今、小さな赤ちゃんのゆっくりれいむが人間の前に居た。

れいむが何故こんな所に一匹で居るのか。その理由は誰も知らない。 
こんなに小さいれいむには必ずと言っていいほど保護者の助けが必要になるのだが、その姿も見えなかった。 
そもそもその小さな身体でどうやってここまで来たのかすら謎だった。


「きょきょはれいみゅのおうちだよ!ゆっきゅりしちぇないくしょじじいはどっきゃいっちぇね!」

そんな事はどうでもいいとばかりに、れいむはお決まりのおうち宣言をする。 
「くそじじい」と罵倒のオマケつき。一体何処でこんな言葉を覚えてくるのだろうか。

ちなみに、れいむの前に居る人間は虐待お兄さんなのだが、そんなことれいむは知る由もなかった。 
小さく「うぜぇ・・・」と呟くお兄さん。既に虐待欲は音速を超えてマッハだ。れいむを踏み殺すのに一秒も掛からないだろう。

れいむにしてみれば、今のところは譲歩してあげている真っ最中なのだ。 
ここはれいむのおうちで、そこに不法侵入した不届きなお兄さんにはまだ何の危害も加えていない。 
この広い世界を探してもここまで優しいゆっくりはれいむただ一人だけだろう、とすら思っている。

だが、このお兄さんはれいむの優しい(と言っていいのかどうか疑問だが)勧告にも一切耳を傾けることはなかった。 
それどころか一歩ずつ歩を進め、れいむに近寄ってくる。 
何をするのかは知らないが、なんとなくゆっくりできない気配を感じられた。

これはいけない。 
いくら優しいれいむでも、このまま危害を加えられるのをただ黙って見ているわけにはいかない。 
せっきょくてきじえーけんのこーしだよ。れいむは思った。

通常、人間の前に赤ゆっくりが一匹で、こんな舐めた態度を取れば大抵の場合はゆっくりできない末路を辿る。 
即ち、追い払われるか、ありったけの暴行を加えられるか、殺されるか。 
目の前には虐待お兄さんが居ると言う現状を鑑みるに、このれいむが辿る末路は一番最後だろうか?

目の前の巨大な敵をきっと睨みつけるれいむ。 
しょうがない。これだけは使いたくなかったが、襲い掛かってくるのならば止むを得ない。

空気を取り込むために口を大きく開く。 
あれなるはゆっくりの必勝型『ぷくー』の構え。 
人間相手にはまるで無意味のこの奥義で迎え撃たんと・・・・・・れいむは空気を吸った。

瞬間、地球が震えた。

天は裂かれ、地は割れる。 
万物の流動は一点に集中し、宇宙そのものがそこに注目していると言って良い。 
その中心は、れいむ。

黄金の氣を纏い、神々しい輝きを放っているれいむ。 
まるで古代の神話のように、いや、それ以上に雄雄しく、壮大な威容だ。 
PUKUUUUUUUUUUUU!!とアメコミばりの擬音を響かせている。

既にれいむを中心とした半径三十メートルはれいむの氣によって吹っ飛ばされている。 
遠く離れた場所に、頭からもんどりうって転がっているお兄さんの姿が見えた。

れいむは鎮座する。 
最早こうなっては全ての戦いが空しい。何故れいむに立ちふさがる者が居るのか。 
れいむは胸を痛める。

ゆっくりと起き上がるお兄さん。 
その目には紛れも無い恐怖や動揺・・・・・・そして畏敬の念が含まれている。

「一体何なんだ・・・・・・」

震える膝を押さえ、そうお兄さんは呟く。 
理解できないのだろう。一体、れいむがどれほどのモノになってしまったのかを。

「一体何なんだよ、お前はッ!!」

畏れの心をそのままに、お兄さんは叫ぶ。 
有り得ざる現実。その重みに心が耐え切れないのであろうか。

「とっくにごぞんじなんでしょ・・・・・・」

だがそれはいけない。 
不理解は不幸を生む。それがどんな形であっても、お兄さんに教えなくてはいけない。 
れいむはそんな気持ちを込めて答えた。

「れいむはおうちからおにいさんをたおすためにやってきたゆっくり・・・・・・。 
 ゆっくりしたこころをもちながらはげしいいかりによってめざめたでんせつのせんし・・・・・・。 
 すーぱーゆっくりれいむだよ!!」

迸る怒りのままに、れいむは叫ぶ。 
再び爆発する氣の前に、お兄さんが病葉のようにすっ飛んでいく姿が見えた。






 
と、ここまでれいむの妄想。

「ぶきゅぅー!くしょじじいはきょわかっちゃらあみゃあみゃもっちぇきちぇね!」

当然のことながら、れいむにそんな力など無かった。 
天が裂け、地が割れる?そんな事あるわけない。 
黄金の氣?嘘に決まっている。 
千年に一度の超ゆっくり?寝言は寝て言え。

結局は、このれいむも十把一絡げの野良ゆっくりと大差ないのだ。 
想像力の欠如、その代わりとも言うべき妄想力の異常発達。 
脆弱極まりないゆっくりを更に死出の旅路へと爆走させるこの救いがたい脳内お花畑。

今この瞬間もれいむとほぼ同じ事を言って殺されるゆっくりは存在するだろう。 
光の巨人だの太陽の王子だの直死の魔眼だの、何処で仕入れてきたのかわからない肩書きを名乗るゆっくりは少なくない。 
最も、その大半は肩書きの名を活かせずに死んでいくのだが。

「ゆっ!どうしたの!じじいははやきゅあみゃあみゃもっちぇきちぇぶぇ!!」

今日もそんな愚かな饅頭が一匹、死んだ。 
途方も無い現実。お兄さんの足は一秒も掛からずにれいむを踏み殺した。 
妄想の中に生きる餡子脳に、その危険を回避する手段は無かった。

【おわり】


anko0075





========あとがき============
伝説の超餡子戦士(なんてありませんよ・・・ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから)