「ゆんやあ! ゆんやあ! ゆんやあああ!」 
「ゆうう……」

泣き続ける子れいむを前に、成体れいむは眉をひそめている。 
それは子れいむを憐れむと言うより、状況に困惑していると言った顔だ。
※キリライターあきさんの常時泣きゆっくりの絵に触発されて書きました 
※独自設定垂れ流し



「おい、ゆっくり。そいつを泣きやますことができたら命を助けてやるし、好きなだけあ 
まあまをくれてやる」

ゆ、とれいむは俺を見つめる。ちょっと前まで絶望にくすんでいた瞳の奥に、希望の光が 
灯る。 
おもしろくなったと俺はほくそ笑んだ。

「お前、子育てが上手とか言ってただろ? 簡単なことだ。なあ?」

俺の挑発的な言葉に、れいむは力強く頷く。 
あがくゆっくりというのはいい。特に、できもしないことに挑戦し、無力にあがくのなら 
なおさらだ。

泣きゆっくり。 
最近のゆっくりの品種改良――いや、品種改造によって生まれた変わり種だ。 
その特徴は名前の通り「泣くこと」。それも、生まれてから死ぬまでずっと泣きっぱなし 
だ。泣きやむことはあり得ない。 
ゆっくりの虐待と言えば、いかに泣かせるかが肝。 
俺も最初、こんなゆっくりは使い道がないと思っていた。眺めるだけで満足というぬるい 
じめ好きも居るが、俺には正直理解できないでいた。 
だが、バカとハサミは使いようだ。

「ほら! ゆっくりできるおうただよ! ゆ~ゆ~ゆ~、ゆっくりしていってね~♪」 
「ゆんやあ! ゆんやあ!」

子れいむはゆっくりショップで買ってきたものだが、成体れいむの方は適当につかまえた 
野良だ。ツガイのまりさもいたが、そっちは既になぶり殺した。じわじわと死に近づくま 
りさを前に泣き叫ぶれいむはなかなか楽しい見せ物だった。 
だが、その後が良くない。 
れいむはふさぎこんでいじめ甲斐がなくなってしまったのだ。なにをやってもイマイチ反 
応が薄い。絶望が感覚を鈍くしてしまっているようだった。 
そこで思いついた。さらなる絶望を与えるにはわずかな希望を与えてやればいい。 
れいむ種というものは一般に母性が強く、子育てが上手いと自負する。それを利用しない 
手はない。

「どこかいたいの? ぺーろぺーろしてあげるよ!」 
「ゆえぇぇぇん! ちがうよぉぉぉ! ゆえぇん! ゆぇえん! ゆぇぇぇぇぇん!」 
「ゆうう……」

先ほどかられいむは様々な手を尽くして子れいむをあやしている。 
だが、それは無駄なのだ。泣くことを定められた泣きゆっくりは、生きている限り外部か 
らの刺激で泣きやむことはない。この悲しみを終わらせる手段は、せいぜい慈悲深い死を 
与えることぐらいだ。

「どうした? おまえ、子育てが上手だったんじゃないのか?」 
「ゆうう……」 
「お前、子持ちだったのか?」 
「……あかちゃんは、いなかったよ……」

ツガイのまりさのことを思い出したのだろう。 
子ゆっくりをあやすのに必死で悲しみを忘れていたようだが、暗い影がさす。いい顔だ。

「でも! このおちびちゃんは、ぜったいゆっくりさせてあげるよ!」

悲しみから一転、決意に満ちた目を輝かせる。 
れいむはもう自分の命を守ることより、目の前の泣きわめく子ゆっくりを笑わせてやるこ 
とのほうが大事になったようだ。 
なかなかの良ゆっくりだ。ツガイのまりさを早く潰しすぎたな。もっとやり方を考えて、 
こいつをいじった方が面白かったかも知れない。もったいない。 
まあ、過ぎたことを気にしても仕方ない。今できることをやり、そして楽しもう。

「そう言うならとっととゆっくりさせてやるんだな。ほら、また泣き声が大きくなった」 
「ゆんやああ! ゆんやああ!」 
「ゆうう!? ごめんねおちびちゃん! ほら、すーりすりしてあげるよ! すーり!  
すーり!」

泣きわめく子れいむに必死にいろいろ試みるれいむはまさに親の鑑といった感じだ。 
それを適当に煽りながら小一時間ほど楽しんだ。 
が、飽きた。 
なにより子れいむの泣き声が耳障りだ。こいつ、本当に売り物になるのかね。いや、買っ 
たけど。 
時間もだいぶ遅くなったし、今日はもういいか。

「俺はもう寝る。明日の朝までにそいつを泣きやませておけ。そうしたら命を助けてやる 
し、あまあまもくれてやる。ただし……泣きやんでなかったら、お前も子れいむも潰す。 
子れいむから潰してやるよ。まりさみたいに、な」 
「ゆうう! やめてね! かわいそうなことしないでね!」 
「そう思うならしっかりあやすことだな」 
「ゆ! ゆっくりりかいしたよ!」

ま、どう頑張ろうと無理なわけだが。 
俺はあくび混じりに、れいむ達を残して寝室に向かうのだった。

× 
× 
×

そして、翌朝。俺は信じられないものを見た。

「ゆぅぅ……ゆぅぅ……」 
「ゆー……すぴー」

虐待部屋には身を寄せ合いのんきに眠るれいむと子れいむの姿があった。 
子れいむには泣いた跡こそあったものの、今現在涙は流れていない。バカな、商品説明で 
は泣きれいむは泣きながら眠るはずなのに……!

「ゆ……おにいさん! れいむ、おちびちゃんをなきやませたよ!」

呆然とする俺に気づいたのか、れいむは目を覚ますと挨拶してきた。 
続いて、子れいむの方も目を覚ます。

「ゆ! おはよー、おかーしゃん!」 
「おはようおちびちゃん! ゆっくりしていってね!」 
「ゆっくりしていっちぇね!」

そう言ってすーりすりするゆっくり。普段なら虐待意欲がマックスになる光景だったが、 
今はそれどころじゃない。いったいどうやって……? 
疑問を解消するべく、子れいむの方に手を伸ばした。 
すると、

「やめてね! いたいことしないでね!」

ああ、こいつは俺がまりさをいたぶるのをずっと見ていた。警戒するのもわかる。

「痛いことはしない。約束は守るさ。ただ、ちょっと確認したいんだ」

子れいむを手に取る。ショップでの購入時、泣きゆっくりはリボンに印がつけられる。そ 
れを確認したが、間違いない。別のゆっくりに入れ替わったわけではないようだった。 
そもそもこの部屋の扉は閉じられていた。鍵はかけていなかったが、ゆっくりにとっては 
間違いなく密室だったのだ。 
しかし泣きゆっくりが泣きやむとは。ゆっくりごときがいったいどんなことをしたのか。 
それともこの泣きゆっくりが不良品だったのか……。 
そして、子れいむを調べるうちに、俺はようやく子れいむが泣かない理由に気がついた。 
俺は泣きれいむをれいむの元に戻すと、問いかけた。

「なあ……お前は、そいつをこれからもちゃんと育てるつもりか?」 
「ゆ! れいむはおかーさんになってあげるよ! おちびちゃんも、いいよね!」 
「おかーしゃんはおかーしゃんだよ! れいみゅずっといっしょにいちゃいよ!」

そして身をすり寄せ合う二匹。その様は、仲睦まじいゆっくりの親子そのものだった。

「……これは一本取られた。お前らは自由にしてやるよ。それから、ああ……あまあまを 
やる約束だったな。ちょっと待ってろ」 
「ゆ! ゆっくりまつよ!」

そして、俺は部屋を後にした。 
俺は本当にあのれいむ達にあまあまを与え、自由にしてやるつもりだった。 
ゆっくり相手とは言え、約束は約束。俺も男だ。守ってやる。 
それに、正直言えば感心したのだ。俺にはあんなマネはできない。

子れいむはずっと目を閉じていた。 
閉じた瞼の下は真っ黒な餡子しかなかった。

れいむは子れいむの目を抉り、涙を流す機能そのものを破壊したのだ。 
だから、泣きやまないはずの泣きゆっくりが泣きやんだのだ。

そこまでなら俺だってできる。問題はその先だ。 
れいむはそんな残酷な仕打ちをしながら、子れいむを納得させ、しかも親子の関係まで築 
いた。 
そこまでやられたら、虐待趣味の俺だって、逃がしてもいいか、という気にもなろうとい 
うものだ。

【おわり】

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絵:キリライターあき