突然声をかけられて、僕は足を止めた 
呼び止めたのはなんでもない、ごく当たり前にそこらにいる野良のゆっくり 
どうやって登ったのか判らないが歩道橋の手すりから僕に一言 

「れいむがおにいさんをゆっくりさせてあげるよ!」 


突拍子も無い発言にも僕は慌てず返答した。 

「あ、まにあってます」 

「ゆがーん!?」 


【ゆっくり飼ってますから】 


「どういうことなの?!れいむにもわかるようにゆっくりせつめいしてね!!」 

【】閉じのタイトルコールが入る間にも23秒が過ぎてしまった。 

「タイトルコールでわかって貰えないかな、僕は十分にゆっくりしたゆっくりを飼っているんだ」 

目蓋を閉じれば思い出す、我が家のゆっくりたちの姿を。 

瀕死の野良ゆうかを拾ったのは二年前の事 
シャッターの閉まった花屋の前で偶然見つけて連れ帰り 
駄目もとでオレンジジュースを与えて快復させ 
時間をかけて仲良くなり、今では立派なシルバーバッジ(野良なので血統的にゴールドは厳しい) 

もう一匹いるのだが、そちらはまぁいい。 

狭いベランダのプランターだがゆうかのお陰で殺風景だった部屋も華やぎ 
何より話し相手のいる生活は、日々の出退勤すら苦痛に感じていた自分にとって 
大きな心の支え…ゆっくり風に言うなら「ゆっくりさせてもらっている」とでも言うのだろうか? 

「というわけで、キミにゆっくりさせてもらわなくても僕はゆっくり出来ているんだ。だから…」 

雨が降ってきそうだった事もあり、僕は足早にその場を後にした。 

れいむの髪の毛を乱暴に掴んで 

強烈なフックを叩き込む。 

小さな饅頭の分際で健気に暴れて抵抗しようとするが、此方も素人ではない 

とりあえず口をガムテープで塞いで 

もみ上げを引きちぎって歩道橋から投棄 

カバンの中に放り込んでからもしつこく暴れようとするので 

肩掛け部分を振り回して、振り回して、振り回す 

暫くするとおとなしくなったので、そのまま家に持ち帰ることにした。 


「ただいまゆうかっ!」 

「おかえりなさい、おにいさん」 

小さな同居人に帰宅を告げて荷物を降ろす。 
野良ゆっくりをそのまま拾って帰ることをゆうかは余り好まないが 
今日くらい痛めつけておけば嬉々として僕の作業を手伝ってくれる。 

「今日はれいむだよ」 

「……よくみせて」 

ゆうかの前で口のガムテープを引き剥がして見せる。 

その瞬間、口からごぼっと音を立てて水っぽい餡子が漏れ出した。 
意識を喪っている間に口の中にたまっていた嘔吐餡だろう 

「うわ、きたない…」 

「あんこだけじゃないわね、はもおれているわ」 

「なおさら汚いよ」 

あわただしく嘔吐餡を掃除して 
れいむが意識を取り戻さないうちに作業下準備を済ませてしまう事にする 

まずは卵を割り、卵黄だけを取り出して丁寧にかき混ぜる。 
オーブンを予熱し、最後に完璧に手加減した蹴りをれいむに浴びせる。 

「ゆっぎy?!」 

意識を取り戻したものの、惨めに痙攣するだけで自分の現状に気づいていないれいむに水をぶっ掛け 

意識の覚醒を促す。 

「リボンを外せ」 

「ゆ、う゛っ!?」 

「リボンを外せ」 

「どぼry」 

これから30分間に渡り「リボンを外せ」と要求し続ける描写を割愛する。 

結果的にれいむはリボンを外す事を承諾せず、変わりに 

全ての歯と 

眼球と 

声帯と 

リボンがついている部分を除く髪の毛と 

生殖器を喪って 

「もう殺すしか…」とゆうかと話し合う段になって始めて泣きながらリボンを外した。 
(ゆうかは排除したれいむのパーツを丁寧に集めてあらかじめ轢いて置いた新聞に並べてくれた) 

「よし、それじゃオーブンだ!」 

卵黄を塗りたくったれいむを、適度(1200度)のオーブンに放り込んで12時間加熱する。 

意味?無いよ? 

最初からほしかったのは髪歯眼球声帯生殖器装飾品とれいむの断末魔 
あとは残った炭くらいかなぁ… 

卵黄をぬった理由は、すぐに皮が焼けてしまうと永く悲鳴を楽しめないからなんだよね 
表面がコーティングされて、中に熱がとおるまでにタイムラグが出来てとてもこんがり焼ける。 

その声を聞くのが、僕もゆうかもだいすきだ。 

で、本日の収穫であるれいむのパーツをさっそく押入れのらんに移植する。 

十三の子宮と71の眼球に7色の頭髪 
移植された顔面はそれぞれが別の固体から移植したあにゃるに直結していて 
眼窩と口から排泄を繰り返す。 
歯はアクセサリのように体中に埋め込んで、身動ぎするたびぶつかってチャラチャラと軽い音を奏でる。 

僕とゆうかのライフワークとなっているらんの改造は 
ゆうかの畑(ベランダのプランター)を荒らしたらんへのお仕置きとして一年半も続いている。 

なんでも連れ合いのちぇんが排気ガスで病気になったらしく 
綺麗なお花でゆっくりさせてあげたかったという野良らしい自分勝手な理屈だ。 

怒りに任せて屠殺しようとする僕に 
拾ってきてから始めてゆうかが自発的に話しかけ、僕の短慮をいさめた。 

『どうせならそのちぇんをゆっくりさせましょう、ふさわしいほうほうで』 

暫く話し合った後、ゆっくりに対する意見ですっかり意気投合した僕たちは 
今までの断絶を埋めるために共同作業に乗り出した。 

で、ちぇんと合体させたら面白かったから、手当たり次第に融合させて今に至る。 

ゆうかの怒りは尽きないらしく、僕も此処まで仕上げた作品を手放すつもりは無い。 

オーブンの中のれいむの声が、そろそろ聞こえなくなってきた。 

哀しげに身を震わせるらんに、寿司折でも包むようにリボンを巻いてやる。 

今日は目玉を口の中に移植したのと、髪の毛を癒着させた声帯を眉間に埋め込んだ。 

全身の露出しているか、まだ機能が壊死していない声帯が意味の無い嗚咽を漏らすのも耳に心地よい。 

押入れのケージの中で糞尿と体液を垂れ流すらんを見て、れいむの断末魔に耳を済ませて 
ぼくとゆうかは心行くまでゆっくりした。 

「「ん゛b o おooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」 



【おわり】
 
========あとがき============
お題(ゆうか×らんでんほぉぉぉだったと思う(うろ覚え))が難しすぎて 
完成まで永くかかった上にやっつけになりました。 
次は文章だけじゃなく声で何か出来れば良いなぁ… 
ただらじおゆっくりさんのようなソフトがないので、ゆっくりに関しては無声劇になるか 
N○Kで昔あった朗読劇の様な感じになるかもです。 
期待せずにお待ちください。