ここに、一匹のまりさがいた。

まりさは山のゆっくりであった。 
れいむを妻に迎え、子れいむ、子まりさという子供を授かった。 
何処にでもいる普通のゆっくりだ。


まりさは山のゆっくりであるから、自分で自分のご飯を調達する必要があった。 
ゆっくりの間で言われている「狩り」。木の実などを目的にしていることからどちらかと言えば採取なのだが今は関係ない。 
とにかくまりさは狩りへと出かけるのが日課だった。

家族持ちのまりさにとって、山での狩りは大変な物だった。 
なにしろ家族を扶養しなくてはならない。それはまりさにとってとても大きい負担だった。 
今日もまりさは家族のため、ご飯を探して山を駆けずり回る。

「ゆぅっ!こんなもんだね!」

それなりの量のご飯を帽子に詰め込み、巣へと急ぐまりさ。 
今日の狩りは終了のようだ。

「ゆっくりかえったよ!ただいま、れ・・・・・・」 
「おそいよ、まりさ!はやくごはんをだしてね!」 
「おとーしゃんはしゃっしゃとれいみゅにごはんちょうらいね!」 
「なにしちぇるの!?まりしゃにごはんをよきょしちぇね!」

罵声にも似た催促の声で迎えられるまりさ。 
もうこんなことは慣れっこだ。いちいち怒る気など起きない。

「ゆっ、きょうのごはんはこれだよ。ゆっくりたべ・・・・・・」 
「はっふ!うめっ!これまじうっめっ!むーしゃむーしゃ!」 
「むちゃっ、むちゃべっ!うっみぇ!きょれみゃじうっみぇ!」 
「まじぴゃねぇ!ぎゃーちゅぎゃーちゅ!」

一日走り回って集めたご飯も、家族があっという間に平らげる。 
その姿を尻目に、まりさは確保しておいたご飯を咀嚼する。むーしゃむーしゃ。少ない。 
明日もまた、狩りに行かねばならない。

家族とゆっくりするために、食後のゆっくりは欠かせない。 
食休みもかねて、ゆっくりと休憩する。

そしてそのまま眠りに入る。 
家族みんなで擦り寄って、明日の朝までぐっすりゆっくりと眠るのだ。 
まりさにとって唯一ともいえるゆっくりできる時間である。

次の日の朝になれば、家族みんなで「ゆっくりしていってね!」の挨拶。 
そしてまたまりさは巣を出る。

ゆっくりするために、まりさはまた狩りに出かける。





ある日、山の麓でまりさは素敵なゆっくりプレイスを発見した。 
そこではイチゴさんがたわわに実り、雨さんが降ってきてもゆっくりできそうな立派なおうちもあった。

ここなら一日中森の中を駆けずり回ってご飯を探す必要もない。 
ここなら大切な家族と一日中ゆっくりできる。

そうだ。ここを、まりさのゆっくりプレイスにしよう! 
きょうからここがまりさのゆっくりプレイスだよ!

ゆっくりしていってね!

そうと決まれば早速、まりさは家族を連れてゆっくりプレイスへと向かっていった。 
家族みんなでゆっくりしよう。そのためのお引越しだ。





補足するが、まりさが見つけたゆっくりプレイスは人間の住居である。 
山暮らしであるまりさは人間の事をろくに知らなかった。





ここに、捨てられたれいむ達がいた。 
彼女達はいずれも薄汚れ、野良であることは一目瞭然だった。

ただし、普通の野良とは違うところがひとつあった。 
それは口にくわえられた鋭い木の枝、釘、そして剃刀である。

野良れいむ達は「ゆっくり強盗団」だった。 
捨てられたゆっくりが武装して、人間や飼いゆっくりを襲撃するのだ。

最近、ゆっくりれいむ種が捨てられるという事件が急増していた。 
その理由は、テレビで連日流れるワイドショーのせいだった。

「でいぶ」というれいむの亜種がいる。 
なんでもこの世の全ては自分のためにあるという妄想に取り付かれ、誰に対しても尊大極まる態度で応じるれいむのことを指すらしい。 
口コミに始まったこの噂は面白半分でマスコミが大々的に報じ、あっという間に人々の間に広まった。

ふーん、でいぶか。嫌なゆっくりだなぁ。 
あれ、でももしかしたらうちのれいむもでいぶかもしれないぞ。 
言われてみればそうだ。自己中心的な志向、尊大な態度、どれをとってもでいぶに当てはまる。こいつはでいぶだったのか。 
でいぶなんて飼いたくない。どうすれば・・・・・・そうだ、捨ててしまおう。

ブームに踊らされやすい彼らは、このような思考のもとに次々とれいむを捨てていった。 
もちろん捨てられたのはでいぶ要素があるれいむだけ。お利巧なれいむはそのまま飼われ続けた。 
だが、捨てられた数が数だった。なにせれいむは、基本種中の基本種なのだ。数だけは多い。 
あっというまに捨てれいむの数は増えていく。

そうやって捨てられたでいぶ候補達は元々よろしくなかった性根が更に歪み、本当にゲスでいぶとなってしまった。 
繰り返すが、捨てられたれいむの数は多い。それの殆どがでいぶと化していくのだ。 
自然、野良の最大多数派をでいぶが占めた。

当然ながらでいぶ達は自分達を捨てた人間を恨んだ。 
その一部がこうして徒党を組み、「ゆっくり強盗団」誕生となったわけだ。

野良れいむ達(この際でいぶとれいむの違いはつけないこととする)もそんな強盗団のひとつだった。 
口にくわえた凶器は、先住野良であるみょんから数に物を言わせて奪い取った。





今日もまた野良れいむ達は飼いゆっくりを見つけた。 
飼いれいむ。何故自分達と同じ姿であるこのれいむだけが幸せそうな境遇を手にしているのだ。 
許せない。このれいむをいじめて、ついでにこのれいむの飼い主もいじめてやる。

彼女達は調子に乗っていた。 
この自信は先日人間に傷をつけた事実から来ている。 
もっとも、傷を負わせたのは年端も行かない女の子で、それによって人間達は怒り狂っているということを野良れいむ達は知らない。 
これは余談だが、後日大規模な野良ゆっくり狩りが行われた。

このれいむにはきっときれいなおうちがある。 
そこでたっぷりとれいむをいじめ、そしておうちをうばってゆっくりプレイスにしよう。

そんな考えとともに、野良れいむ達は飼いれいむを尾けていく。 
遠くにはおそらく飼いれいむのおうちであろう人間の住居が見えた。





ここに、一匹のまりさがいた。 
断っておくが最初のまりさとは別物である。

「ゆゆ~!れいむのあかちゃん、ゆっくりそだってね!」

このまりさはれいむを孕ましていた。 
それだけならよくある話だが、この場合は少々事情が異なっている。

れいむは飼いゆっくりであった。対して、まりさは飼いゆっくりではない。 
つまり、野良が飼いゆっくりを孕ましたのだ。

飼いゆっくりにとって野良との交尾は忌避されるべきものとして教えられる。 
なぜなら、それは飼い主にとって喜ばしい物ではないからだ。 
誰だってペットが何処の馬の骨とも知らぬ野良の子を孕んでいれば、嫌な顔をするだろう。

れいむもそれは重々承知していたはずだった。 
飼い主への背信行為は万死に値する。

しかし野良まりさはかつて飼いゆっくりを孕ましてそのまま人間のおうちに入り込んだ野良ゆっくりを知っている。 
あわよくば自分もそうなりたいと思って、このれいむに手を出したのだ。

れいむは能天気にお腹の赤ちゃんに向かって話しかけている。 
飼いゆっくりのルールなど頭から消えうせ、幸せな日々が待っていると信じているのだろう。

それでいい。 
まりさは人知れず笑う。 
れいむが幸せになってくれれば、自分もそのお零れを貰って幸せになれるのだ。

(ゆふふ、まりさもにんげんをどれいにするのぜ!)





野良まりさは期待に満ち溢れていた。 
早速れいむを急かし、人間のおうちへ案内させる。 
そこが未来のゆっくりプレイス。まりさは笑いが止まらなかった。


























「ゆ゛っ・・・・・・ゆ゛ぁ゛っ・・・・・・」 
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 
「いだいいいいいぃぃぃぃ・・・・・・ぬいでえええぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」 
「じぬぅ・・・・・・じんじゃう・・・・・・」 
「どぼじでぇ・・・・・・どぼじでごんなごどにぃ・・・・・・」 
「ゆっ・・・・・・ぅゆっ・・・・・・ゆげえええええええええええ」

今、人間の家、その中庭では凄惨な処刑が執行されていた。 
ここに集まったゆっくり達。その身体には何本も杭が突き刺され、そのまま空中高く吊り上げられている。 
まるで百舌の早贄。あるいはルーマニアの串刺し公を連想させる。

こんなことをしたのは誰かと聞かれれば、それはこの家の主がやったことだった。 
彼はここ数時間家を離れていた。理由は散歩、あるいは買い物、なんでもいい。 
そして戻ってくれば玄関には野良ゆっくり共がたむろしていたというわけだ。

そう、この野良ゆっくり達とは、先述のまりさ家族、ゆっくり強盗団、野良まりさである。 
奇しくも彼らが目指していたのは同じ場所。 
何の運命のいたずらか、彼らを同時刻に到着させたのだ。

それぞれゆっくり達は思い思いの行動を過ごしていた。 
まりさ家族はイチゴのプランターを食い荒らし。 
ゆっくり強盗団は家の中に押し入ろうと釘や剃刀などで手当たり次第に傷を付け。 
野良まりさは何をするでもなく眠っていた。 
最後のはともかく、これが家の主の逆鱗に触れるには十分過ぎただろう。

結果、野良ゆっくり達はただの一匹も例外は無く死ぬ定めにある。 
子ゆっくりであろうとそれは変わらない。 
むしろ体力がない分早々に死んだ。

そして地面に聳え立つ杭の一本に小さな、本当に小さな饅頭が突き刺さっている。 
子ゆっくり、いや赤ゆっくりよりも更に小さい。胎児ゆっくりであろうか。 
最も、それはどうでもいいことだ。何故ならその小さな饅頭の息は既に無いからである。

そんな小さな残骸を杭の根元で見上げているのは飼いれいむ。 
まむまむからは僅かな餡子を流し、その顔は絶望に染まりきっている。

「あが、ぢゃん・・・・・・れいむの、あがぢゃん・・・・・・」

家の主は同時に飼いれいむの飼い主でもあった。 
そしてそのれいむが孕んでいた。やったのはどう見ても野良のうちの誰か。 
彼は野良の子を孕ましておくほど人が良くない。結果は見ての通りだった。

杭の先についた元赤ちゃんを見上げる飼いれいむの頭にぽん、と飼い主の手が置かれた。 
虚ろな瞳から涙を流すれいむを覗き込むように、彼は囁く。



「おい、これに懲りたらもう野良の子なんて孕むなよ?何度でも同じことしてやるからな」


【おわり】


元ネタ:ありす13あき
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