「とかいはかしら?」 

「おうち」の入り口で、くるりとゆっくりありすは回った。 
蜂蜜色の髪がふわりと舞い、陽光を跳ねて輝く。 
やわらかな金髪の中、白いフリルで飾られた赤のカチューシャが映える。 
もちもちの肌は若々しく、瞳は期待に満ちキラキラと輝いていた。 
もうじき成体となる子ゆっくりのありすは、野生にしてはかなりの美ゆっくりだった。 

そんな愛娘を、巣の中から親まりさと親ありすは感慨深げに見つめていた。微笑んでいる 
が、その瞳はどこか寂しさ、悲しさをたたえている。 

「ありす……きをつけてゆっくりしてきてね! あなたはありすじまんのとかいはなむす 
めなんだから、きっとだいじょうぶ……!」 

泣くのをこらえ、絞り出すような親ありすの言葉に、ありすは笑顔で返す。 
言葉には確かに愛情を感じた。それが嬉しかった。 
なにより、これからの事が楽しみで仕方がない。 
今日は、ありすが「おとな」として認められる記念すべき日。 
「成ゆん式」の日なのだ。 





ありすの成ゆん式 




「ゆっくりしていってね!」 

成ゆん式の会場は、群れ一番の大きな洞窟だ。その入り口でありすは挨拶を交わした。 

「きょうからまりさもおとなのなかまいりだぜ!」 
「れいむ、おとなになったらもっともっとゆっくりするんだよ!」 
「わかるよー、ゆっくりできるんだよー!」 

ゆっくりまりさ、れいむ、ちぇん。みんなありすの幼なじみだ。 
物心ついた頃からの大切な友達だ。そんな友達と今日こうして「成ゆん式」を迎えること 
ができるのが、ありすにはうれしくてたまらない。だが、 

「そ、そうね! でもとかいはなありすがいちばんのおとなになるのよ!」 

素直になれないありすは、ついそんなふうに言ってしまう。 
そんなありすのことを、幼なじみ達はみんなわかっている。 
だから、みんなで笑い合った。 
ありすは嬉しかった。大人になっても、みんなとゆっくりしよう――そう、心に決めた。 
ありすは幼なじみ達、このゆっくりとした群れも、みんなみんな大好きだったのだ。 
だから、大人の仲間入りができるこの「成ゆん式」が楽しみでたまらなかった。 

成ゆん式。 
この群れ特有の儀式で、群れが平和でゆっくりしているのはこの「成ゆん式」のおかげだ 
とどのゆっくりも思っている。 
「成ゆん式」は群れの子ゆっくりが成体ゆっくりになる頃に必ず受けるものだ。この「成 
ゆん式」を受けることで、群れの中で正式に「おとな」として認められることになる。 
「おとな」として認められたゆっくりは、誰もがみんなとてもおだやかで優しく、とても 
ゆっくりしている。中でも特別ゆっくりしているゆっくりは、別の場所に「たびだち」を 
し、他の群れにゆっくりを広めるとのことだった。 
ありすは仲間達と過ごしたいと思いながらも、「たびだち」でゆっくりを広めることにも 
憧れていた。 


「むきゅ! それでは『せいゆんしき』をはじめるわ!」 

四匹のゆっくり達は横並びに整列し、長パチュリーの言葉を聞いた。 
成ゆん式の会場は、天然の洞窟を利用したものだ。ホールのようなそこはとても広い。 
「成ゆん式」の会場にふさわしい、厳かでゆっくりした雰囲気だった。 

「むきゅ! おとなになって、もっともっとゆっくりしていってね!」 
「ゆっくりしていってね!」 

みんなしてゆっくりの挨拶を終えると、ありす達は一匹ずつ、長の側近れいむに連れられ 
ていった。 
ありすが案内されたのは洞窟の奥、わき水のあるところだ。 
このわき水は水不足の際、群れの最後の生命線とされている。そのため、普段は来ること 
を禁じられていた。ありすもゆっくりが数えられるほどしか来たことはない。 
洞窟のスキマから陽が挿し、キラキラと輝く水。「成ゆん式」の今日、それは一際神聖な 
ものに思えた。 

「おきよめだよ!」 

側近れいむ達に水をかけてもらい、ありすは身体を綺麗にした。もともと「成ゆん式」と 
いうことで身繕いには気をつかっていたが、わき水で身を清められるととてもサッパリし 
た。 
次に案内されたのは洞窟の一部屋。そこは天井が開いており、暖かな陽光が降りそそいで 
いる。陽の当たる場所には短い草が生えていた。 

「ここでゆっくりして、からだをかわかしてね!」 

陽光は暖かで、あんよの下の草は柔らかで心地いい。 
すばらしいゆっくりプレイスだった。 
ありすがゆっくりを楽しんでいると、他の幼なじみ達もやってきた。 

「ゆ~ん、『せいゆんしき』はとってもゆっくりできるのぜ~」 
「さっぱりしてぽかぽかで、ゆっくり~」 
「わかるよ~、ゆっくりだよ~」 
「なかなかとかいはだわ~」 

まりさ、れいむ、ちぇん、ありす。四人の幼なじみ達はそれぞれ存分にゆっくりした。 
やがて、十分に身体も乾いた頃、側近れいむ達がやってきた。 

「つぎは、ごはんだよ!」 

また洞窟の別室に案内される。 
そこには四匹のゆっくりのために豪華なごはんが用意されていた。 
イモムシ、綺麗なお花、野いちごにリンゴ。中でも目を引くのは見たことのないおいしそ 
うなキノコ。どれも滅多に口にすることのないごちそうの数々だった。 

「せきはきまってるよ! みんな、れいむのいうことをきいてきちんとせきについてね!」 

側近れいむに促され、みんなで席に着く。美味しそうなごはんを前に、まりさは早くもヨ 
ダレをたらしている。ありすも口の中がツバでいっぱいになったが、とかいはのたしなみ 
として口の外に漏らさないよう我慢した。 

「おしょくじがおわったら、『せいゆんしき』のとくべつなぎしきがあるよ! そのとき 
はありすがじゅようなやくめをするよ! みんな、こまったときは、ありすにたよってね!」 

側近れいむの突然の言葉に、ありすは驚いた。 

「あ、ありすがなにかするの?」 
「しんぱいしなくていいよ! ありすならちゃんとできることだよ! あとでおしえるか 
ら、いまはゆっくりむーしゃむしゃしてね!」 

いつの間にか重要らしい役目を割り当てられてしまい、ありすは戸惑う。だが、 

「さすがありすだぜ!」 
「すごいね! ありすはゆっくりしてるからだね!」 
「わかるよー! ありすはゆっっくりしてるんだよー!」 

仲間達の嬉しそうな言葉に、ありすはツンとすます。 

「とうぜんよ! ありすはとかいはだもの!」 

いつも通りのありすの言葉に、みんなは笑い合った。 
そんな若いゆっくり達を見て、側近れいむは頷く。そして、部屋から出ると、外から入口 
を塞いだ。入り口はひとうだけだったので、誰にも邪魔されることはない。 
残された四人は豪華な食事を楽しんだ。 

「このいもむしさん、まるまるしててとってもうまいんだぜ!」 
「のいちごさん♪ のいちごさん♪ とってもゆっくり~♪」 
「わかるよー! りんごさんはとってもゆっくりできるんだよー!」 

そんな楽しい時間の中でも、ありすはとかいはぶることを忘れない。 

「ありすのきのこさんは、とってもとかいはなきいろよ!」 

食事はどれも豪華で、四匹ともほぼ同じ内容だった。だが、キノコだけは違った。他の三 
匹のキノコは赤色だったが、ありすのだけ鮮やかな黄色だったのだ。 

「せっかくだからまりさはこのあかのきのこをえらぶんだぜ!」 
「れいむのあかいきのこさんも、とってもゆっくりしてるよ! ありすのきのこさんもゆ 
っくりしていておいしそうだね!」 
「わかるよー! めずらしいきのこさんはとってもゆっくりできるんだよー!」 

やがて、楽しい食事の時間も終わる。 
四匹は美味しくて栄養たっぷりのごはんでおなかいっぱいになり、ゆっくりとしだした。 
みんな満足だった。 
わき水でたっぷりできたし、おなかいっぱいおいしいごはんも食べることができた。「成 
ゆん式」はなんてゆっくりできるんだろう。 
そんな、ゆっくりしたときだった。 

「んっ、んっ、んっ……!」 

突然、まりさが震えだした。顔を俯かせ、その表情は帽子に隠れて伺えない。 

「まりさ、どうしたの……?」 

ありすが声をかけると、まりさは突然顔を上げありすを見た。 
まりさの顔は一変していた。 
垂れ下がった目は欲望の炎を宿し、下卑た笑う口元からはよだれが垂れている。全身はぬ 
めぬめとした粘液に包まれ、荒い息を忙しなく吐いていた。 
なにより、口の下からピンとそびえ立つぺにぺに。 
初めて見る、欲情したまりさの異様な姿だった。 

「あああ、ありすぅぅぅぅ!」 
「ま、まりさ!?」 

いきなりまりさはありすに飛びかかった。 
一般に、発情状態のゆっくりは身体能力が増す。もともとまりさはありすより狩りが得意 
で活発なゆっくりで、その上発情している。不意をつかれたありすには逃げようもない。 
あっという間にありすは押さえ込まれてしまった。 

「ど、どうしたのよまりさ!?」 
「ま、ま、まりさはむらむらしてしょうがないんだぜ! すっきりーさせてほしいんだぜ!」 
「な、なにをいっているのよ、まりさっ! すっきりーはずっとゆっくりするってやくそ 
くしてからするものでしょ!? こんなのとかいはじゃないわ!」 
「ありすは『じゅうようななやくめがある』っていってたぜ! きっとこのためなんだぜ!」 

ありすの拒否に関わらず、まりさはぺにぺにを突き立てようとしてくる。どうにか逃げよ 
うとするが、既に押さえ込まれて逃げられない。 

「れいむ、ちぇん、た、たすけて!」 

ついに、ありすは仲間に救いを求める。とかいはを自称するありすがこうして助けを求め 
るのは珍しいことだ。仲の良い二人のことだ、絶対に助けてくれる――ありすはそう確信 
した。 
だが。 

「あ、あ、ありすぅぅぅ! れいむもへんなのぉぉぉ! ありすですっきりーさせてほし 
いんだよぉぉぉぉ!」 
「わからないよー! ちぇんもぺにぺにがへんになっちゃったんだよぉぉぉ! ありすで 
すっきりーしたいんだよぉぉ!」 
「みんなどうしたのぉぉぉぉ!?」 

助けるどころか、既にありすの左右にいた二人は、まりさが押さえつけるのを手助けする 
ように身体を寄せてきた。 

「すーり、すーり! ありすのおはだ、とってもすべすべだよぉぉ!」 
「わかるよぉぉぉ! とってもゆっくりしてるんだよぉぉぉ!」 
「ふたりともやめてぇぇぇ! こんなのとかいはじゃっ……」 

ありすは最後まで言葉を続けられなかった。 
なぜなら、 

「んほぉぉぉぉ!」 

まりさのぺにぺにが、遂にありすのまむまむに突き立てられたのだ。 

「あ、あ、あ……!」 

ありすの意識が真っ白になる。 
だいじなまむまむだった。いつか、すてきなゆっくりとすっきりーするために、いつも綺 
麗にしていた。大事にしていた。 
それが、こんな望まない形で汚されてしまった。 
だが、ありすにはそんな感傷に浸る暇も与えられなかった。 

「んほ! んほ! んほぉぉぉ! ありすのまむまむ、さいこうのしめつけなんだぜぇぇ 
ぇ!」 
「いいよぉぉ! ありすのほっぺきもちいいよぉぉぉ!」 
「わかるよー! すーりすりきもちいいんだよぉぉぉ!」 

三匹からの三方からのれいぷに晒される。いくら嫌がろうと、ゆっくりの身体は単純にし 
て正直だ。やがてありす自身も気持ちよくなってしまう。 
そして、 

「すっきりーっ!」 

四匹は一斉にすっきりーした。どんなに拒否しても、あらがえないゆっくりの性質。あり 
すは産まれて初めて自分がゆっくりであることを呪った。 

「ああ、あかちゃんできちゃう……」 

ありすは複雑な思いだった。赤ちゃんは欲しかった。いつかとかいはな家族をつくって、 
みんなでゆっくりすることが夢だった。それが、こんな風にれいぷされ、誰の子かもわか 
らないゆっくりを宿すことになるなんて……。 
ところが、ありすからは茎も生えなければぽんぽんが膨らむこともなかった。にんっしん 
しないのだ。 
ありすがそんな不可解な現象に思いを巡らす間もなく、 

「つぎはれいむのぺにぺにをゆっくりさせてね!」 
「ゆぎぃっ!?」 

まりさに代わり、れいむがぺにぺにを突っ込んできた。 

「ありすとってもよかったんだぜぇぇ! おれいにまりさがちゅっちゅしてやるんだぜぇ 
ぇぇ!」 
「ゆぐぅぅ!?」 

ありすは「ふぁーすとちゅっちゅ」を奪われてしまった。「ふぁーすとちゅっちゅ」だっ 
たのに。それも、舌を絡ませた「でぃーぷちゅっちゅ」だ。口の中が蹂躙される感触は、 
憧れていた「ちゅっちゅ」とはほど遠い、おぞましいものだった。 

「わかるよー……わからないよー……わかるよー……」 

ちぇんは熱にうかされたようにありすの頬に身体を擦り続けている。 

「た、たすけてぇぇぇぇ!」 

助けを呼ぶが、誰も来ない。部屋の入口は閉ざされたまま、逃げ場もない。 
ありすの悪夢は、まだまだ続くようだった。 


    * 
    * 



気がつくと、ありすはわき水の部屋で身体を綺麗にしてもらっていた。 
ひどく気だるい。現実感がない。まだ悪夢のなかに居るようだったが、わき水の冷たく清 
涼な感触は現実のものだった。 
すっかり身体が綺麗になると、ありすは側近れいむ達に運ばれて再び最初の広場まで連れ 
てこられた。 
なにも考えることができなかった。なにもしたくなかった。 
その麻痺した感情と身体が覚醒したのは、連れてこられた幼なじみ達が連れてこられた時 
だった。 
みんな眼が合うと、すぐに逸らした。みんなあの狂乱を悔いているようだった。 
ありすの中では、怒りや憎しみより戸惑いが勝った。 
なぜ。どうして。あんなことになってしまったのか。 
その疑問が頂点に達したときだった。 

「むきゅ! みんな、『せつゆんしき』はぶじおわったわ! これでみんなりっぱな『お 
とな』のなかまいりよ!」 

みんなぎょっとなった。 
あのれいぷ。あれが、「成ゆん式」だったと言うのか。あんな、あんなことがっ……! 

「おさ! いったいどういうことなの!?」 

ありすは叫んだ。そんな気力も体力も残っていないと思っていたが、それでも声は出た。 
叫ばずに入られなかった。 
そんなありすを、長は冷ややかに見た。 

「むきゅ。ありす、あなたはれいぱーになるそしつがあるわ!」 
「ゆ!?」 
「だから、れいぷをたいけんしてもらったわ! れいぷされて、いやだったでしょう?  
あんなこと、だれかにしたいとおもう?」 

あのおぞましい記憶が甦る。苦しかった。気持ち悪かった。大好きな幼なじみ達にされた 
ことでも、れいぷはとてつもなく嫌なことだったのだ。 

「そのために、みんなにはれいぷしたくてたまらなくなる、とくべつなきのこをたべても 
らったのよ! あれはじぶんのいしでしたことではないわ! だからこのことはわすれな 
さい!」 
「そんなっ……!」 
「このむれのおとなは、みんなけいけんしていることよ!」 
「!」 

ありすは絶句した。 
そして思い出した。今朝、自分を送り出した両親のどこか悲しげな瞳。そして、母の言葉。 

「ありす……きをつけてゆっくりしてきてね! あなたはありすじまんのとかいはなむす 
めなんだから、きっとだいじょうぶ……!」 

このこと、だったのか。 

「それでは、こんかいの『せいゆんしき』はおわりよ! みんなはやくうちにかえって、 
ゆっくりしていってね!」 

長ぱちゅりーの終了宣言で、「成ゆん式」は終わった。 


「すまないんだぜ……まりさ、こうふんしてどうしようもなくなっちゃったんだぜ……」 
「ありす、ごめんね。れいむ、ゆっくりできなかったよ……」 
「わからないよー。なんであんなことしちゃったのかわらないんだよー。ありす、ごめん 
なさいだよぅ……」 

三人の幼なじみは、ありすの知るゆっくりに戻っていた。みんな悔いていた。自分を心配 
してくれていた。 
ありすは、 

「おさもいってたじゃない。あれはきのこのせいだって……だから、わすれましょう…… 
わすれてっ!」 

どうにかそれだけを口にし、逃げるようにおうちへと急いだ。 
みんなが悪くないことは、頭ではわかっていた。でも、身体が、あのおぞましい感触の記 
憶が、ありすを平静に保たせなかった。 

ようやくおうちにつくと、両親は笑顔で迎えてくれた。その瞳には涙をたたえて、それで 
も暖かくありすを迎えてくれた。 
ありすは両親の頬に飛び込んだ。激しくすーりすりした。赤ゆっくりを卒業し子ゆっくり 
になってから、こんな風に甘えることはなかった。とかいはは、そんな無様を晒さない― 
―そう心に決めていた。 
でも、ダメだった。今はとかいはで居られなかった。 
両親は黙ってそんなありすをやさしく受け止めてくれた。 
ありすは、泣いた。声もなく泣き続けた。 


翌日から、ありすには群れが違って見えた。 
ゆっくりした、平和な群れだ。それは変わらない。だが、違って見える。 
子供達は無邪気にゆっくりしている。 
だが、大人達はどこかゆっくりしていないように見えるのだ。何か餡子の奥に重たいモノ 
を抱えているように思えるのだ。 
ありすにはそれが理解できた。なぜなら、ありすは「成ゆん式」を終えたのだから。 

……これが、おとなになるということなのかしら…… 

ぼんやりと、ありすは理解した。 
今日は幼なじみ達とは会いたくなかった。でも、しばらくすれば前のように仲良くできる 
ようになるのだろう。だって村の大人達はみんな仲良しで、ゆっくりしているのだから。 


    * 
    * 



成ゆん式。 
元飼いゆっくりだったという長ぱちゅりーの考えた――人間が教えたという説もある―― 
システムは、効率的にれいぱーありすの芽を潰すことがも大きな目的だった。 
れいぱーありすは「愛を与える」と言ってゆっくりをれいぷする。だが、大人になる直前 
に「れいぷされた方はおぞましい嫌悪感しかない」と実体験させれば、これを防げる。 
稀に「成ゆん式」の最中にれいぱーとして覚醒するモノがあるが、それは処分される。 
また、他種のゆっくりでもれいぷを楽しむモノもいる。それもまた処分される。 
「成ゆん式」のれいぷは、除き穴で側近れいむが監視しているのだ。 
処分されたゆっくりは、群れには「たびだった」ものとして告げられる。同族殺しは禁忌 
であり、そのための方便だった。 
「成ゆん式」で使われるキノコは二種。黄色が非にんっしん効果と他のゆっくりを惹き付 
ける効果がある。赤色はゆっくりを性的に興奮させる効果がある。だから興奮してありす 
以外を襲うことはない。「成ゆん式」にありすが居ない場合も、ランダムにれいぷされる 
役が選ばれこの黄色いキノコが振る舞われる。 
れいぷ前には豪華な食事を摂らせるから、体力を使い果たし「永遠にゆっくり」してしま 
うことも稀だっった。 

また、この「成ゆん式」には副次的な効果もあった。 
「すっきりー」に対する抵抗感を刷り込めることだ。 
多くの群れで「すっきりー制限」を行い、失敗する。ゆっくりにとってすっきりーは気持 
ちにいいことで、その結果うまれる赤ゆっくりはとてもゆっくりできるものだからだ。 
だが、れいぷ経験は「すっきりー」をただ気持ちのいいものだとは思えなくさせるのだ。 
れいぷする方もされる方も、嫌な記憶として残る。ゆっくりは忘れやすいが、ゆっくりし 
た楽しいことや虐待などの極端に嫌なことは簡単には忘れない。「成ゆん式」は両方をみ 
たす。れいぷは身体的には気持ちのいい事で、精神的には嫌なことだ。 
だから、この群れの「すっきりー制限」は、うまくいった。 

れいぱーは発生しない。ゲスも排除される。そして「すっきりー制限」もうまく行く。 
群れはとてもゆっくりしており、普通の群れよりずっと長く存続した。 
だが、どの成体ゆっくりもどこかゆっくりしきれない不確かなものがあった。 

そして。 
ある日、群れはあっけなく崩壊した。 
突然の地震。震度は大したことなかったものの、長時間揺れ続けた。それによって、群れ 
のゆっくりは一斉に発情した。 
そして、ゆっくり達は何かのタガが外れた。いままで押さえられていた何かが解放され、 
そして狂乱の宴が始まった。誰もが誰もをかまわずれいぷし、次々に黒ずんで息絶えてい 
った。 
凄惨な災害だった。 
だが、それなのに。 
黒ずみ朽ち果てるゆっくり達の顔は、とてもゆっくりした満ち足りたモノだった。 

崩壊する群れを前にし、自身の命が突きようとする中、長ぱちゅりーは思う。 
ゆっくりが長生きするためには、ゆっくりすることを我慢しなくてはならない。 
本当にゆっくりできるのは、その命が尽きる直前だけなのかもしれない、と。 
自分は正しかったのか。間違っていたのか。 
最後まで悔い、悩みながら、長ぱちゅりーは永遠にゆっくりした。 


【おわり】