花畑があった。 
まさに百花繚乱。花々は鮮やかに咲き誇り、しとやかに風に揺れていた。いろんな花が咲 
いている。

遠くに見えるのはヒマワリのようだが、今は春先だ。少々早すぎないだろうか。 
何度も訪れたことのある山のなか、初めて見つけた場所。なんだか不思議な花畑だった。 
でも、そんなことどうでもいいと思ってしまう。 

※たくさんの絵師さんのゆうかにゃんに触発されて書きました 
※独自設定垂れ流し 、と言うか基本的に「僕の考えたゆうかにゃんを愛でる話」です 


 
空は快晴、流れる雲も穏やか。実に気分がいい。収穫物の入ったクーラーボックスを横に、 
仰向けに空を見ていると、このまま昼寝するのもいいかと思えてしまう。 
そんなとき、俺の顔に影と声が降りかかる。 


「あなたは、ゆっくりできるひと?」 

逆光で顔はよく見えないが、声からするとどうやら女の子らしい。俺はどう答えたものか 
と迷い、しかし実際には本能的に目に入ったモノを即座に言葉にしていた。 

「……はいてない?」 

瞬間、顔面を踏みつけられた。 




おはなばたけのゆうかにゃん 




「うおおおおおおっ!? いてえぇぇぇぇぇぇぇ……って、痛くない?」 

とりあえず顔を踏みつけられた人間の多くがそうするように盛大に転げ回り、そして実際 
には痛みがないことに驚いた。 
スカートの中を覗かれた女の子の踏みつけがこんなにヤワであるはずがない。俺は知って 
いる。経験者は語る、なのである。 
本気なのに、大したことない。それには心当たりがある。あれは、そう……。 

「ゆっくりできるひと?」 

ゆっくりだ。 
タイミングのいい問いかけに目を向ければ、そこには先ほど俺に声をかけてきた女の子が 
いた。 
いや……女の子、なのだろうか? 
小さい。背格好はいいとこ5歳ぐらい、と言ったところか。赤と黒のチェックのワンピー 
スの下には白のブラウス。いっちょまえに小さなネクタイを締めているのがかわいい。ヒ 
マワリの飾りが付いた麦わら帽子も、いかにもちっちゃな子のオシャマなオシャレ言った 
風情で、実に可愛らしい。 

ここまでは、いい。問題はそれ以外だ。 

まず、頭身がおかしい。 
およそ2.5頭身。あきらかに頭が大きい。大粒の瞳も、ふっくらとした頬も、柔らかな 
緑のショートカットの髪も、明らかに身体に対して大きすぎるのだ。 
そして耳。ネコミミが、麦わら帽子の上にちょこんと出ている。おまけに背中にしっぽが、 
それも二本も振れているとなればこれはもうただ「女の子」と言えるハズがない。 

そもそも、こんなにかわいい子が人間であるはずがない。 

ゆっくりっぽい。胴付きのゆっくりを知ってはいるが、こんなゆっくりは聞いたことがな 
い。 
俺が首を捻っていると、 

「ゆうかにゃんはゆうかにゃんよ」 

自己紹介してくれた。 
一人称と個人名と種族が全部共通、ひとつの名前。ゆっくりの特徴だ。どうやら本当にゆ 
っくりらしい。それも胴付き。全体的にはゆっくりゆうかに似ているが、あのネコミミと 
しっぽはゆっくりちぇんとそっくりだ。 
まあ、当人が「ゆうかにゃん」と言うのだから「ゆうかにゃん」なんだろう。 

「おにいさんはおにいさんだ」 

女の子に名乗られた以上、こちらも返さなくてはならない。俺は紳士的に相手の流儀に則 
って名乗り返した。 
すると、 

「おにいさんはゆっくりできるひと?」 

ゆうかにゃんは問いを繰り返した。 
これまたゆっくりらしい問い。これがれいむあたりならゆっくりなどしないし、させない 
ところだ。 

「さて、どうだろうな?」 

様子見とばかりに、俺はクーラーボックスから「あまあま」を一つ取り出した。 
その音に、ゆうかにゃんの耳がぴくんと動き、「あまあま」をじっと見る。予想通り、こ 
の「あまあま」がお好みらしい。 

「ほら、おいで~」 

猫なで声で呼びかけるが近づいてこようとしない。 
仕方ないのでゆうかにゃんの方に「あまあま」を転がす。 

「にゃ!」 

ゆうかにゃんが素早く反応した。 
「あまあま」の出す音にネコミミをピンと立て、うれしそうに二本のシッポを振り、手は 
招き猫のように握る。 

「にゃにゃにゃにゃ!」 

そして、転がる「あまあま」を弄びだした。その様はボールを与えられた猫そっくり。し 
かしその愛らしさはどんな子猫だろうと敵わないだろう。 
そして、 

「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」 

「あまあま」をパクリと一口。無垢で可憐でしあわせそのものと言った笑顔で、ゆっくり 
お決まりのワードを放った。 
これがゆっくりれいむあたりなら俺のストレスがマッハでヒャッハー!しそうな所だが、 
今の俺はハッピネスがマッハでヒャッホウ!しそうだった。 
もはや俺は完全にゆうかにゃんの虜になってしまい、クーラーボックスから「あまあま」 
を次々と取り出すとゆうかにゃんの所に転がした。 
そのたびにゆうかにゃんは可愛らしく「あまあま」を転がして遊び、そして最後には愛ら 
しく「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」してくれるのである。 
明るいおひさまの下、百花繚乱に咲き乱れる花畑を背景に、ゆうかにゃんはどの花よりも 
輝いていた。どんな蝶だってゆうかにゃんほど花が似合うことはないだろう。 
しあわせに溺れそうになりながらも俺は冷静、抜かりはない。「あまあま」を転がす距離 
を徐々に短くする。そうすること、でゆうかにゃんと俺の距離は少しずつ縮まるのだ。ゆ 
うかにゃんが近づくと言うことはこのしあわせな気持ちがそれだけ大きくなると言うこと 
だ。 
どうしよう。 
俺、泣きそう。 
こんな、泣きたくなるほどのしあわせ、今まで経験したことがあっただろうか。 
俺の今までの人生ってなんだったんだろう? 
ゆうかにゃんは、まさにUSC(アルティメット・スウィート・クリーチャー)だった。 

しかし、楽しい時間というモノはすぐに終わってしまうものだ。 
「あまあま」は尽き、ゆうかにゃんはもうちょっとで手が届くところで止まった。 

「あまあまは?」 
「……もうない」 

どう、するか。あまあまはない。だが、ゆうかにゃんは欲しい。 
――いっそ、さらってしまおうか。 
ゆうかにゃんはバッジをつけていない。そもそもこんなかわいい子が飼いゆっくりならウ 
ワサにのぼり、俺だって知っているはずなのだ。間違いなく野生のゆっくりだ。 
野生のゆっくりを勝手に連れて行ったところで誰にとがめられることはない。 
だが、何か。俺の中にある何かが、その強引な行動を押しとどめていた。 

「なあ、ゆうかにゃん! 家にこないか? あまあまならいくらでも用意してやるよ!  
花が好きなら、家の中を花で埋め尽くしたっていい! だから、だから……!」 

気づけば俺はゆうかにゃんを口説こうとしていた。 
心の中の冷静な部分が、ゆっくり相手になにをそんな必死に、と嘲笑する。 
しかし俺は必死で、そして真剣だった。 
ゆうかにゃんはじっとそれを聞き、そして、動きで答えた。 

ゆうかにゃんは微笑んだ。俺は歓喜した。 
ゆうかにゃんは跳んだ。俺は失望した。 

ゆうかにゃんの跳んだ先は俺から離れる方、つまり花畑の方だったのだ。一面の花畑を背 
に、まるでその全部を包むみたいに両手を広げ、ゆうかにゃんはくるりと舞った。 
輝く緑の髪と、チェックのスカートがふわりと揺れるのが目に焼きついた。 
そして、 

「このおはなばたけといっしょにつれていってくれるなら、ゆうかにゃんはあなたのもの 
になってもいいわ」 

ニッコリ笑って、そんなことを言った。 
それで、俺は納得がいった。どうして強引にゆうかにゃんを連れ去ろうとしなかったのか。 
この、花畑だ。 
他の花じゃだめなんだ。この花畑にいるからこそゆうかにゃんはこんなにも輝いているの 
だ。もちろん、ここから連れ去ったとしても他のゆっくりなど足下にも及ばないほどゆう 
かにゃんはかわいい。でも、それは最高のゆうかにゃんじゃない。他のゆっくりはどれだ 
け壊しても平気だが、これだけは壊せない。 
ダメだ。これは俺の負けだ。 
それなのに全然悔しくない。なんだかサッパリした気分だった。 

「……そうか。なら、もう帰ることにするよ。また……来て、いいかな?」 
「いいけど、あまあまちょうだいね」 

こういうところはゆっくりらしい。ゆうかにゃんの答えに俺は苦笑してしまうのだった。 

    * 
    * 


花畑を囲む木々を抜けると、夕陽が見えた。つい先ほどまで明るい太陽の下でゆうかにゃ 
んと遊んでいたというのに。一瞬、時間の感覚がおかしくなる。時計を確認すると、太陽 
に相応しい時刻を示していた。 

「そういえば、元ネタの片方はマヨイガに住んでたっけな……」 

あの花畑は特別な場所で、簡単にはいけないのかも知れない。 
また、ゆうかにゃんに会うことが出来るだろうか。不安がある。 
だが、きっと大丈夫なはずだ。「あまあま」さえあれば。 
俺はクーラーボックスを開き、収穫物を確認する。 
そこには、茎を3本生やし、すっかり泣きはらしたゆっくりれいむがいる。 
三本の茎にはひとつの赤ゆっくりもなってはいない。 
すべてゆうかにゃんに「あまあま」としてあげてしまったからだ。 

ゆうかにゃんは、捕食種だったのだ。 

親れいむはゆうかにゃんに差し出すには醜すぎたのでやめたおいた。 
でも、次はこいつを綺麗に洗って試してみてもいいかもしれない。ゆうかにゃんが成体ゆ 
っくりをどんな風に狩るか楽しみだ。 
俺は明日もまたこの山に来ようと心に決め、家路へと急ぐのだった。 
【おわり】