「まいほーむ、まいほーむ、まーいほーむー♪」 

まりさは上機嫌であった。何しろ、長い間憧れであった「まいほーむ」をついに入手でき 
たのだから……それが例え飼い主のお兄さんのおうちの庭で、ダンボールにビニールシー 
トを掛けた程度のものであったとしても。 


「ゆゆ~ん、さすがまりさのおうちだよ! すごくゆっくりできるよ!」 

まりさは自画自賛しつつ、枯草を集めた「べっど」や、ティッシュの空き箱で作った「た 
からばこ」を巣に運び込み、 

「すーまーいーのぷーらんはまーいほーむせんたーへー!」 

高らかに歌いながらおうちの内装を整える。 
だが、そんなまりさの幸せは長くは続かなかった。 

「ゆゆ?、なんだかふるくさいうたがきこえてくるよ」 
「プーックック、さんじゅうねんくらいまえのうたみたいだにぇ!」 
「へたくしょなおうたをうたうまりしゃはゆっくりちね!」 

いつの間にか、親れいむと子れいむ二匹の野良ゆっくり一家がおうちの中に入り込んで来 
ていたのだ。 
マイホームまりさはびっくりしたが、同時に自分のゆっくりしたおうちを自慢したいとも 
思い、 

「おきゃくさん、ゆっくりしていってね! ここはまりさのおうちだよ!」 

と挨拶する。しかし、残念ながらこの一家はゲスゆっくりの一家であった。 

「ここはゆっくりできるおうちだよ! ここをれいむのゆっくりぷれいすにしてあげるよ!」 

親れいむの突然のおうち宣言を受け、このままではおうちを奪われると思ったマイホーム 
まりさは、慌てて頬を膨らませて反論する。 

「ちがうよ! ここはまりさのおうちだよ! ゆっくりできないまりさとれいむはゆっ 
くりしないでさっさとでていってね!」 
「なにいってるのぉぉぉぉ!?、このおうちいりぐちはあいていたでしょおおお?! 
 だからだれがすんでもいいのよおぉぉ!」 

一般にゆっくりの巣は草や木でぎそう(笑)されており、野生動物から逃れると同時に、 
他のゆっくりに対しても所有権を主張する役割を果たしていた。 
確かに、今はお兄さんのおうちからの引っ越しの最中で、おうちの扉は開け放たれてい 
た。これでは、マイホームまりさはおうちの所有権を主張する事はできない。 
しかし、マイホームまりさにはまだ奥の手が有った。 

「ゆう……それはおにいさんのおうちからおひっこししてたからだよ! ゆっくりりか 
いしてね! それに、このおうちにはまりさのにおいがするでしょ? だからまりさの 
いえだよ!」 

こんな事もあろうかと……ではなく、単に自分のおうちが愛おしくて、先ほどそこら中 
に「すーりすーり」をして置いたのだ。ゆっくりは入口のカモフラージュの他にも、生 
活臭でおうちの所有権を主張できるのである。これであの親れいむも分かってくれた筈…… 

「ゆゆ? なにいってるのまりさ?」 

マイホームまりさが生活臭の存在を持ち出しても、親れいむは動じない。 

「よくにおいをかいでみてね」 
「ゆゆ!? これは……うんうんだぁぁぁ! くちゃいいいぃぃぃぃ」 
「ゆっへん! かわいいれいみゅのかわいいうんうんでたよ! ちゅっきりー!」 
「ゆゆ~ん、うんうんでたからきれいきれいするよ! ずーりずーり」 

何と、親れいむと話している間に子れいむ達が家の奥のべっどの上でうんうんを撒き散 
らしていたのである。これでこの家におけるマイホームまりさの生活臭は完全に打ち消 
されてしまった。そして、とどめに親れいむの全身全霊を掛けた大声によるおうち宣言 
が響き渡る。 

「ここはれいむとおちびちゃんのゆっくりぷれいすだよ!」 

自分の家の所有権を全否定され、打ちひしがれるマイホームまりさ。 
だが、ここで負けては、苦労の末やっと手に入れたおうちを奪われてしまう。まりさは 
涙を流しながら、こちらも全身全霊を掛けて膨らみ、威嚇する。 

「それでも……ぞれでもごごはばりざのおうちだよ! ばりざがおにいざんのおでづだ 
いをじて、おにいざんをまいあざおごじで、おぞうじをじで、おにいざんにもらっだば 
りざのゆっぐりぶれいずだよ!」 
「ゆんゆん! おうじょうぎわのわるいまりさだね! れいむのおうちをのっとるゲス 
まりさはゆっくりしねぇぇぇ!」 
「おかあしゃんがんばれ!」「くじゅなまりしゃをやっちゅけてね!」 

二つの饅頭が激突するかと思われたその時。 

「庭の方が騒がしいと思って来てみたら……また野良ゆっくりが入りこんで来たのか!」 


俺はこの家の家主で、まりさの飼い主である。 
庭の騒ぎを聞きつけてやって来たのだが、どうも野良ゆっくりがうちのまりさのおうちを 
乗っ取ろうとしているようだ。 

「おにいさん! まりさをたすけてね!」 
「おにいさん、ここはれいむのゆっくりだよ! ゆっくりしないでさっさとでていってね!!」 

あー、テンプレ通りのおうち宣言。こっちもテンプレ通りに返す。 

「此処はウチのまりさの家だよ」 
「どぼぢでぞんなごどいうのぉぉぉ!? このおうちにはれいむたちのにおいがしみつ 
いてるでしょぉぉぉ!? そこのくずまりさのおうちというしょうこはなにも」 
「いやいや、だってホラ、表札あるし」 
「!?」 

俺はまりさのおうちの入口の上に掲げられた小さな板を示す。そこには、「まりさのお 
うち」の文字が……。 

「ゆがーん」 
「ゆゆ! ここはまりさのおうちだよ! まりさのゆっくりぷれいすだよ! おにいさ 
んありがとぉぉぉぉ!!」 

形勢逆転し、自信に溢れたおうち宣言を叫ぶマイホームまりさ。逆にれいむ達は「ぷ 
くー!」と膨らんだまりさに押し出され、「どぼぢでなまえさんがかいてあるのぉぉぉ」 
「ひょうさつさんゆっくりとれてね!」とか何とか言いながら飛び跳ねて居る。 

「はいはい、わかったらさっさとでていってね!」 

俺は三匹の親子れいむを捕まえると家の傍の川に放り投げ、まりさに向き直った。 

「災難だったなぁ、まりさ。これからはちゃんと戸締りをするんだぞ」 
「ゆう……ゆっくりりかいしたよ」 
「それにしても随分荒らされてたみたいだけど、大丈夫か?」 

折角の新居が台無しになっては可哀そうだと思い、手近な雑巾を片手にまりさの家を 
覗きこもうとしたのだが、その瞬間顔面に強い衝撃を受けてひっくり返った。 

「ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ!」 

……どうやら家の中のまりさに体当たりを食らったようだ。入口で威嚇を続けるまり 
さの姿に流石にイラッと来た俺は、こっそり表札に一行書き加え、自分の家に戻った。 

「まりさのおうち/すっきりあります」 

その夜、マイホームまりさのすてきなおうちは、沢山のお客さんを迎えて大いに賑わ 
ったそうな。 

【おわり】