れいむは役立たずである。 
狩りはろくに出来ない。頭の回転は悪い。記憶力が低い。 
彼女達が好きな歌は、同じゆっくりですら顔をしかめるレベル。 
子供はれいむ種のみ贔屓し、他種に暴力を与える。 
しかし、絶滅する事は無い。

何故なら、

彼女達は、死に物狂いで他種のゆっくりを色仕掛けするからである。 
ある程度成長し、性欲が溜まって来たゆっくりを見つけたら、下腹部をちらつかせ、襲わせるのである。 
ゆっくりは精子が入ったら、すぐに妊娠をする。 
妊娠をして腹が大きくなったら、責任を取らせる形で、無理やり相手と結婚する。 
相手はれいむを襲ったという事実がある以上、追い払う事も出来ない。 
ゆっくりは、人間以上に世間体を気にするのだ。 
「ゆぐっ……ゆぐっ……もうごれじゃあゆっぐりでぎないよ……」 
都市郊外の小さな森。一匹のれいむが泣きながら跳ねていた。 
「ゆっぐ……でいぶのまんまんがぁ……」 
彼女の下腹部から少量の餡子が流れていた。 
彼女は先程まで、木の陰に隠れて自慰をしていた。 
膣を裏返し陰茎にして、木の皮に一心不乱にこすりつけていた。 
「んごっ!ゆごっ!ゆっゆっゆっゆっゆっゆ、ゆっぐぅぅぅぅぅぅ!ゆっがぁぁぁぁぁ!ずっぎりぃぃぃぃぃ!」 
れいむは体をのけ反らし、白目をむき、噴水のように精子を飛び散らせて絶頂した。 
絶頂の余韻に浸っている間に、精子餡の匂いに引き寄せられたクワガタムシに、陰茎をちぎられた。 
そして、今にいたる。 
「これじゃあ、もうたまのこしができないよ……」 
れいむは絶望に打ちひしがれながら、ふらふらとした足取りで跳ねていた。 
やがて、彼女は自然と森の集会場に着いていた。 
僅かに開かれた空間。そこには、いつもこの森に住むゆっくり達が集っていた。 
「ゆ、やくたたずがきたよ」 
れいむの姿を発見したまりさが声を上げた。 
「むきゅ、ばかがきたのね」 
「いなかもののにおいがうつっちゃうわ」 
集会場には10匹程のゆっくりが集まっていたが、れいむが居るのを知ると、彼女達は全て背を向けて出て行ってしまった。 
れいむはもう慣れていた。 
そして、いつか他のゆっくりを誘惑し、妊娠してやるという野望に燃えていた。 
しかし、それはもうかなう事はない。 
れいむは自分の巣へ帰った。 
「ゆべっ!」 
巣の入り口で滑って転んだ。 
「ゆぐっ……くさいよ……」 
そこには、ゆっくりの糞にまみれていた。 
餡子、カスタード、紫餡、チョコレート……ありとあらゆる種別の糞が、入り口付近の地面にべっとりと塗りたくられていた。 
れいむはまた滑らないように、這いずりながら巣の中へ入った。 
少ない備蓄食料は全て食べられ、草のベッドは尿まみれになっていた。 
れいむは仕方なく、巣の隅っこに身を寄せて眠った。 

翌日、昼。 
れいむは狩りに出かけた。 
「ばったさん、れいむに食べられてね」 
しかし、逃げられる。れいむは非常に気配の殺し方が下手だ。近づく前に、虫達は逃げてしまう。 
だから、栄養価の低い草や花しか食べられない。 
「むーしゃ、むーしゃ」 
雑草を食べながら、元気の無い声をあげる。 
「ゆ!やくたたずがいるのぜ!じゃまなのぜ!」 
れいむの後ろから、まりさの声が聞こえた。 
「ちょうちょさんをとるから、さっさとどくのぜ!」 
れいむが見上げると、確かに、れいむの真上に蝶がひらひらと飛んでいた。 
「さっさとどくのぜ、このやくたたず」 
そう言って、まりさはれいむの真横まで跳ね、その勢いを利用して、真上に跳ね上がった。 
見事にまりさは、蝶を口でキャッチした。 
その後、まりさはれいむに軽蔑の眼差しを向けながら、元来た方向へ跳ねていった。 
やろうと思えば、まりさはれいむを踏み台にして、蝶を捕まえる事が出来た。 
むしろ、ゆっくりの狩りは、他のゆっくりを利用し合って行うのが普通である。 
しかし、まりさはそれをしなかった。 
これは暗に「れいむは踏み台にすら使われない役立たず」という事を示していた。 

翌日、昼。 
昨日と同じように、れいむは狩りに出かけていた。 
「ままぁ……どこぉ……」 
森の一角に、迷子の子ありすが居た。 
「ありす、どうしたの?まいご?おかーさんとはぐれちゃったの?」 
れいむは優しく彼女に声をかけた。 
「ゆ……ぐすっ……ままぁ……とかいはなありすをおいていくなんてひどいよ」 
子ありすは涙声で言った。 
「わかったよ、れいむがありすのおかーさんをさがしてあげるよ」 
れいむは子ありすを頭の上に乗せ、ひたすら彼女の母親を探し続けた。 
しかし、日が沈んでも母親は見つからなかった。 
「ゆぅ……ありす、ごめんね……」 
れいむはしょげ返った。 
子ありすは見る見るうちに怒りの表情に変わった。 
「なんなのよこのやくたたず!いなかもの!まますらさがせないなんてこのくず!」 
子ありすはれいむの頭から飛び降り、森の奥へ跳ねようとしたが、上空から降りてきたれみりゃに潰され、カスタードを啜られた。 

数日後、昼、街中。 
駅前の大通りに、一匹のゆっくりれいむが居た。 
「おねがいじまずぅぅぅぅぅ!れいむをいじめてくださいぃぃぃぃぃ!」 
「でいぶはうっとうしいでじょ?だがらぶってね!けってね!ふみつぶしてね!」 
「あんよをもやしてこがしてもいいよ!だがらおもぢがえりじでよぉぉぉぉぉ!」 
行きかう人々は、このれいむを徹底的に避けた。 
れいむは砂糖水まみれで、地面の埃やらゴミやらを体中にくっつけて、非常に汚らしい。 
れいむが足に擦り寄ってくるので、人々は軽く払いのける。 
「おねがいでずがら、でいぶをにんげんざんのおうぢにもぢがえっでぐだざいぃぃぃぃぃ!」 
「でいぶはにんげんざんのおやぐにだぢだいんでずぅぅぅぅぅ!」 
虐待お兄さんも、自分から虐められるのを求めるゆっくりなんか、食指がぴくりとも動かない。 
数時間後、そのれいむは保健所の職員に捕まり、ガス室に入れられ、毒ガスで殺された。 
その死体は潰され処理場で燃やされたので、一切誰の役にも立たなかった。 
ただただ邪魔なだけだった。 

 【おわり】