「ゆ~ゆ~ゆ~♪」 

れいむはご機嫌でした。 
いくつもの扉が立ち並ぶ、長い廊下。白い壁。白い扉。そこは出来たばかりのようで、汚 
れ一つなく清潔です。れいむにとって、それはとってもゆっくりできることに思えたので 
す。 
れいむがご機嫌な理由はそれだけではありません。 

「ゆ~、おそらをとんでるみたい~♪」 

廊下の中を、おにいさんに抱いてもらって進んでいたからです。 

いつもより高く速く、なによりゆっくりとしたまま進むことができて、とてもいい気持ち 
でした。 
やがて、おにいさんの歩みが止まります。 

「さあ、れいむ。ここがお前の部屋だよ!」 
「ゆ!」 

扉を開け、中へと入りました。 
そこは今までいた廊下みたいに細長い部屋でした。 
違うのは、部屋は廊下ほどには長くないこと。一番奥には黒い壁が見えました。 
奥の黒い壁はなんだかゆっくりできなく思えました。れいむは少しだけ不安になります。 

「ゆっくりできるところ?」 
「ああ、とてもとてもゆっくりできるところさ」 

おにいさんの優しい声に、れいむはにっこり。 
そのままれいむはおにいさんに部屋の端まで運ばれて、 

「ゆぶっ!?」 

突然床へ落とされてしまいました。 

「どぼぢでごんなごど……」 

文句を言いかけ、れいむは言葉に詰まりました。 
飛び起きて叫ぼうとしたのに、身体が動かないのです。後頭部がぴったり床に張り付いて 
しまって、まったく身動き取れないのでした。 
れいむがじたばたとするうちに、おにいさんはどこからともなく何かを取り出しました。 
それは、先端の尖った鉄の棒に、旗のような布がついています。 
れいむはそれがとってもゆっくりできないものに思えました。 
だからおにいさんに聞こうとしました。 
でも、できません。 

「ゆべぇっ!?」 

問いかける間もなく、尖った鉄の棒を額の真ん中に刺されてしまったからです。中枢餡を 
ギリギリ避けていますから、命に別状はありません。でも、痛くて痛くて、とても喋るこ 
となんてできませんでした。 
おにいさんはそんなれいむを満足そうに見つめています。 
れいむはとても不愉快になりました。 

「おにぃざんのうぞづぎぃ……!」 
「嘘つき? どうしてだい?」 
「ゆっくじでぎるっでいっだのにぃ……」 
「そんなことないよ。ほら、見てごらん」 

おにいさんの指さすのは、部屋の端、黒壁でした。れいむは仰向けで動けませんでしたが、 
横目でどうにか見ることが出来ました。 
見て、後悔しました。 
黒い壁だと思ったのは、透明なガラスでした。その向こう、薄暗い中で、いろいろなゆっ 
くりがとてもゆっくりできないことをされていたのです。それはそれは絵にも描くのも難 
しいほどひどい光景。でも文字では書けそうな惨劇でした。 

「なにごれぇぇぇぇ!?」 
「『虐待SS』だよ」 
「ぎゃ、ぎゃくたいえすえすぅ!?」 
「ああ。とてもゆっくりできるものだよ」 
「ゆっぐじでぎないよぉぉぉ!」 
「れいむはそうだろうね。でも、ここを見に来る人たちは『虐待SS』を見るととてもゆ 
っくりできるんだよ。ゆっくりできるとは言ったけど、別に『れいむがゆっくりできる』 
とは言ってないだろう? だからおにいさんは嘘つきじゃないんだ。ゆっくり理解してね!」 

れいむの餡子脳では意味が分かりませんでした。 
ただ、ガラスの向こうを見るのが恐くて目を背けようとします。体を動かすと、頭に刺さ 
った鉄の棒のせいで、ずきりと痛みが走りました。 

「れいむにざざっでるごれ、なにぃぃ……!?」 
「ああ。それは『感想』だよ」 
「かんそう……?」 
「そう。みんなが『虐待SS』を読んで、いろんなことを思うんだ。ここではそうして思 
ったことを『感想』として投稿できるんだよ。その鉄の棒についた布にはその『感想』が 
書いてあるんだ」 

れいむにはやっぱり理解できません。 
ただ、自分が身動きできなくさせられて、その上『感想』を突き刺されてとても痛いこと 
だけはわかりました。 

「どぼじでれいむがごんなめにぃぃぃ!?」 
「それはほら、感想がついたら目印が欲しいよね? で、ゆっくりと言えばれいむ。れい 
むならどうなったって誰からも文句でないし、いや、ほんと目印にちょうどいい」 
「ゆがぁぁぁぁ! もうやだ! おうちかえるぅぅぅ!」 

おやおや、れいむは泣き出してしまいました。 
かわいそうなれいむ。じたばた暴れて、余計に痛い思いをして、ただかわいそうというよ 
りは頭がかわいそうといった有様です。 
そんな時でした。 

「あの、すみません。こちら……よろしいでしょうか?」 

そこには入ってきたのは、おねえさん。輝く長い金髪に清楚な白のブラウス、素敵な黒の 
フリルの綺麗な人です。おねえさん……いえ、もしかしたらおにいさんかもしれません。 
最近某所ではそういう人が多いと言います。 
おにいさんは笑顔で迎えます。おにいさんは性別は気にしません。おねえさんがおにいさ 
んだったり、おねえさんがおにいさんだったりしても、むしろウェルカムなのです。 

「なにか御用でしょうか?」 
「あの、『虐待SS』を見たいのですが……」 
「どうぞどうぞ!」 

おねえさんは部屋の奥、ガラスの向こうを眺めます。 
それはそれはとてもゆっくりした面持ちで、れいむはそんなおねえさんを見てとてもゆっ 
くりできなくなりました。 
やがて、おねえさんはふう、と感嘆の息を吐きます。 

「いかがでしたか」 
「はい! とてもよかったです! それで……これ、お願いしたいんですけど!」 

そういっておねえさんが取り出したのは、布のついた、片端が尖った鉄の棒。『感想』で 
す。おにいさんの笑みはいっそう明るいモノになりました。 

「はいはい! すぐに準備しますから少々お待ち下さい」 

そしておにいさんは指をぱちんと鳴らします。 
すると、れいむのあんよの方に突然なにかが現れます。れいむはどうにか目を向けます。 
そして、驚きのあまりその名を叫びました。 

「れれれ、れいぱーありすだぁぁぁ!」 
「んほぉぉぉぉぉぉ!」 

れいむの叫びに答えるようにありすは発情して襲いかかりました。れいむは仰向けに身体 
を固定されています。つまり、まむまむもあにゃるもむき出しで動けない状態なのです。 
なんということでしょう! まるでれいぱーに襲ってくれと言わんばかりの状態です。そ 
してありすはそういう空気を読めるゆっくりでした。 

「れいむってばだいたんねぇぇぇ! そういうのもきらいじゃないわぁぁぁ! ありすが 
たっぷりあいをそそいであげるぅぅ!」 
「やべでぇぇぇぇ!」 

あわれ、れいむはれいぱーありすの思うがままに襲われてしまいました。 
ねちょねちょぐちょぐちょ、卑猥で下品な音が部屋に響き渡ります。 
おにいさんもおねえさんも、それをとてもゆっくりと眺めていました。 
そして、 

「「すっきりーっ!」」 

二匹はすっきりしてしまいました。 

「ゆふぅ。なかなかとかいはなれいむだっ……」 
「はい、ありす用済み。退場」 

おにいさんがそう言うと、ありすはまるで砲丸玉にでも潰されたみたいにぐしゃりと潰れ 
てしまいました。そして、ぐちゃぐちゃになった皮とカスタードは、まるで幻のように部 
屋の床に溶けて消えてしまいました。 
一方、にんっしんしてしまったれいむのぽんぽんは大きくなっていました。胎生型にんっ 
しんです。これは普通、生まれるまで時間がかかります。それなのに、あっという間に膨 
れていきます。 

「ゆ、ゆぎぃ! うばれ……ゆゆぅっ!?」 

生まれる、という間もなく、れいむのお腹から赤ゆっくりが飛び出しました。元気なれい 
むです。 

「ゆっきゅりしちぇ……いってね!」 

生まれたれいむは上昇するわずかな時間にどんどん膨れ、すぐに成体ゆっくりの大きさに 
なってしまいました。その成長の早さは、生後第一声の途中から赤ゆっくり言葉が抜けて 
しまうほどです。。 
そして、上昇した後は落下です。 

「ゆぅ~♪ おそらをとんでるみた……ゆべっ!?」 

生まれたゆっくりはまるでピッタリ測ったかのようにれいむのとなりに着地しました、母 
ゆっくりと同じく仰向けに床に張り付き、動けなくなってしまいます。 

「はい。それでは『感想』、確かにお預かりしました」 

そして、おにいさんはおねえさんから『感想』を受け取ると、生まれたばかりの成体れい 
むにぶっすりと突き刺しました。 
れいむはもうなにがなんだかわかりませんでした。 

「どぼじであがぢゃんごんなにおおぎくなっでるのぉぉ!?」 
「今時のサーバのスペックで、こんな小さな画像ファイルのコピーに時間なんてかからな 
いよ」 

おにいさんの言葉はやっぱりれいむにはわかりません。 
ただ、ゆっくりできませんでした。 
すぐそばのガラスの向こうは相変わらずゆっくりが酷い目に遭わされています。 
その反対側にいるゆっくりれいむにしても、生まれたばかりで自分と同じ大きさまで成長 
しただけでも不気味なのに、『感想』を突き刺されて白目をむいているのです。これでは 
確かにゆっくりできませんね。 

「ゆっぐりざぜでぇぇぇぇぇ!」 

れいむは叫びました。 
それに答えたのは扉の閉じる音。おにいさんとおねえさんはとっくに部屋を出ていってし 
まいました。 
こうして、れいむは取り残されてしまいました。 
れいむは自分がとてもゆっくりできなくなると思い、悲しくなってしまいます。 
ですが、まだ悲しむのは早すぎるのです。 
きっとこれから、『虐待SS』を見に人々が訪れ、時にはれいむにちょっかいをかけてく 
ることでしょう。『感想』だってくるかも知れません。 
れいむはもっともっとゆっくりできなくなることでしょう。 
だから、いまのうちからそんなに悲しまないで、もっとゆっくりしてほしいものです。だ 
ってれいむ、あなたはゆっくりれいむ。ゆ虐の目印なのですから。 

【おわり】