「しんぐるまざーのれいむにあまあまをちょうだいね!れいむたちはおなかがすいてるんだよ!」 

俺の目の前には一匹の野良れいむと、そいつの子供だろう数匹の赤れいむや子まりさが居る。 
すぐ側にある電柱の陰から野良まりさ一匹が心配そうにこちらを見ている。察するに、このれいむの番だろう。 

番が死んだ事にして人間の同情を惹くゆっくり。街の色々な所で見かけられるありふれた風景だ。 

「まりさのいもうとは、じこでめをけがしちゃったんだよ!かわいそうでしょ!あまあまあげたくなるでしょ!」 

子まりさが傍らの赤れいむ―――片目が無い、を突き飛ばすようにして前に押し出した。 
これも良くある風景だ。 
必然的に起こされた事故ねぇ……と見ていると。 

「かわいちょうなれいみゅにあみゃあみゃをちょうだいにぇ!」 

前に出た赤れいむはふてぶてしい顔をしてそんな発言をした。 
これで「可哀想だから」と言う理由で餌をあげる人間は居なくね?物凄く奇特な人しかあげんと思うのだが。 
珍しい物乞いの仕方に感心している俺に、無防備で擦り寄ってくるれいむとその子供達。 
その行為は野良ゆっくりにしても度が過ぎている。 
それに良く見ると、野良にしては比較的汚れておらず綺麗な方だ。 
どうやら、このれいむ達は、元飼いゆっくりで捨てられてから日が浅いのだろう 

「じじいはなにしてるの?みみがきこえないの?ばかなの?しぬの?」 

知能差にもよるが、野良になって数週間経つゆっくりは基本的に物乞いをしない。 
家族を無慈悲に連れて行く保健所職員や、何の感情も見せずに足で潰したり蹴り飛したりする大人、面白半分に苛め殺す子供、等等。 
そんな不幸から幸いにも逃げ出せたゆっくりは、自分が哀れで可愛いかを人間にどれ程語っても何の効果も無い事を悟るのだ。 
…………ただ世の中には例外と言うものが存在する 

親が両方とも行動不能な怪我をしてどうしようも無くなった赤ゆっくり。 
ろくな躾も受けないまま成長して捨てられたゆっくり。 

などは、物乞いをして糧を得る以外に選択肢が無いのだ。 
特に何の躾も受けずに成長して捨てられたゆっくりは酷く厄介である。 
子供が全員殺されても、自身が死ぬほどの怪我をしても、自分の考えを改めない。 
あの人間がおかしいだけで、自分の行動には一片の間違いは無い。 
との死ぬまで直らない――誰も治さない――認識の下に行動し続ける。 
まあ、暇つぶしには丁度良い玩具だろう。 

「……このあまあまが欲しいのか?」 
「ゆゆっ!ほしいよ!はやくれいむたちにちょうだいね!」 

ポケットから出したチョコレートを、涎を垂らしながら食い入る様に見つめるれいむ達。 
電柱の陰のまりさは今にも飛び出してきそうな程に目を見開いている。 

「じゃあゲームをしないか?簡単なクイズさ。勝ったらこのあまあまをあげるよ」 
「いいよ!はやくしてね!はやくあまあまちょうだいね!」 

喜色満面で答えるれいむ達。 
それを横目にゴム手袋を装着する俺。 
一匹の赤れいむ――さっきの目を怪我した固体――を摘み上げる。 
そして掌の上に置くと、もう片方の手でそれを覆う。 
これで外からは赤れいむの姿は見えなくなった事になる。 
……まあ、それでも。 

「おしょらをとんじぇるみちゃい!」「ゆ!とつじぇんよるしゃんになっちゃよ!」 

手から微かに洩れてくるのだが。さて、ゲームスタートだ。 
怪訝な顔をするれいむ達の前に向き直ると簡単なゲーム――正解が存在しないクイズをはじめる事にした。 

「この中の赤ん坊は生きてる?死んでる?どっちなのか当ててみて」 
「ゆゆっ!ばかだねおにいさんは!もちろんいきてるにきまってるよ!」 

摘み上げてる所から見ているれいむからすれば当然の答えだろう。 
しかし…… 

「残念!不正解!」 

手の中から出てきた赤れいむは平べったく潰れていた。 
これを生きているとするにはかなり無理がある、と言うか無理しかないだろう。 
れいむ達が愕然としている隙を突き、子まりさを掴んで手の中に隠す。 

「さあ次いってみよう!この手の中のまりさは生きてる?死んでる?どっち!?」 

何が起こったか漸く理解して叫び出した親れいむ。 
子供達は何が起こったのか未だに理解できないのだろう、地面に落ちた赤れいむの残骸を不思議そうに見ている。 
電柱の陰のまりさがこちらに飛び出してきたのが見えた。 

「なにじでるのぉぉぉぉ!!じじ「あまあまが欲しいんだろ!?早く答えろよ!!ほら!!」 

親まりさがようやく到着し、こちらに歯を剥いて寄ってきので、溝に蹴り飛ばしてご退場をしてもらった。 
ゆっくりが這い上がるには骨が折れる深さの上に水が溜まっている、しばらくすれば親まりさはこの世からおさらばするだろう。 

「ゆ゛ゆ゛っ゛……」 
「さあ早くッッ!!手の中のまりさは生きてるのかッ!?死んでるのかッ!?」 
「いきてるよ!そのなかのまりさはいきてるよ!」 

頭がパンク状態で何も考える余裕が無いままだったのだろう、さっきと同じ答えを返す。 
勿論、俺がする行動もさっきと同じ。 

ギュピッ! 
「またまた不正解だ!こんな簡単なクイズに正解できない馬鹿なゆっくりを親に持った子供は可哀想だなぁ!」 

手の中の残骸を道路にこそぎ落とすと親れいむをせせら笑う。 

「ばきゃれいむ!まりしゃのおかあしゃんなら、せいきゃいするのがとうじぇんでしょ!」 
「うっめ!これめっちゃうめ!」 

子供達の反応も面白いものだ。 
「親れいむが正解したらあまあまをくれる」程度しか理解できないのだろう、ただ感情のみで親を罵倒する赤まりさ。 
食ってるのが何なのか理解せずに死骸を貪る子れいむ。 
この子れいむを手の中にご招待しよう。 
食ってる所を途中で止めさせられたのが不満なのか罵倒をしてきたが。 
感触から探して口の部分を押さえてやるととその声も聞こえなくなった。 

「どんどん行くよ~!手の中のれいむは生きてるの!?死んでるの!?どっち!?」 

ただ口をパクパクさせてる親れいむ 
さて、どうするかと思って見ていると。 

「死んでる!そのおちびちゃんはしんでるよ!」 

溝から声と一緒に水に濡れた親まりさが飛んできた。 
子を思う一心で、ゆっくり離れした身体能力を見せた親まりさは、颯爽と俺の前に着地。 

「しんでるから!早くおちびちゃんをかえしてね!」 

ゲームの概要を理解したのか、ゆっくり離れした頭の良さだ。 
少し感心しながら、「生きている」子れいむを地面に落下させる。 
寸前で親まりさの滑り込みによって、地面への激突を回避したれいむ。 

「おそらとんでるみたい!」 
「おちびちゃ「あーあ残念だなおちびちゃん!そのまりさが間違ったせいであまあまを食べれないんだから!」 

親まりさが喋る前に割り込む。 
クイズの内容を1割(正解したらあまあまを貰えるだけ)程度しか理解してない子れいむは、その一言に当然。 

「ゆゆっ!?おとうさんはばかなの?しぬの?あたまがぷりんさんなの!!?」 
「なにいっでるのぉぉぉぉ!?ああしないと「まりさが居なかったらあまあまを貰えたかもしれないのに残念だなぁ!」 

親まりさに弁解の時間はやらない。 
とにかく、正解しなかった親まりさがどれだけ馬鹿で無能なのかを力説する。 

「ばか!しね!このくず!」 
「やめてね!おちびちゃん止めてね!」 

数分後。 
眼が釣りあがった子れいむと、親まりさの追いかけっこが始まっていた。 
我が子に体当たりされるのを嫌がる親まりさは段々と後ろに下がって行きその先は―― 

「ゆっ?」ボチャン 

又、溝に落ちた。 

「ゆきゃきゃ!れいむにあまあまをもってこなかったば「そぉい!」ぼちゃん! 
「今度は這い上がってはこれまい……」 

一匹で死ぬのは寂しかろうと子れいむを蹴って溝に落とした。 
これで満足したと、親れいむと赤まりさの方に向き直ると。 

「あんなこというこはおかあさんのこじゃないよ!しね!しね!しね!」 

ぺしゃんこ赤まりさの上でジャンプを繰り返す親れいむ。 
その眼はどう見ても正気ではない。 

「暇潰しに付き合ってくれてありがとな、せめて苦しまないように殺してやるわ」 
「しね!しね!ギュパァ」 

中枢餡を一瞬で殴り貫き親れいむを殺した。 
さすが俺と自画自賛してしまう腕前である。 
あとはこの残骸達を片付けるだけだと、俺はポケットに畳んだゴミ袋を広げて後始末の準備を始めた 

【おわり】