全員を自失の状態から現実に返すことに成功した。 

保育ゆっくり達は、自分達のお口に赤ゆっくり達を入らせていく。 
子供達をお口の中に入れるこの行動は、ゆっくり達が自分の子供達を危険から守る時に行う、本能的行動だ。 
親のお口の中に赤ゆっくりを入れることで、 
外敵から隠す・親の体を外敵からの盾にする・逃走が必要な時はそのまま赤ゆっくりを連れていく、 
といった効果を無意識に狙って生まれた本能なのであろう。 

「むきゅっ、みんな!おちびちゃんをおくちにいれたら、はやくここからにげるのよ!!」 
「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」 

そしてお口に、近くにいた赤ゆっくり達を数匹づつ入れた保育ゆっくり達は、 
長ぱちゅりーの指示に従って広場から飛び出していったのであった。 
お口に赤ゆっくりを満載したせいで、這うように遅い歩みではあったが。 



長ぱちゅりーはその間にも、次の指示を補佐まりさに出す。 

「むきゅ、まりさ。まりさはみんなのおうちをまわるのよ! 
ここにきてないおちびちゃんたちを、はやくにがしてあげて!」 
「ゆっくりりかいし・・・ゆゆっ!?ぱちゅりーはどうするのぜ!?」 
「ぱちぇは・・・にんげんさんと『こうしょう』してみるわ!」 

長ぱちゅりーは、最も危険な任務を自分に課すつもりだった。 

「そ、そんなのあぶないのぜ!いっしょににげるのぜ!!」 
「ぱちぇのあんよじゃ、まりさのあしでまといよ! 
それに、おはなしするのは、ぱちぇはむれでいちばんじょうずだわ! 
まりさはまりさの、ぱちぇはぱちぇのできることをするのよ!むきゅんっ!!」 
「ゆ、ゆ、ゆっくりりかいしたのぜ・・・にげきったら、またすーりすーりしようなのぜー!」 

ぱちゅりーはその弁舌をもって人間と交渉を、まりさはその脚力とリーダーシップをもって群れの避難誘導を、 
お互いに能力を生かして最善の役割を果たそう、長ぱちゅりーはそう言って補佐まりさを説得した。 
だが、それは半分正しく、半分嘘だった。 
長ぱちゅりーは自分が生き残れない可能性が高いと理解しながら、 
みんなが逃げる時間を稼ぐためにここに残ったのであった。 
・・・そして、もちろん補佐まりさもそれを察していた。 



「むきゅ!にんげんさん、ぱちぇたちは、ここでゆっくりしてるだけよ! 
もしなにかめいわくをかけたなら、あやま『ジュゥゥウウウウウ』びゅ・・・」 

結局、長ぱちゅりーは時間を5秒も稼げなかった。 
長ぱちゅりーは顔面だけを松明で軽く炙られ、目と口だけを潰されたまま死ぬ事も出来ずに放置されて、 
群れの崩壊する悲鳴を最後の最後まで聞き続けることになったのである。 



お口に赤ゆっくりを入れて広場から逃げ出した保育ゆっくり達も、 
その這うような鈍足のせいで早々に追いつかれ、近場の木の洞に逃げ込むのがやっとだった。 

「むほぉおお!ぷっくー!!」 
「ありしゅおにぇーしゃん、がんばっちぇー!」 
「ゆっくちまもってくれちぇ、ありがちょー。」 

保育ありすは、もはや逃げ切れない事を悟り、近場の木の洞に赤ゆっくり達を放り込むと、 
その入り口を塞ぐようにぷくーっして赤ゆっくり達を守っていた。 
隙間なくぷくーっで塞がれたその入り口からは、人間さんの手どころかイモムシ一匹も入る事はできないだろう。 

そこに松明を持った人間さんが近づく。 

「むほぉ!ぷっくー!!」 

どむっ。 

ジュゥゥゥゥウウウ。 

「む・・ほごぉ・・・とか・・いば・・・・・・」 

人間さんと向かい合った次の瞬間には、保育ありすのまむまむを松明が貫いていた。 
せめてもの救いは、ありすの中枢餡がその一撃で砕かれ、ほとんど一瞬で絶命出来た事だろう。 

ジュゥゥウウウウ!ボゥワッ!ジュジュジュウウ! 

「ゆぴゃぁああん!あちゅい、あちゅいぃいいい!!」 
「どうしてめらめらしゃん、はいってくりゅのぉおお!?こっちこにゃいでぇぇえ!」 
「ありしゅおにぇーしゃん、どうしちぇ、たしゅけちぇくれにゃ・・・『ボゥッ』ぴぅっ!」 

松明の先端はありすの体をやすやすと突き破って、木の洞の奥まで届いていた。 
ありすには、逃げ場のない洞の中で焼き尽くされるおちびちゃん達の悲鳴が、聞こえていただろうか。 



保育みょんとちぇんも、人間さんに追いつめられていた。 
2匹は背後の木の根元に10匹ほどの赤ゆっくり達をかばいながら、周囲を人間さんに取り囲まれている。 
もはや逃げ道を作るには、人間さんと戦って包囲を破るしかなかった。 

「みょぉおん!みょんがこのけんで、みちをつくってやるみょん!みょっ!!」 

ぶんっ!ひょい。ぶんっ!ひょい。 

鋭く尖らせた木の枝を振りまわしながらみょんは包囲に突撃したが、 
その木の枝の一撃一撃は、人間さんにあっさりとかわされる。 

「がんばっちぇ~!みょんおねーしゃーん!」 
「ゆっくちまけにゃいでー!」 
「みょぉおおん!げんきひゃくばいだみょん!!みょっ!」 

声援に力づけられさらに攻撃を続けるみょん。 
だが、何回か突撃を続け、もう一撃、そう思った時、ふとみょんは後頭部の熱に気づいた。 

「みょ・・・」 
「「ゆぴゃぁぁああん!みょんおにぇーしゃぁああん!!」」 

メラメラメラ・・・ 

人間さんは、みょんの攻撃を軽くかわしながら、その松明をみょんの髪の毛にかすらせていた。 
そして、みょんがその熱に気づいた頃には、みょんの髪の毛はほとんど全体が炎に包まれていた。 

「みょぉぉ!?ぉおお・・・!!」 

ゆっくりは、特にその皮膚や髪の毛は燃えやすい。 
みょんが高熱の中で、自分がもうすぐ走る事も、 
声を出す事も出来なくなる事を悟るまで、それほど時間はかからなかった。 
だから、みょんはその最後に残された力全てを、おちびちゃん達への叫びに注いだ。 

「お、おぢびぢゃんだち・・・にげでぇぇえええ!」 



「みょ・・・?」 

だが、そんなみょんを処理済みと判断した人間さんは、 
その時すでに赤ゆっくり全員を火だるまにし終えていた。 

「ぴょ・・・ぴ・・・」 
「あちゅ・・・ぴぃ・・・」 
「やめちぇぇぇええ!めらめらしゃんこわい『ボウッ』ぴ・・!ぴゃ!?・・・」 

「みょ・・ん・・・」 



「おぢ・・び・・・・・・」 

ちぇんはみょんの死にざまを見て、すでに戦意も保育役としての誇りも失っていた。 
目の前でおちびちゃん達を焼き尽くされるのを茫然と眺めながら、よろりと仰向けになり、腹を人間さんに見せる。 
これは、ゆっくりの全面降伏を意味していた。 

「だ、だずげでよー・・・。ちぇんはむていこうだよー、わかるー・・・?」 

もちろんそんなことどうでもいい人間さんは、ちぇんの腹のど真ん中に松明を押し付けた。 
たっぷり一分ほどかけて、ちぇんは炭になった。 



一方その頃れいむ一家は、補佐まりさに先導されて群れの避難場所に向かっていた。 
その集団は、生まれたばかりでベッドからも這い出られないような幼い赤ゆっくりと、 
その母ゆっくり達でほとんどを占められていた。 

「みゃみゃー、どこいくにょ?ゆっくち!」 
「とってもゆっくりできる、あんぜんなところだよ。ゆっくりあんしんしてね。」 
「ゆぁーい!みゃみゃのおくちのなか、ゆっくちしちぇるにぇ!ゆゆぅ~ん。」 

母ゆっくり達は、赤ゆっくり達をお口の中に入れ、 
なるべく自分達の不安を伝えないように話しかけながら這い進んだ。 

そんな中、れいむ一家の母れいむが、決意を固めた表情で補佐まりさに話しかけた。 

「まりさ・・・れいむは、おちびちゃんをさがしてくるよ!」 

母れいむは、保育みょん達に預け、広場に遊びに行かせた次女れいむを諦めることができなかったのだった。 
たとえ自分の身を危険にさらし、残り2匹のおちびちゃんが母親を失うことになってしまうかもしれないとしても。 

「な、なにいってるのぜ!?れいむ!!」 
「みょんたちがいるからだいじょうぶだとおもうけど・・・やっぱりむかえにいかないと・・・」 

補佐まりさも、群れで最初に焼き殺されたのが、このれいむ一家の次女れいむだと言うことにまでは気づいていない。 
だから、母れいむを止めるのに躊躇してしまった。 

「まりさ、おちびちゃんたちをよろしくね!おちびちゃん!れいむはすぐもどってくるからね!いいこにしてるんだよ!」 
「おかーさん!はやくかえってきてね!ぜったいだよ!」 
「ゆっくち、いってらっしゃいなのじぇ!」 

「ま、まつのぜ!れいむー!!」 

そして、補佐まりさは母れいむを止め損ねてしまったのであった。 



ぐしゃ。 

母れいむは、変わり果てた次女れいむの姿を目にすることは無かった。 
木の影から不意に顔を出した人間さんに、すれ違いざまに松明を振り下ろされ、 
一撃で顔面を砕かれて息絶えたからである。 



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母れいむとの永遠の別れの後、補佐まりさに先導されたれいむと末っ子まりさは、 
群れの生き残り達と一緒に大きな洞窟へと避難していた。 
人間さんでもすっぽり入れるほど大きな広い洞窟。それが、群れであらかじめ決めていた緊急時の避難場所。 
他にも人間さんの目をかいくぐった生き残りがいれば、全員ここに集まってくるはずであった。 

洞窟の中には、れいむと末っ子まりさ、補佐まりさの他には、 
10匹程の母ゆっくりと、その幼いおちびちゃん達が一家族あたり4~5匹づつ。 
それが全てである。 



「ゆぅーん。このどうくつしゃん、ゆっくちしちぇないよぉ。」 
「ごめんね、ちょっとがまんしててね。」 
「みゃみゃー、おなかすいちゃよぉ。むーちゃむーちゃさせちぇにぇ。」 
「いまは、ごはんがないんだよ。ちょっとだけがまんしててね。」 

洞窟の中では生き残りのゆっくり達が、不安をまぎらわそうと、寄り集まってお話をしていた。 
れいむ姉妹も例外ではなく、補佐まりさにぺったりくっついて、お話をしている。 

「おきゃーしゃん、おそいのじぇ。」 
「ゆぅぅ、きっともうすぐもどってくるよ。まりさもがまんして、ゆっくりまとうね。」 
「そうなのぜ。きっとだいじょうぶなのぜ。」 



ばさっ。 

その時、洞窟内の地面全体を覆うように、網がかぶせられた。 



「ゆわぁぁああ!?なんなのこれぇぇええ!!」 
「ゆっくちうごけにゃいー!みゃみゃー!」 
「な、なんなのぜ!このあみさんは、なんなのぜぇぇ・・・え?」 

網の向こうには、人間さんが立っていた。 

最初から、全ては人間さんの計画通り。 
ゆっくりの行動、子連れならどのくらいの速さで逃げるか、 
そして、このゆっくりプレイス内で最後に逃げ込むとすれば、それはどこか・・・ 
・・・全てを計算した上で、逃げ込みやすく捕まえやすい、適度な広さの洞窟を用意していたのだった。 



その後、網に捕まった群れの生き残りのうち、赤ゆっくり達は卵パックのような容器に優しく分別され、 
母ゆっくり達はダンボールに乱暴に突っこまれて、最初に襲撃に遭った広場のど真ん中まで連れてこられた。 

「ゆぅ・・・ゆぅぅ~、にんげんさん!いもーとを、すえっこまりさをかえしてね!」 
「ゆんやぁ~ん。ゆっくちできにゃいのじぇ~。」 

れいむ姉妹もまた、離ればなれにされていた。 
れいむはダンボールの中に、末っ子まりさは卵パックの中へと。 

そして、広場のど真ん中にはたき火が作られ、その上には水を張った、炊き出し用の大鍋が湯気を上げている。 
れいむは実際に火を見た事などなかったのだが、メラメラと輝くそれと、白い湯気を上げる鍋が、 
とてつもなく不吉な物に見えていた。 



ちゃぷちゃぷちゃぷっ・・・ 

「ゆわーい!みずあびしゃんは、ゆっくちできりゅにぇ!」 
「ゆっくちー!」 

そんな不安をよそに、赤ゆっくり達の方からきゃっきゃと楽しそうな声が聞こえてきた。 
何事かと見てみると、人間のおねえさんが、ボウルに張った水で赤ゆっくりを丁寧に洗ってあげているのが見える。 

「ゆ、ゆぅう!!そうだよ!おちびちゃんたちは、ゆっくりできるんだよ!ゆっくりさせてあげてね!!」 
「おねーさん、ありがとー!」 
「ゆわぁ~。おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよぉ~。」 

補佐まりさとれいむを除く母ゆっくり達は、みんな自分達のおちびちゃんが嬉しそうに水浴びしているのを見て、 
早くも先ほどまでの恐怖を忘れて、ゆっくりし始めていた。 

だが、それも人間さんが、赤ゆっくり達全員をキレイに洗い終わるまでのことだった。 



「こーりょこーりょ、ゆっくちー。」 
「ぷりゅぷりゅぷりゅっ!しゅっきりー!」 

水浴びを終えた赤ゆっくり達は清潔な布巾の上に乗せられ、 
赤ゆっくり達はこーろこーろ、ぷーるぷーるして水分を切っていた。 

そうしてみんながすっきりーとした表情でゆっくりしていると、 
先ほどのおねえさんが、何やら変わった手袋を両手につけて、 
手近にいた赤れいむをつまみあげる。 

「おしょらとんでるみちゃーい!」 

そして、手袋をつけた両掌で包み込むと、 

ごしっ・・・ごしっ・・・ 

2回ほど揉んだ。 



「ゆっぴ?ぃぃいいいいあぁああああああ!?」 

おねえさんが手のひらを開けると、そこには髪の毛と薄皮がきれいに削り取られた、 
スベスベ真ん丸饅頭の『元』赤れいむがいた。 

「いぢゃぁぁああいぃぃ!!みえにゃい!いぢゃい!?みゃみゃぁぁあああ!!」 

その皮膚はムラなく薄皮がこそぎ取られ、まぶたと目玉の表面も削り取られている。 
髪の毛もお飾りも、薄皮と一緒に手袋の中に残っていた。 

「「「ど、ど、どうぢでぞんなごどずるのぉおおおお!!」」」 

そのおねえさんが付けていた手袋は、ゆっくり用皮むき手袋。 
表面がやすり状になっており、野生ゆっくりの汚れた皮膚や髪の毛などを削り取るために作られたものだった。 



森に響き渡る悲鳴は、おねえさんが手をごしごしと揉むたびに大きくなっていった。 

「ゆびゃぁあぁああ!!やべぢぇええええ!!」 
「おぎゃあぢゃあああん!!」 
「みえにゃい!みえにゃいよぉおお!!いぢゃぁぁあい!!」 

数十匹の赤ゆっくり達が、あっという間にスベスベの薄皮饅頭になっていく。 
それはゆっくり達にとって、まさしく地獄の光景だったであろう。 

悲鳴を上げつづける母ゆっくり達に混じり、れいむも必死に叫び続けた。 
そんなれいむの視界に、れいむの良く知る、世界で最も愛する存在の姿が映った。 

「おにぇーぢゃん!たしゅけちぇぇぇええ!!」 
「まりさ!ゆ、ゆぁあああん!!おねーさん、やべで、やべであげでぇぇええ!!」 

末っ子まりさの順番は、赤ゆっくり達の中で、一番最後だった。 

「いやなのじぇ、だじゅげ」 

ごし・・・ごしっ・・・ 

そして、集められた赤ゆっくり達は、一匹残らず薄皮饅頭になった。 

「ゆぴゃぁあああ!!ゆっぐぢでぎにゃい、ゆっぐぢでぎにゃいぃぃいい!! 
おぎゃーしゃん、おにぇーじゃん!ゆびゃぁぁああああ!!」 
「どうぢで・・・どうぢでぇ、ゆっぐぢぢでだのにぃ・・・」 

れいむは、可愛い末っ子まりさを、守りきることが出来なかったのだった。 



『元』赤ゆっくり達の悲鳴が周囲に響き続ける中、 
母ゆっくり達は、自分達のおちびちゃんの、あまりにも痛ましい姿に、 
泣き叫ぶ気力も残されておらず、ただすすり泣くように懇願し続けた。 

「もうやべで・・・ゆっぐぢぢで・・・」 
「おちびちゃ・・・ぺーろぺーろさせてぇ・・・」 

その様子を気にしているのか、母ゆっくり達にはおねえさんの表情からはなにも読みとれなかった。 

そして、おねえさんは薄皮饅頭を数十個乗せたおぼんを持ち上げると、 
たき火の上でクツクツと音を立てる大鍋の前に運び、 

じゃぽじゃぽじゃぽっ 

おぼんの中身を大鍋の中に落としていった。 



「「「ゆっぴゃぁぁあああああああぁぁぁぁ・・・・・こぽ・・・こぽ・・・」」」 
「「「おぢ・・・おぢびぢゃ・・・」」」 

赤ゆっくり達は、一匹残らず大鍋の湯の中に溶けて消えていった。 



ダンボールに入れられたゆっくり達は、それからしばらくの間放置された。 

母ゆっくり達の詰め込まれたそのダンボールには、 
赤ゆっくり達からこそぎ取られたお飾りや、髪の毛も放り込まれていた。 
母ゆっくり達は、自分のおちびちゃん達の、お飾りと髪の毛をぺーろぺーろして泣き続ける。 
だが、やがてたき火の火が弱くなったところで、そのダンボールから完全に気力を失った補佐まりさが取り出された。 

「ゆ・・・やべで、やべでぐだざい・・・もういいでじょ・・・あとのみんな・・・ 
だずげでください・・・ぱちゅりーにやぐぞぐぢだんでず・・・だずげるっで、みんなだずげ」 

ひょいっ・・・ボゥッ 

「ゆぁぉ・・・」 

補佐まりさは、一瞬で火の中に消えていった。 

「やべでぇぇえええ!!」 
「もうやぢゃ、もうやべぢぇ、ゆびゃぁぁあああ!」 

それから間もなく、可愛いおちびちゃん達の物だったお飾りごと、母ゆっくり達はたき火に投げ込まれていった。 



「どうぢで・・・どうぢでぇ・・・ゆっぐぢ、ゆっぐぢぃ」 

最後に残されたのは、子ゆっくりだったためダンボールの中で一番小さかった、れいむだった。 

ひょい。 

恐怖と絶望で体が動かなくなっていたれいむは、逃げる事もできず、人間さんにあっさりつまみあげられた。 

「おねえざん・・・どうぢで・・・?」 

れいむは、すでに生を諦めていた。 
ただ、それでも、どうしても質問せずにはいられない疑問があった。 
れいむは、恐怖で震える口から、必死で声を絞り出したのだった。 



「どうぢでごんなごどずるの・・・れいむたち・・ゆっくりしてただけだよ・・・?」 



ひょいっ・・・ボッ 



そしてれいむは、疑問に対する答えを最後まで得ることなく、たき火の中に放り込まれて炭になった。 

それから数分後、 

ゆっくりの楽しげな声が消えた、かつてのゆっくりプレイスには、 
美味しそうなお汁粉の鍋と、それを囲い談笑する人間さん達だけが残された・・・

【おわり】