俺はゆっくりが好きで、ゆっくりれいむ飼っている。 
ゆっくりはいい。裏切らない。 
なぜなら、人間を騙せる程の知能はないし、すぐバレるような間抜けな嘘しかつかない。 
そもそも飼いゆっくりともなれば生殺与奪の権利は飼い主である俺が握っている。きちん 
と躾さえすれば逆らえるはずもない。 
だから、俺にとって、ゆっくりは裏切らない、安心できるものだ。 
※ばっちゃあきさんのシリーズ作品「都会のゆっくり一家」に触発されて書きました 
※独自解釈、独自設定全開



世間ではむかつくとの評判が高いゆっくり。だが、脳天気に「ゆっくりゆっくり」いいな 
がらノンビリ過ごすれいむは、この厳しい社会で生きる俺にとって、心のオアシスなのだ。 
俺はれいむさえいてくれれば良かった。 
だが。

「おにいさん……れいむは、このまりさとずっとゆっくりしたいよ!」

れいむは、そうではないようだった。




裏切りのおにいさん




入社以来の親友がいた。 
時にケンカし、時に競い合い、時に悩みを話し合い……なんでも話せる、気の置けないヤ 
ツだった。

ヤツの方は、そんな風には思っていなかったらしい。

突然だった。 
ヤツは、俺の準備していた一世一代、渾身の企画を盗んだ。周到な準備をしていたのだろ 
う、企画を一気に進め、ヤツは昇進の道を駆け上っていった。 
周囲への根回しも入念なものだった。企画を盗まれたという俺の非難は誰にも受け入れら 
れず、むしろ俺の方が企画を盗もうとしていたと言うことになってしまっていた。 
辛うじて職を失うことはなかった。だが、閑職に追いやられ、出世の道は閉ざされた。噂 
を聞いた友人達も離れていった。 
俺には何も残らなかった。 
辛かった。さみしかった。せめて誰かに愚痴を聞いて欲しかった。 
そんなとき。ふと立ち寄ったゆっくりショップで、れいむと出会った。 
とてものんきに、ゆっくりとしていた。 
こいつならちょうどいいと思った。犬や猫と違い、ある程度は人間の言葉を理解できるか 
ら愚痴の言い甲斐もある。気に入らなければ叩きつぶしてしまえばいい。どんなひどいこ 
とをしたって、犬や猫ほど心も痛まない。 
理想的だった。 
そんな軽い気持ちでれいむを飼うことにした。 
幸いれいむはゆっくりショップでよく躾られていた。俺も行儀作法については厳しくした 
から、いわゆるゲスな態度をとることもなかった。 
時に共にゆっくりとして、時に遊んだりじゃれたり、時に愚痴を聞かせたり……俺とれい 
むの関係は良好だった。

そんなれいむの初めてのワガママは、野良のまりさと「ずっとゆっくりしたい」と言うこ 
と――つまり、人間で言うなら結婚したい、と言うことだった。

そのまりさは、れいむを遊びに連れて行く公園に住む野良ゆっくりだった。よくれいむと 
いっしょにいるのは見かけたが、そこまで仲良くなっていたとは。 
――俺はれいむさえいれば不満はない。なのに、れいむ。お前は違うのか……? 
一瞬、そんな考えがよぎるが、俺は慌てて頭を振った。馬鹿げている。これじゃまるでゆ 
っくりに――こんな下らない饅頭に依存しているみたいじゃないか。 
ゆっくりしている間は飼ってやる。気に入らなくなれば潰す……こいつは俺にとってその 
程度のヤツのハズだ。

「ゆゆ~。おにいさん~」

れいむが不安げに見つめてくる。潤んだ瞳に、どうしても情が湧く。 
それに考えてみれば、俺は日中は会社に行っている。れいむは家の中で一匹でいるのだか 
ら、きっと退屈なことだろう。

「おにいさん! まりさがいればゆっくりできるよ!」

野良のまりさは自信満々、身体を大きく膨らませ――胸を張っているつもりなのだろう― 
―言った。れいむといっしょのとき何度か相手してやったことがあるが、特に粗相をする 
ことはなかった。

「わかったわかった。ただし、勝手にすっきりーするんじゃないぞ」 
「ゆゆ~♪ おにいさん! ありがとう!」 
「ありがとう! おにいさん! これからいっしょにゆっくりしようね!」

冗談めかした言葉で承諾したら、本気で感謝されてしまった。ここまで喜ばれるとは、な 
んだか照れ臭くなってしまう。

「「ゆっくりしていってね!」」

二匹は仲良く揃って、俺にお決まりの言葉を高らかに叫んだ。 
最高に嬉しそうな、最高にゆっくりした声だった。 
まあ、悪い気はしなかった。

× 
× 
×

それから、俺と二匹の生活が始まった。 
まりさは野良だったにしては「できたゆっくり」だった。特に家を荒らすこともなく、お 
決まりの「おうち宣言」や「あまあま要求」もしてこない。なんというか、分をわきまえ 
ているという感じだ。もっとも、この町中、野良で生き続けるには、こういう基本的なと 
ころがまともじゃないといけないのかもしれない。 
まりさはれいむに教わり、飼いゆっくりに必要な常識や行儀作法も覚えていった。 
れいむもまりさと暮らすようになって、前以上にゆっくりしていた。それは俺もゆっくり 
できるということであり、悪くないことだ。

そんなある日。 
仕事が終わり、俺は二匹を脇に並べダラダラとテレビでニュースを眺めていた。 
相変わらず世間は不況であり、ニュースキャスターは景気良く不景気な話を続けている。

「ゆうう……おにいさん、なんだかてれびさん、ゆっくりできないことをいってるような 
きがするよ……」

まりさがそんなことを言った。れいむはニュースなどはぼんやり眺めるだけだ。こいつは 
興味があるのか、こうしてしばしば聞いてくる。

「ああ。不況について話しているんだよ。不況ってのは……まあ、仕事がなくなって、ゆ 
っくりできなくなるってことだ」 
「しごと? おにいさんは、だいじょうぶ……?」 
「俺は……あんまり仕事はないかな。まあ、お前等の気にすることじゃない」

俺が眉をひそめたのに機嫌の悪さを感づいたのか、まりさはそれきり押し黙った。 
確かに、閑職に追いやられて仕事は暇だ。だが俺はそんな中でも地道に実績を積み上げて 
いる。出世の芽は無くしたが、それでも俺の実力まで無くなったわけじゃない。このまま 
首を切られるのもシャクだからと、そうならない程度には頑張っていた。 
まったく、俺はなにを女々しくしがみついているんだか……。

「ゆ~♪」

沈黙を破ったのはれいむのやけにゆっくりとした声だった。 
何かと思えば、テレビは不況のニュースから一転、ゆっくりの一家がうつっていた。ゆっ 
くりショップのCMだ。画面の中のゆっくり達は家族で仲睦まじく、実にゆっくりとして 
いた。

「ゆぅぅ。おにいさん、れいむはあかちゃんがほしいよ……」 
「そうだよ! おにいさん、あかちゃんがいればとってもゆっくりできるよ!」

れいむの言葉にまりさが同調する。 
こいつらは、まりさを受け入れたときの冗談めかした俺の一言――「勝手にすっきりーす 
るなよ」という言葉を律儀に守っていた。もっとも、この程度守れないようだったらとっ 
くに潰しているだろうが。 
しかし、赤ゆっくり、か。 
確かにたくさんいれば賑やかでたのしいのかもしれな。こいつらも、俺も、もっとゆっく 
りできるのかもしれない。 
だが。

「だめだ。おにいさんは仕事が無くて大変なんだ。だから赤ちゃんを飼う余裕はない。ゆ 
っくり理解しろ」 
「ゆぅぅ……仕方ないね……」 
「そうだね! でもれいむ、あかちゃんがいなくてもみんなでゆっくりできるよね!」

落ち込むれいむにフォローするまりさ。 
ちょっとだけ胸が痛む。 
仕事が無くて、というのは嘘だ。少々赤ゆっくりが増えた程度で困らない程度の蓄えはあ 
る。なにしろ仕事一筋にやってきて、これと言った趣味はない。友人もなくしたから金の 
使い道なんてほとんどないのである。 
だが、ただでさえ人間関係が煩わしいのだ。下等ナマモノのゆっくりとは言え、家族ひと 
つを抱え込むなんて面倒、まっぴらごめんだったのだ。 
まあ、こいつらは聞き分けのいいゆっくりだ。わかってくれるだろう。 
そう自分に言い聞かせ、その日はそのまま眠くなるまでダラダラとテレビを見ながら過ご 
した。


そして、翌日。 
俺は裏切られた。

仕事から帰ってきた俺を迎えたのは、お腹を大きくしたれいむだった。 
れいむは明らかににんっしんしていた。

「お前、どうしたんだ……?」 
「ゆゆん……あのね、おにいさん、まりさが……まりさが……!」

れいむが何かを言おうとしたとき、脇から凄い勢いでまりさが飛び出してきた。

「ゆゆーっ! おにいさんごべんなざいぃぃ! れいむがどうじでもあがぢゃんほじいっ 
ていうから『すっきりー』しぢゃいまじだぁぁぁ!」 
「まりざなにいっでるのぉぉぉ!?」 
「ごべんなざいごべんなざい! どうがれいむをゆるじであげでぐださぃぃぃ!」 
「どぼじでれいむのせぃにするのぉぉぉ!?」

ゆっくりどもはそれからもぎゃあぎゃあ言い合っていたが、俺の耳には殆ど入ってこなか 
った。 
こいつらは所詮下等なナマモノ。二匹が同じ所にいて、今まで「すっきりー」しなかった 
ことの方が不思議なのだ。どちらのせいというわけではないだろう。本能に勝てなかった 
だけに違いない。 
だが、俺は許せなかった。 
まりさは野良だったし、つきあいが短かったからまだ仕方ないと言えないことはない。 
だがれいむは許せない。 
長いこと一緒に過ごしてきたのだ。俺の手ずからじっくり躾てきたのだ。 
それに、裏切られた。 
裏切りは許せないことだ。

「れいむ」 
「ゆ、ゆゆっ!? おにいさん、あのね……」 
「おにいさん、仕事が無くてもうゆっくりは飼えないって言っただろう?」 
「だって、まりさが、まりさがぁぁ!」 
「他のゆっくりのせいにするなんてとんだゲスだな。がっかりだよ。お前なんか……」

俺はれいむを掴みあげた。 
そして、触れんばかりに顔を近づけて、

「捨ててやる」

吐き捨てるように言った。 
捨てられる、というのは飼いゆっくりが最も恐怖する言葉だという。それは本当のようだ 
った。

「ゆがーん!」

れいむはショックの言葉を吐き、まるで電池を抜かれた玩具みたいに動かなくなった。 
俺は淡々とダンボールを用意すると、そこにれいむを詰めた。 
箱を閉めようとしたところでれいむはようやく正気に返った。

「まっておにぃざぁぁん! まりざはっ!? まりざはどうずるのぉぉぉ!?」

まりさをどうするか? 別に考えていない。ただ、今は、俺を裏切ったれいむを捨ててし 
まいたいだけだ。

「まりさはれいむと違っていい子だから、これからも飼うよ。ゆっくり理解してね!」

反射的にそう答え、俺はダンボールの蓋を閉じ、ガムテープで封をした。 
れいむにあんなことを言ったのは、制裁をより残酷なものにしたかったからだ。期待通り、 
れいむの顔は絶望に染まった。爽快だ。 
そして、俺は自転車でれいむの入ったダンボールを運んだ。 
普段訪れない街の一角、ゴミ捨て場。そこにつくと、俺はダンボールを開きれいむを放り 
だした。

「ゆべっ!?」 
「俺を裏切ったお前なんて、そこでゴミにまみれて惨めに暮らしてろよ」 
「まっでぇぇぇ! おにいざぁぁん! れいむはわるくないのぉぉぉ!」 
「じゃあな」

れいむは未練がましく叫んでいたが、ゆっくりが人間の乗る自転車に追いつけるわけもな 
い。すぐに声は聞こえなくなった。 
少しだけ、胸が痛んだ。 
俺は今日、ずっといっしょだった飼いゆっくりを失ったのだ。

× 
× 
×

「おにいさん! おかえりなさい!」

家に帰った俺を迎えたのはまりさの明るい声だった。

「れいむがいなくなってさびしいけど、これからはまりさがおにいさんをゆっくりさせて 
あげるよ!」 
「ああ、よろしくたのむよ」

俺は生返事すると、すぐさま自分の部屋にこもった。そこで、ちょっと作るものがあった 
のだ。 
まあ、簡単な工作で、10分とかからず出来上がった。

「おにいさん……」

扉を開けると、つい先ほどとはうって変わって不安そうなまりさがいた。 
まあ、あんなことのあと、いきなり俺が部屋にこもったら落ち着かないだろう。 
早く、安心させてやらないと。

「まりさ! お前にプレゼントがあるんだ!」 
「ゆゆっ!? ぷれぜんとっ!?」 
「お前はれいむと違っていい子だから……じゃーん! ほら、ゆっくり専用の銀バッジだ!」 
「ゆゆーっ!」 
「これでお前も晴れて立派な飼いゆっくりだ」 
「おにいざぁぁん! ありがどぉぉぉぉ!」

まりさに銀バッジをつけてやると、まりさは感動の余り泣き出した。 
やれやれ、困ったヤツだ。そんなに喜ぶことないのに。

こんな、今作ったばかり、それも銀紙とダンボールで適当に作った偽物の銀バッジで喜ば 
なくたっていいじゃないか。

れいむはにんっしんした。 
すっきりーをどちらが始めたかはわからないが、二匹でやったことには代わりはない。ま 
りさにも責任はある。いや、そもそもれいむがにんっしんしていたということは、れいむ 
の言い訳は本当で、こいつが一方的に悪いことだって考えられる。 
れいむを絶望させるためにこいつを飼おうと言いはしたが、本当にそうするつもりはなか 
った。すぐにでも潰してやるつもりだった。 
だが、れいむを捨てた帰り道、自転車を漕ぐうちに思ったのだ。 
そんなに簡単に楽にしてしまっていいのか、と。 
そして思いついたのだ。 
こいつにはせいぜい、いい思いをさせてやろう。 
その上で、突き落とす。こいつが増長しきった時点で捨てるなり潰すなりしてやろう。 
俺を裏切ったのだ。俺にれいむを捨てさせたのだ。存分に苦しんでもらわなくてはならな 
い。

そして、その日からまりあを甘やかすようにした。 
毎日あまあまをくれてやり、世話もマメに見てやった。まりさの要求することは、可能な 
限り答えてやった。 
だが、それなのに。 
まりさはゆっくりであるにも関わらず、増長しなかった。 
過度にあまあまを欲しがったり、俺に無茶な要求をしてきたりしない。いわゆるゲスな態 
度をとらないのだ。

「ゆんゆん! そんなにたかいもの、かわなくてもいいよ! おにいさんといるだけでま 
りさはゆっくりできるよ!」 
「あまあまさんおいしいよ! でもたかいんでしょ……いいよ! まりさはたまにむーし 
ゃむしゃして、しあわせー! できればいいよ! いつもはふつうのごはんでいいいよ!」 
「おにいさん、おしごとたいへんだったね! おうちにいるときは、いっぱいゆっくりし 
てね!」

そんなまりさを見ていると、俺は自分が間違っているような気がしてきた。 
俺を裏切ったまりさに、相応の罰を与える――だが、それで俺は満たされるのだろうか? 
そんなことをしても虚しいだけではないのだろうか? 
一時の気の迷いでれいむを捨ててしまい、そしてこんなにかわいいまりさも捨てて……そ 
れで俺に何が残る? そもそもそんなひどいこと、俺を裏切った「ヤツ」と変わらないん 
じゃないか? 
まりさと共に過ごすうちに、次第に俺の心は穏やかになっていった。 
れいむには酷いことをしてしまった。もしやりなおせるなら、やり直したい……そう、思 
うようにすらなっていた。

そんなある日。 
休日、俺は離れた町に買い物の用があり、昼前から出かけた。まりさもたまには他の町で 
気分転換するといいだろうということで、いっしょに連れてきた。

「ゆ~♪ ゆ~♪ おにいさん、たのしいね!」 
「ああ、そうだな」 
「ゆ! すごくゆっくりしたにおいがするよ!」

まりさの声に周りを見れば、クレープ屋があった。なかなか評判の店のようで、行列が出 
来ている。

「よし、まりさ。あのクレープ買ってきてやるよ!」 
「ゆゆ!? ゆ~ん、とってもゆっくりできそうだけど……」 
「遠慮するなって! じゃあ、この辺で待ってろ。すぐに買ってきてやるからな」

そして、俺はクレープ屋の行列に並んだ。まりさを連れてきてやっても良かったのだが、 
食べ物屋ではゆっくりがいることを嫌がられる場合がある。まあ、少し離れているとは言 
え目の届く場所にいるから大丈夫だろう。 
待つことしばし。ようやくクレープを買うことが出来た。俺の分はチョコ、まりさの分は 
イチゴのクレープ。二人で食べっこしたりしたら楽しいだろうし、「ゆっくり」できるに 
違いない。 
まりさの方に行くと、いつの間にか他のゆっくりといる。クレープの会計をしている間に 
来たのだろうか。やれやれ、まりさは気だてのいい美ゆっくりだからな。野良もほっとか 
ないのだろう。困ったことだ。

「れいむだよお! まりさといっしょにいた、れいむだよおお!!」

――耳を疑った。 
まりさの近くにいるのはゆっくりれいむだ。それも……俺がすてたれいむなのか!? あ 
あ、今日はなんていい日だ! これでやり直せる! まりさとれいむ、いっしょにやりな 
おせるのだ!

「ゆー、おもいだしたよ。おにいさんがまりさのまえにかっていたれいむだね。すっかり 
うすよごれちゃって。で、なにかまりさによう?」 
「このはくじょうものおおおお! どうしてあんなことしたのおお!!」 
「ゆー? なんのこと? まりさ、さっぱりわからないよ!」 
「とぼけるなあああ! れいむにむりやりすっきりさせたうえに、にんっしんしたのをぜ 
んぶれいむのせいにして、おにいさんにれいむをすてさせるようにしむけたんでしょおお 
おお!!」

ああ、れいむはあのとき、俺が言ったことを信じているのか。本当に悪いことをしてしま 
った。でも、俺は反省した。れいむにもきちんと謝って、そしてまた、一緒にゆっくりし 
よう。 
そう思って、一歩踏みだしたとき。

「ふう……れいむ、ゆっくりきくのぜ!」

変な言葉を、聞いた。 
「だぜ」言葉。品の悪いまりさ種特有の言葉遣い。おかしい。俺のまりさは、今まで俺の 
前で一度だってそんな言葉使ったこと、ないのに。

「れいむにはいちおうかんしゃしてるのぜ? のらだったまりさがおにいさんにひろって 
もらえたのも、れいむがまりさをぱーとなーにえらんでくれたおかげなのぜ」 
「だったらどうじでええ!」 
「れいむがいろいろおしえてくれたおかげで、まりさはりっぱなかいゆっくりになれたの 
ぜ。でも、もうようずみなのぜ! おいしいごはんも、あたたかいねどこも、やさしいお 
にいさんも、ぜんぶまりさひとりだけのものなんだぜ!」

……何を、言って、いるんだ、まりさは。

「ひとりじめしなくても、いっしょにゆっくりすればよかったでしょおおお!」 
「れいむはなにもわかってないのぜ! まりさはかいゆっくりになってからも、じぶんな 
りのよのなかをべんきょうしたのぜ! いまのよのなかはふきょうなんだぜ! おとなの 
ゆっくりをふたりもかうよゆうはおにいさんにはないと、まりさははんだんしたんだぜ! 
 あとはせんてひっしょうだぜ! つまりはそういうことなんだぜ!」 
「まりざあああ!!! ゆがああああ!!!」 
「あれだけこどもをつくるのはおにいさんにきんしされていたのに、やくそくをやぶって 
にんしんしたれいむはすてられてとうぜんなんだよ!」

もう聞いていられなかった。 
俺は走ってその場を去った。

× 
× 
×

気がつけば、町の何処とも知れない場所、日も暮れようとしていた。 
ああ、何て事だろう。

俺はこれ以上ないほどに裏切られたのだ。 
こともあろうに、ゆっくりに……! 
生き物ですらない、ナマモノにっ!!

全てはまりさの仕組んだことだったのだ。 
俺はまりさの計画通りにれいむを捨ててしまった。 
甘やかしたのにまりさが増長しなかった理由もわかった。 
あいつは賢かった。「世の中が不況」と言うことがわかっていたし、俺に「ゆっくり二人 
を飼う余裕はない」とおもっていた。 
わがままを言わなかったのは、なんてことはない。俺にそれを叶えるだけの財力がないと 
見くびっていたからなのだ……! 
なんで俺はこんなに甘いんだ。 
まりさが無理矢理すっきりーした可能性は考えていた。だからアイツも制裁するつもりだ 
ったじゃないか。 
それなのに、情が湧いて、脳天気にもまりさをかわいいと思ってしまった。このままペッ 
トとして飼ってやろう何て考えてしまった。 
こんな事だから、「ヤツ」に利用されて全てを失ったんだ!

「おにいさん、どうしたの? くるしいの?」

ふと、声の方を見れば、そこにはゆっくりありすがいた。 
俺の手には、まだクレープがあった。おそらくその匂いにでも惹かれてやってきた野良だ 
ろう。

「ありすのとかいはなうたをきけば、きっとゆっくりできるわ! そうしたらそのあまあ 
ま、もらってあげてもいいわよ!」

そしてありすは歌い始めた。なんとも調子っぱずれな不器用な歌。でも、俺のことを心配 
してくれるのは伝わってきた。 
ああ、俺はなんて甘いやつなんだろう。 
こんなときだっていうのに。ゆっくりに裏切られたばかりだというのに。 
この俺のために歌ってくれるありすのことをいいやつだと思っている。ゆっくりにだって、 
悪いやつばかりじゃないとか考えている。 
泣けてきた。俺はどこまでいっても甘いヤツなんだ。だから裏切られる。だから泣くはめ 
になる。 
だから……。

「ゆゆ? おにいさんなかないで! なくなんてとかいはじゃな……ゆぶぇっ!?」

俺のために歌うありすを。思い切り踏みつぶした。 
一撃でありすは永遠にゆっくりした。だが、止まらない。止まれない。何度も何度もあり 
すを踏みつけた。

「俺のことなんか心配すんなよ! 優しくするなよ! 情けなんてかけてくるんじゃねえ 
よ! そういうのいらないんだよ! 邪魔なんだよ! 苦しいだけなんだよ! みじめに 
なるだけじゃねえか! くそったれーっ!」

俺は、ずっとずっと、原型がわからなくなるほどグチャグチャになってもなお、ありすを 
踏みつけ続けた。

× 
× 
×

あの日から俺は変わった。 
情を捨てた。 
まずヤツに復讐した。俺の企画を盗んだヤツのこと、思った通りそのあとも汚いことをや 
っていた。閑職の暇さを利用して俺は情報をかき集めた。 
だが、それを簡単に告発したりしない。 
それをネタにヤツを揺すり、俺は返り咲いた。 
それからもいくつもいくつも今までならやらなかった汚い手を使い、俺は成り上がってい 
った。 
そんな誰もが俺を忌避した。 
知ったことか。友達なんていらない。 
ただ、自分のために、自分一人のためだけに、邁進し続けた。

それでも俺は弱い。時には心が折れてしまいそうになることがある。辛くてたまらなくな 
ることがある。 
そんなときは、ゆっくりを虐待した。

「やべでぇぇぇ!」 
「もうゆるじでぇぇぇぇ!」 
「ごべんなざい! ごべんなざいぃ! あやばるがら! おうぢがえじでぇぇぇぇ!」

やつらは泣いて許しを求めたが、俺はそれをことごとく無視した。そうすることで、おれ 
の中からいらないものがひとつずつ無くなっていった。

俺の飼っていたれいむとまりさがどうなったかは知らない。れいむは野良のまま、まりさ 
も偽物の銀バッジをつけているのだから野良になったのだろう。野良ゆっくりのゆん生は 
短い。今頃はもう永遠にゆっくりしているかも知れない。 
心配などはしていない。だが、今となっては少しは感謝もしている。 
あいつらのおかげで俺は強くなれた。

俺は今日もゆっくりを虐待する。 
裏切るのではなく、なにもかも裏切ってやる。 
そのために、もっと強くなるため。もう二度と泣かないために。

【おわり】

anko0098

元ネタ:ばっちゃあき