いつの間にか習慣となっていた朝の散歩。 
気ままにフラフラし、見も知らぬ公園に立ち寄った。 
気付いてみれば草むらの奥、水を吸い込んでボロボロになった小さな段ボールの中に、そいつはいた。

M1氏のイラストを基に書いています。 
台詞丸々パクリ、原作レイプ注意


まりさだ。ゆっくりまりさ。 
子ゆっくり程だろうか。小さな段ボールの中に、小さなまりさが納まっていた。 
その姿はボロボロで、薄汚れている。 
襤褸切れといっても差し支えない帽子らしきものを被って薄笑いを浮かべている。少々不気味だ。

「・・・・・・ゆへへ、おにーしゃんは ゆっくりできる ひと?」

こちらに気付いたのだろう。 
まりさは見上げながら訊ねてくる。 
一応危害を加えるつもりは無い。「ゆっくりできる人だ」と言っておいた。

「・・・・・・ゆっくりできる おにーさんは まりしゃに あまあまを もってくる のじぇ」

またか。 
心の中で舌打ちする。 
二言目には物を集ろうとする野良ゆっくりの下種根性が、俺は好きではない。

「断る。何で貴様なんかに物を恵んでやらなきゃならんのだ」 
「・・・・・・ゆへへ 。いいのかじぇ? まりしゃは どすになる ゆっくりなのじぇ」 
「・・・・・・なに?」

珍しい。 
こんな野良風情がドスの名を口にするとは。 
少しだけ興味がわいてきた。このまりさにもっと喋らせてみよう。



「まりしゃの おきゃーさんは どす なんだじぇ」 
「ふーん」

適当に相槌を打つ。いちいち野良の嘘に突っ込む気は無い。

「かりばの みんなは ぜんぜんしんじにゃいで まりしゃを いじめて いじめて いじめぬくけど」 
「ほぉ」 
「おおきくなったら どすになって みかえしてやるんだじぇ」

まりさの身体には小さい傷がそこらじゅうにあった。 
恐らくだが、このまりさは『狩り場』とやらで今のご高説を垂れ流していたのであろう。 
野良のゆっくりは、コミュニティの和を乱すものを嫌う。それは自分達の生命すら脅かしかねないからだ。 
結果、このまりさは苛め抜かれてこの様というわけだろう。

よく見てみれば、小汚い油色に染まった金髪の下、まりさの左目は白く濁っている。 
虐めの影響か、あるいは他の要因か。 
まりさの視界の半分はもう既に無いのだろう。

残った右の眦からは涙が零れ落ちてきている。 
仲間であるはずの野良達から何をされたか思い返しているのだろうか。 
薄笑いを浮かべたまま泣く。ゆっくりにしてはなかなか器用な芸当だ。

「こんな だんぼーるさんの いえにゃんかじゃなくて にんげんの おうちを のっとるんだじぇ」 
「・・・・・・」

俺に向かって物騒なことを吐くまりさ。 
本来ならこんな言動を取る野良は即刻駆除されて然るべきなのだが、とりあえず聞き流す。

「だって まりしゃは どすに なる まりしゃだきゃらね ゆへへ」 
「・・・・・・はぁ」

溜め息を吐く。 
何を言い出すかと思えばこんなものだったとは。



「まりさ。つまりお前の母親はドスで、お前もこれからドスになるから言うこと聞けってか」 
「・・・・・・ゆへへ。 そうだじぇ。だから まりしゃに あまあま よこしてね」 
「ふーん・・・・・・」

まりさの言葉を受けて、考え込む。 
いや、正確に言えば、考え込む「振り」だ。 
これからどうするかなんて決まっている。

「はっ」

思わず鼻で笑ってしまった。 
下らない。本当に下らない。 
あまりの莫迦莫迦しさに思わず笑いを堪え切れなかった。

しゃがみ込み、できるだけまりさと視線の高さを合わせるようにする。 
それも自然にまりさを見下す位置になってしまった。 
まぁいいや。見下ろす形のまま出来るだけ優しい声でまりさに語りかける。



「いいか?まりさ。お前は母親がドスで、お前もドスになると言った。野良共に仕返しして、人間の家を奪うとも」 
「・・・・・・ゆへへ。 そうだじぇ。だから おにーさんは まりしゃに あまあまを・・・・・・」 
「だけどな、まりさ。それは有り得ないんだよ」

バッサリと、まりさの主張を真っ向から真っ二つにする。 
一瞬呆気に取られるまりさ。だが気を取り直し、きっと眉を上げて抗議してくる。

「・・・・・・ありえなく なんか ないのじぇ。まりしゃは どすに なって・・・・・・」 
「ああ、いいよ別に言い返さなくても。そんな事しても無駄だからさ。 
 これからお前の言ってる事がいかにインチキか教えてやる」

まりさを黙らせ、続ける。

「まりさ、お前の母親はドスといったな。先ずこれが間違いだ。 
 この町に、いや、人間の都市にドスまりさは一匹も存在しない。何故なら、全部駆除されてるからだよ」

「ドスまりさってのは以外に危険だからな。人間に危害が及ばないように、見かけ次第駆除されるってわけだ。 
 まりさ、お前は見たところこの町出身だろう?残念だけどこの町にはここ数年ドスまりさは近寄ってすらいない」

「つまりお前はどっかの糞野良がひり出した糞野良の子に過ぎないってわけだ。 
 ドスなんて言葉、何処で覚えた?大方飼いゆっくりの話でも聞いてたのか、それとも本能とやらか。 
 まぁ、俺にはどっちでもいいがね」

「それにお前さぁ、ドスになるって言うけど一体その身体でどうやってドスになるって言うんだ? 
 ボロボロでさ、言葉も途切れ途切れになるほど体力が無くなってる。明日にでも死ぬんじゃねーの?」

俺がひとつ言葉を吐き出す度に、まりさの目からは光が失われていく。 
その目に残るのは深い闇。絶望という名の奈落だ。

「まぁ百万歩譲ってお前の母親がドスで、お前もドスになれたとしよう」

この言葉を受けてまりさの目に少しだけ光が灯る。 
最も、数秒後には無惨に消えるのだが。

「そしたらお前、死ぬぞ? 
 言っただろ、ドスは駆除されるって。お前が言ったのは自殺の宣言に他ならないんだよ」

再びまりさを絶望に突き落とす。 
瞳の中の淡い光が掻き消えるその瞬間は、見ていてとても面白かった。



「なぁまりさ。分相応って言葉、知ってるか?」

喋らなくなってしまったまりさにそう話しかける。 
もうそろそろ潮時だな。立ち上がる。

「お前もドスになるとか言ってないで、ゴミクズはゴミクズらしくプライドなんて捨てて生きればいいんだ。 
 少なくともその方が楽だと思うぞ?」

真っ暗な瞳でこちらを見つめ続けるまりさを尻目に、歩き出す。 
もうこうなっては駄目だな。面白くないし、生きていけるとは思えない。 
暇つぶしにもならなかったな。残念。

公園の入り口まで差し掛かって、再びまりさの方へ振りむいた。 
まりさは動かない。ただひたすらこちらを光の無い目で見つめ続けているだけ。 
助けて欲しいのだろうか?救いの手を差し伸べて欲しいのだろうか?

嫌だよバーカ。

誰がお前みたいなゆっくりを飼ってやるものか。 
せいぜいそこで足掻きまくって、惨めに死ね。

もう振り返ることは無い。 
俺は颯爽とした足取りで公園を後にした。

【おわり】

anko0101

元ネタ:M1