地獄。 
罪を犯した死者のたどり着く場所。 
その一角から、いくつもの叫び声が響いていた。 


「もうやべでぇぇぇぇ!」 
「どぼぢでごんなごどずるのぉぉぉぉぉっ!?」 
「ゆわああああああっ! ゆっぐじでぎないぃぃぃぃ!」 

それは、どこまでもやかましいゆっくり達の苦しみの叫び声。 
そして、それに紛れるように聞こえてくるのは、 

「はいはい、もうやめてっつってもやめないよ」 
「どうしてもこうしても、俺ら虐待おにいさんだから」 
「俺の方がゆっくりできないんだよ、全くもう……あーあ、くそっ」 

どこかやる気のない人間達の声だった。 



ゆ虐地獄でゆっくり 



ゆ虐地獄。 
そこは一種類のナマモノと一種類の生き物が堕とされる地獄だ。 

一種類のナマモノ。 
それは言うまでもなく、生前罪をおかしたゆっくりだ。 
とは言っても身勝手かつ自分本位、身の程知らずの不思議饅頭のこと。天国に行ける善良 
なゆっくりなどごくごく一部に過ぎず、基本的にゆっくりが死ねばこの地獄に堕ちると思 
って間違いない。 
ゆっくりはこの地獄でありとあらゆる虐待を受けることになる。 

「ゆあああああ! まりざのあんよがぁぁぁ!」 
「まっくらだよぉ! みえないよぉ! れいむのおめめかえしてぇぇぇ!」 
「ぺにぺにぃ! ありすのぺにぺにがぁ! こんなのとかいはじゃないわぁぁぁ!」 

容易く命を落とすゆっくりではあるが、ここは地獄。既に死んでいるのだから、これ以上 
死にようがない。ぐちゃぐちゃに潰されようが灰になるまで焼かれようと、短時間で元通 
りになってしまう。だから苦しみに終わりはない。 
ゆっくりは自らの死を「永遠にゆっくり」するなどと言うが、実際には死後のゆっくりな 
ど妄想に過ぎないのである。 


一種類の生き物。 
それは「虐待おにいさん」と呼ばれる人間である。 
虐待の罪でこの地獄に堕ちる……というわけではない。ゆっくり虐待の罪の重さはせいぜ 
い食べ物を粗末にした程度のもの。他に地獄に堕ちるような罪を犯した人間で、虐待が趣 
味の者がここに堕とされるのだ。 
ゆ虐地獄に堕ちた虐待おにいさんは、ここで地獄の鬼に代わりゆっくりに罰を与える。 
すなわち、虐待をするのだ。 
虐待おにいさんのほとんどが、自分は間違って天国に来てしまたったのではないかと疑う。 
だが、そんなのは最初のうちだけだ。 

「足焼きもマンネリだなあ……今日は丸焼きは止めて、ミディアムレアにするか……」 
「アマギる、アマギらー、アマギれすと……目玉抉りのバリエーションも尽きたなあ……」 
「ぺにぺにの千切りもこれで千回目……次は万切り一万回にでも挑戦してみるかな……だ 
るぅ……」 

ゆ虐地獄の刑期は、ゆっくりが三までしか数えられないことにちなみ、三百三十三年。い 
かにゆ虐が趣味であろうとも長すぎる期間だ。楽しんでいるうちは気がつかないものだが、 
どんなに好きな趣味でも時間によって色褪せてしまうものだ。情熱は有限なのである。虐 
待ネタだって無限にあるわけではない。 
ここに堕とされた虐待おにいさんは、まず大好きだったゆ虐が大嫌いになってしまうと言 
う苦痛を味わう。 
しかし、この地獄の苦しみはそこからがスタートと言える。 
虐待おにいさんは、ゆ虐をやめることができないのだ。 
さぼっていると、地獄の鬼がやってきて虐待おにいさんに罰を与える。それも、虐待おに 
いさんのやってきた虐待の中でもっともキッツイものを選んで、だ。これはさすがにたま 
らない。 
だから延々と作業的に、かつて好きだった、しかし今は大嫌いなゆ虐を続ける。 
まさに地獄なのである。 


ゆ虐地獄の出来たのは、地獄に堕ちてくるゆっくりの数があまりにも多かったためだ。 
ゆっくりは脆弱で容易く死に、そのうえ中途半端に知恵があるため地獄に堕ちるだけの罪 
を簡単に犯す。オマケにすぐ増えて、それと同じぐらいすぐ死ぬ。ゆえに、地獄でも処理 
が追いつかなくなってきた。 
罪人に罪人の刑を与えさせ、しかも両者を苦しめるというこのゆ虐地獄は実に画期的だっ 
た。 
閻魔大王も鬼もこの地獄ができたとき、これで少しは楽になると胸をなで下ろしたという。 

だが、彼らは知らない。 
いずれこの地獄には終わりが来るということを。 

三百三十三年もの永い時間すら足らぬと万の虐待技で乗り越え、地獄の鬼達すらもゆ虐の 
虜としてしまう究極の虐待おにいさん。 
今はまだ存在しないその虐待おにいさんが堕ちてきたとき、このゆ虐地獄は終わる。 
そして、究極の虐待おにいさんは地獄の鬼を引き連れ、現世を地獄へと変えるのだ――ゆ 
っくり限定の地獄へ。 

しかし、それはまだ先のこと。また別の物語である。 
ゆ虐地獄は今はまだ平穏で、実にゆっくりとしていた。 

「ぞんなごどないよぉぉぉ!」 
「ぜんぜんゆっくりざぜでぇぇぇぇぇ!」 
 
【おわり】