道を歩くとき、人はなぜうつむくのだろうか? 

初夏のある休日、近くの公園まで散歩に出かけようとした俺は 
ふと、ほんと、何の気なしに庭木を見上げたんだ。 

毛虫がいっぱいだった。 



10匹とかそんなもんじゃなくて1000匹くらい。 
1本の木にびっしりと、うぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞと蠢いていた。 
庭木の新芽はおろか、葉っぱがほとんど囓られていた。 
もう殺虫剤なんかで退治できるレベルじゃねー。 
仮に退治したところでこの山ほどの毛虫の死体をどう処分するんだ?俺は嫌だ。 



【俺がゆっくりできない】2 
農家の人が使ってる噴霧器を買ってくるか?俺が使えるのか?ノーだ。 
じゃあ、業者に頼むか?金額的にノーだ。今すぐ来てくれるかどうかも解らない。 
庭先でうろうろと悩んでいるうちに、当初、近所の公園に行こうとしたのを思い出した。 
「ハッ!これだ!」 
俺は家にあったクッキーを片手に公園まで急いだ。 
近所の公園は寂れていて人も少ない、しかし奴らはいるはずだ・・・ 
「おーい、ゆっくりのみなさーん、あまあまですよー」 

「ゆ?」「ゆゆ?」「あまあましゃん?」「ゆっくちー!」 

そう、こいつらだ。公園に住み着いたゆっくり達。 
今回は彼女らに協力してもらおう。 
俺は似合わない笑顔を作りながらポケットからクッキーを取り出した。 



【俺がゆっくりできない】3 
「はーい、ゆっくりのみなさーん。今日はみなさんにおいしいものを食べて頂きたいと思いまーす」 
「ゆ!あまあまさんよこすのぜ!」「はやくちょうだいね!」「あみゃあみゃ~」 
俺はあまあまという言葉に釣られて集まったゆっくりを見渡しながら数を確認した。 
バレーボール~バスケットボール大の生体ゆっくりが10匹。 
ソフトボール~ハンドボールサイズの子ゆっくりが17、8匹か。 
赤ゆどもは戦力にならない。カウントしなくてもいいだろう。 
「はーい、お待たせしましたー、これがあまあまさん、その名もクッキーです!」 
「「「「「「「ゆゆ!!クッキーさん!!」」」」」」」 
俺はポケットから取り出した4、5枚のクッキーを軽く砕き、ゆっくり達の上のばらまいた。 
均等に行き渡るようにばらまいたので、皆わいのわいの言いながら食べ始めた。 



【俺がゆっくりできない】4 
「がーつ!がーつ!」「うっめ!めっちゃうっめ!ぴゃねぇ!」「むーちゃ!むーちゃ!」 
その場でむさぼり食うゆっくり。脱いだおぼうしに詰め始めるまりさ。 
赤ゆのところまで運んで家族でゆっくりと食べるれいむ。みな様々にクッキーを堪能している。 
クッキーを堪能し、食後のシエスタ(笑)に入りかけたところで俺は声をかけた。 
「みなさーん美味しかったですかー?(手を耳にあて)そーですかー、喜んでくれて良かったです」 
俺はゆっくりの感想を聞く前に話を進めた。こいつらの感想をゆっくり聞いている暇はない。 
「もっとよこすのぜ!」「れいむはしんぐるまざー(笑)なんだよ!」 
が、予想通りの反応も聞こえてきた。 
「はーい、みなさんが『もっとたべたぁ~い』のは、よーく解ってますよー!」 
「ゆ?」「ゆゆ!」「もっとたべたいのぜ!」「れいむはしんぐ(ry」 



【俺がゆっくりできない】5 
「わたしのおうちに、おいしーい、虫さんをたくさーんご用意しておりまーす!」 
「むしさんはゆっくりできるのぜ!」「にんげんさんは狩りができるの?」「れいむはしん(ry」 
「それでは!みなさーん、この公園を出てまっすぐのおうちまでついてきてくださいねー!」 
「「「「「「「ゆゆー!!」」」」」」」 
ぞろぞろと公園を出て行くゆっくりたち。遅すぎる赤ゆたちは透明なゴミ袋にいれて運んでやった。 
「「「「「「「おしょらをとんでりゅみちゃいー!!」」」」」」」 
「ゆゆ!よかったね!おちびちゃん!」 
ばらまいたクッキーのおかげか、赤ゆを袋に入れてもまったく警戒しない親ゆっくりたち。 
やがて、俺がダッシュで3分の道程をゆっくり1時間ほどかけて家にたどり着いた。 
「はーい、ゆっくりのみなさーん、この木をごらんくださいーい」 



【俺がゆっくりできない】6 

「ゆ?」「ゆゆ?」「「「け、け、け、けむしさんだー!!」」」「ゆっくちできにゃいー!」 

「え?そーなの?虫だよ?食べないの?」 
「けむしさんは、ちくちくして、いがいがして、かゆかゆになるからゆっくりできないよ!」 
「くろくて、にがくて、かゆかゆになってとかいはじゃないわ!」 

 喰ったことあるんじゃねーか(笑) 

しかしなんでだ?人間が毛虫の毒に負けて痒くなるのは解るが、こいつら饅頭だぞ?小麦粉肌だろ? 
「えーと、きみたちは饅頭さんだから、毛虫さんを食べても大丈夫なはずですよー」 
「れいむたちはまんじゅうさんじゃないよ!」「ゆっくりていせいしてね!」「ぴゅんぴゅん!」 
確かにこいつらが「全身かゆかゆ」にでもなったら、手もないし掻けないしで気が狂うだろうな。 

 さすがでたらめナマモノだが、めんどくさいことになってきたなー。 


【俺がゆっくりできない】7 
当初の予定では、棒で落とした毛虫をむーしゃむーしゃして頂いて、お帰り頂くだけだったんだが。 
クッキー5枚だけで、毛虫が片付いてラッキー!みたいな。 
毛虫は見た目がゆっくりしてないもんな。妙なところで人間ぽいゆっくり達に感心しつつ・・・ 

予定変更だ。 
「はーい、みなさん注目してくださーい」俺は透明な袋に入れっぱなしの赤ゆを掲げた。 
「「「「「「「おしょらをと(ry」」」」」」」 
「ゆゆ!おちびちゃん!」「けむしをたべさせようとしたじじいは、おちびちゃんをかえしてね!」 
「だめでーす。あの毛虫をすべて食べ終わるまで、おちびちゃん達は返しませーん」 
「ゆー!おちびちゃんをゆっくり返すのぜ!」「じじいはしね!」 
生体ゆっくりたちは、ぽいんぽいんとムダな体当たりを始めた。 
力の差を知っていただくためにしばらくこのままにさせてみた。 
そして30分が経過した。 



【俺がゆっくりできない】8 
初夏の日射しの中、全力(ゆっくり基準)で体当たりを繰り返した親ゆっくりどもはすでに青天だ。 
もちろん俺は痛くも痒くもなかった。 
「「「ゆー、はー、ゆーはー・・・お、おちびじゃんを、がえじで、ね・・・」」」 
「だから、毛虫さんを全部食べたら返してやるって」 
「「「ゆ”、ぐ・・・わ”、わがっだよ”・・・けむしさんをたべるよ・・・」」」 
「その言葉を待ってました!それじゃ君から行ってみよう!」 
むんずと手近なまりさを掴み上げた。「ゆ?」 
「そぉい!」毛虫がまとわりつく木の枝にむかって投げてみた。 
「ゆっ!おそらをとん、で・・・ゆぎゃー!けむしさんがいっぱいなのぜ!た、たすけるのぜ!」 
まりさは枝にぶちあたり、たくさんの毛虫にまみれながら落ちてきた。 
キモイ。想像以上にキモイ。無数の毛虫が顔の上を蠢いている。俺があのまりさなら死を選ぶ。 



【俺がゆっくりできない】9 
「ゆぎゃー!!た、たすけるのぜっ!!きぼぢわるいんだぜ!!たすけてなのぜー!!!」 
まりさは転がりながら俺に助けを求めてきた。 
「だが断る」棒でゆっくりどもの中に突き返す。 
「「「「「ゆ”ー!!!きぼぢわるい”い”い”ー!!!」」」」」 
蜘蛛の子を散らすように逃げまどうゆっくりたち。 
「おやおやキミたち、毛虫さんをむーしゃむーしゃしないとこの子達は返しませんよ?」 
「おきゃーしゃん!ゆっくちちないでたしゅけるのじぇ!」「れーみゅもたしゅけちぇね!」 
赤ゆどもはやっと状況が把握できたらしく、親どもに助けを請い始めた。 
「ゆっぐ、まっててね、おぢびじゃん・・・む”ーじゃ、む”ーじゃ、ゆ”げぇぇぇぇぇ」 
母性本能(笑)の強いれいむが咀嚼を始めたが、見た目通り不味いようだ。 
「よーしよーし、俺によし!じゃ、次はキミいってみよう!」「ゆ?!ゆぎゃー!!!」 



【俺がゆっくりできない】10 
あれからすべての生体、子ゆっくりを毛虫にむかって放り投げ、ほとんどの毛虫は地に落ちた。 
今は、ゆっくりどもは必死になって地に這う毛虫どもを口に収めている。 

 ゆっくりどもの顔色が赤とか青とか変な色になってるな。とにかくよし。 

「「「む”ーじゃ、む”ーじゃ、ゆ”げぇぇぇぇぇ・・・まじゅい”・・・」」」 
何匹かのゆっくりどもは天を仰ぎ、またはうつ伏せになり細かく痙攣している。 
「はーい!みなさんおつかれさまでしたー!おかげで毛虫さんはほとんどいなくなりました!」 
「ゆ”っぐ・・・やぐぞぐだよ・・・おぢびぢゃんだぢをがえじでね・・・」 
「もちろん!さぁ、ママたちの元へお帰りなさい!」 
俺は跪き袋をひっくり返し、赤ゆどもを解放した。 
「ゆーん!ゆーん!」「みゃみゃーきょわかっちゃゆー!」わらわらと赤ゆどもが親の元へ・・・ 



【俺がゆっくりできない】11 
「「「お”、お”ぢびぢゃん、ぶじだっだのね”・・・」」」 
感動の再会(演出:俺)かと思いきや・・・ 
「「「ゆ?みゃみゃのおかお、にゃんだきゃ、きもちわりゅいよ・・・」」」 
「「「ゆ”がーん!どぼぢでぞんな”ごどい”う”の”ぉー!!!」」」 
毛虫にまみれ、皮膚はただれ、顔色は赤や青を通り越して紫色に。そりゃそーなるわな。 
「「「きもちわりゅいみゃみゃはこにゃいでにぇ!もうおうちかえりゅ!!!」」」 
「「「ま”っでー!お”ぢびぢゃん!!!」」」 
気持ちの悪い親を見捨て、公園方向にぴょんぴょん跳ねていく赤ゆども。 
毛虫&赤ゆに見捨てられたショックでふるえる親どもはずーりずーりと追いかけ始めた。 

また来年もよろしくなー。

【おわり】