れいみゅは可愛いお目々を大きく見開いて大きい声で言いました。
「ゆっくちちていっちぇねぇ」
 お返事はありません。れいみゅのご挨拶に喜んで答えてくれる筈のお父さんの声もお母さんの声もしないのです。
慌ててれいみゅは周りを見回します。れいみゅが見える範囲にはお父さんもお母さんもいません。いるのは自分と同じ生まれたばかりの赤ゆのれいみゅの二匹だけです。そのうちぷるぷる震えてれいみゅが大きな声でご挨拶。
「ゆっくちちていっちぇねぇ」
「ゆっくちちていっちぇねぇ」
 れいみゅのご挨拶にれいみゅが大きな声で答えます。生まれた時のご挨拶にお返事がないのはとっても辛いですからね。れいみゅとれいみゅが顔を見合わせます。お互いの顔を見た途端お互いに餡子がつながっている事を確信しました。絶対にお母さんとお父さんは一緒です。だから二ゆは姉妹なのです。
「ゆっくちちていっちぇねぇ」
 もう1ゆのれいみゅの挨拶にれいみゅとれいみゅが声を揃えてお返事をします。お父さんとお母さんはいないけれど三姉妹、いいえ後2ゆんもいるのです。全部で5ゆん。全ゆれいみゅのれいみゅ姉妹です。こんなに可愛らしくて美ゆんの5姉妹を作ったお父さんとお母さんは何処にいるのでしょう?
 5ゆんが見回してもお父さんもお母さんも見つかりません。その代わりとっても幸せなあまあまの臭いに気がつきました。
「ゆっち、ゆっち」
「ゆっち、ゆっち」
 5ゆんが同時にあまあまの方向に転がるように動き始めます。足元は固くて動き辛いですがあまあまの誘惑には勝てないのです。
 5ゆんは同時にあまあまに辿り着きました。それはれいみゅが見上げる程大きい茶色の塊でした。大きな塊。でもあまあまの臭いがするのです。1ゆのれいみゅが恐る恐る舌を伸ばして塊を舐めます。
「ち、ち、ち、ちあわちぇ~」
 うれしーしーをまき散らしてれいみゅが叫びます。こんなあまあまが世界に存在するなんて。そのれいみゅの叫び声を聞いて残りの4ゆも塊を舐めます。
「ちあわちぇ~」
 全部で5ゆのれいみゅがうれしーしーをまき散らしながら塊を舐めていきます。塊は塊ではなく湿った粉を山状に盛った物でした。ですかられいみゅ達が舐めるとどんどんと削れていきます。とはいえ見上げる程の山を築く程盛られていますから5ゆんが貪りむーしゃむーしゃしても無くなる事はありませんでした。
 生まれて初めて食べる食べ物がうれしーしーをまき散らす程のあまあま。という大幸運の元に生まれた5ゆんのれいみゅ達が山を食べるのを辞めたのはもう一ゆで動く事が出来なくなる程丸々と膨らむ程茶色い山を食べた後でした。
「うんうんするよ」
 お腹一杯食べたれいみゅの1ゆが叫び仰向けに寝転んであなるさんを天に向けます。その声で他の4ゆも同じようにうんうんコールをしながらあなるさんを天に向けます。生まれて初めての少し水っぽいうんうんは床に落ちると同時に消えていきます。
 お父さんとお母さんはいないけれども食べきれない程のあまあまさん。すぐに消えるうんうん。こんな素敵な場所にいるのは自分達が選ばれたゆっくりだから。自分達はアイドルゆっくり、いいえプリンセスれいみゅに違いない。5ゆんはそう確信しながら心地よい眠りについたのでした。


 「うんうんさんでちぇ~ いじわるしないででちぇ~」
 喚きながられいみゅがひっぷさんを振ってもれいみゅのあなるさんからはうんうんは出てきそうもありません。他のれいみゅは何とかかちかちになった小さい塊のうんうんさんをあなるさんから出しますがそれ以上出てくる事はありません。
 れいみゅ達は生まれて2日目でうんうんどころかしーしーもなみださんも出なくなっていました。ですからうんうんが出ないと、ぽんぽんが苦しいところころと転がりながら鳴き喚いても床は濡れる事はありませんでした。ころころ転がったお陰でお腹が動いてうんうんが出来てうんうんをしようと思っても、とっても固いうんうんはれいみゅ達のあなるさんを内側から痛めつけるのでどうしても少ししかでないのです。
「うんうんさんでちぇ、いじわるしないでぇ」
 お腹の中のうんうんにれいみゅはお願いする事しか出来ませんでした。


 れいみゅは茶色い山のそばで天井を見上げて転がっていました。もう茶色の山を食べる事は出来ません。あまあまの臭い。舐めて口の中に入れたのにあまあまなのにむーしゃむーしゃした後にごっくんが出来ないのです。なんでごっくんが出来ないのか判らないれいみゅは何度も何度もむーしゃむーしゃして、むーしゃむーしゃしているうちに、むーしゃむーしゃすら出来なくなったのです。
 うれしーしーをする程美味しい美味しいあまあまさんの山。その横でれいみゅは動けなくなっていました。お腹は大きく膨らんだままかちかちに固まっています。しーしーも涙も出ません。選ばれたゆっくりなのに、プリンセスれいみゅなのに。



 れいむがお姉さんに因縁を付けたのは何時の事だったでしょう。自分には似ていない碌でなしのまりさに似たおちびちゃん、それも足りないおちびちゃんをお姉さんの足元に突き飛ばし、そのおちびちゃんを蹴ってお姉さんにれいむはこう叫んだのです。
「おねえさんのせいでおちびちゃんはたりなくなったよ」
「おちびちゃんをもとにもどしてね、できないならべんしょーしてね」
「いっしゃりょうをせいきゅうするよ」
 お姉さんはそんなれいむを無視して蹴ってしまった足りないまりちゃを拾い上げると手の平の上でころころと転がします。
 野良ゆっくりの足りないおちびちゃんは栄養不足のせいで生まれる事が多いので生まれつき身体が弱い物がほとんどでした。ですから足に当たった衝撃で死んでしまう事もあります。ありがたい事にお姉さんの足に当たった足りないまりちゃは明らかな傷はありませんでした。
「れいむをかいゆっくりにしてね」
 黙って足りないまりちゃの怪我を確認していたおねえさんにれいむが宣言します。
「あまあまをたくさんたべさせてね。おなかいっぱいでいいよ」
「おちびちゃんをたくさんつくるよ」
「おちびちゃんにもあまあまをたべさせてね、たくさんでいいよ」
 そこまで宣言した時、お姉さんの手が何かを弾きました。弾かれた物は狙い違わず麗美の大きく開いたお口の中に入りました。
「これうめぇ」
 人間のあまあま。口に飛び込んだそれを飲み込んだれいむを見てから全く同じタブレットをお姉さんはいくつか地面に投げ、れいむはそれに飛びつき貪り食べます。
「うんめぇ、うんめぇ」
 そしてそのまま眠ってしまいました。


  れいむが目を覚ました場所は透明な箱の中でした。成体ゆっくりがすっぽり入る、多少身動きはとれますが動き回る事は出来ない、加工所が来るまで入れておくあのタイプです。頬にホースの通る穴を開けられてホースが1本入っています。そのお陰で振り返る事は出来ませんが全く痛くはありません。れいむが見る事が出来るのは正面の壁と天井。そして少し下にある透明な箱と自分の額に生えた枝とそれに生っているおちびちゃん。
 3つあるおちびちゃんは全部がれいむに似たとっても綺麗で可愛いゆっくりとしたおちびちゃん達です。何があったのか判らないれいむが叫ぼうとした時に片方のホースからあまあまが流れ込んできたのです。正確には押し込まれてきた、でしょうか。ゆっくりフードそれなり味を粉末にして野良ゆっくりが幸せを感じる最低の濃度の甘さの砂糖水でペーストにした物。それをお姉さんがれいむに見えないようれいむの真後ろからホースの先から押し込んでいたのです。
「し、し、しあわせー」
 口の中に広がるあまあまにれいむが叫びます。口の中に入ってい来るペーストを全て飲み込んでいきます。幾らでもどれまでも。お姉さんが注入を辞めたのはれいむの下半身が肥大し透明な箱みちみちになってからでした。その後に流し込まれる薄めたオレンジジュース。
 身動きがとれない事。いつの間にかおちびちゃんが出来ている事。そんな事はれいむにとっては些末な出来事になりました。お腹一杯のあまあま、可愛いおちびちゃん。それだけでれいむは充分幸せだったのです。うんうんもしーしーもその場で垂れ流しです。れいむは知らなかったのですが、れいむのあなるの下にはうんうんが落ちる程度の穴が、床は網になっていてしーしーや涎、涙も全て下に落ちるようになっていたのでした。
 初めの数日はれいむはこの幸運を喜んでいました。動かなくてもあまあまはお腹一杯食べられる。動かなくてもうんうんやしーしーの後片付けをして貰える。可愛いおちびちゃんはどんどん大きくなっていく。おちびちゃんが生まれたらすぐにすーりすーりしてあげよう。一緒にむーしゃむーしゃして「しあわせ~」と叫ぼう。そんな妄想に浸っていたのです。
 おちびちゃんは生まれるまで一度も起きませんでした。万が一起きると困るのでお姉さんが毎朝毎晩おちびちゃん達にラムネスプレーを吹きかけていた事もれいむは知りませんでした。おちびちゃんが初めて起きたのは生まれてすぐ下の箱に落ちた時です。おちびちゃん達は誰も怪我をしませんでした。れいむは知りませんでしたがおちびちゃん達の箱の底はシリコンの網で出来ていたので柔らかかったのです。
 生まれ落ちた3ゆのれいみゅ達は声を揃えて「ゆっくりちていっちぇねぇ」と叫びました。その声を聞いてれいむの餡子は奥の奥から温かくなり涙が流れてきたのです。そしてそれに続く「ちあわちぇ~」の合唱。うれしーしーを流しながら茶色の山を食べるれいみゅ達を見てれいむはその茶色の山が自分が食べている物と同じ物だと判りました。食べるたびに「しあわせ~」と叫んでしまうあまあまをおちびちゃん達が食べている。あれだけの量があったらおちびちゃん達全ゆがお腹一杯に食べても余る。動かなくてもお腹一杯あまあまが食べられる。動かなくてもうんうんやしーしーの片付けをして貰える。動かなくてもおちびちゃんにあまあまを食べさせる事が出来る。自分は選ばれたゆっくり、クイーンれいむに違いない。
 そんな妄想が砕かれたのは3日も掛かりませんでした。下の箱にいたおちびちゃんが3ゆとも死んでしまったからです。うんうんが出ないから。あなるを舐めて貰えなかったおちびちゃん達はうんうんが出なくて死んでしまったのです。れいむは鳴きました、涙が涸れる程鳴きました。鳴いて鳴いてそのまま眠って目が覚めたら額から枝が生えていました。おちびちゃんが4つ生っていました。
 れいむは意味が判りませんでした。それでも今度こそ、と思いました。だから枝に生っている時からうんうん体操の歌を歌い続けました。お歌が好きなれいむだから出来た技です。ただおちびちゃんはラムネスプレーでぐっすり眠っていました。
 おちびちゃん達が生まれてもれいむはうんうん体操を歌いました。餡子の記憶でうんうん体操を覚えていた1ゆは天から聞こえるうんうん体操の歌に合わせて一生懸命うんうん体操をしました。だから他の2ゆんよりちょっとだけ長生きしました。れいむは知らなかったのです。身体の中の水分が足りなくなるとうんうんが固くなって自力で出せなくなる。もっと少なくなると唾が出なくなって物が飲み込めなくなり、涙が出なくなって目が乾いて痛くなる。そして動けなくなって死んでしまう事を。
 おちびちゃんが死んだ翌日には新しい枝がれいむの額に生えていました。何度も何度も生えていました。辛くて辛くてご飯を食べずに死のうと思っても口の中にペーストが入ってくると「しあわせ~」とごっくんしてしまいます。それでもごっくんしないでため込んでいても、オレンジジュースが流れてきてしまいます。「おたべなさい」をしようと思っても相手がいないし、そう思った時にはれいむはだらしなく肥え太り透明な箱にみちみちに詰まっていて上手く口は動かせませんでしたし、割れる席はなかったのですが。
 今、れいむは透明な箱の形にみちみちに詰まって何が何だか判らない、透明な箱から付きだしている枝でようやくゆっくりかも知れないと推測されるそんな物に成り下がっていたのでした。


 「ゆっくりちていっちぇねぇ」
 「ゆっくりちていっちぇねぇ」
 れいみゅ達がご挨拶をした後にシリコンの網の上をゆっちゆっちと転がるようにあまあまに向かっていきます。「おちびちゃんにあまあまをたべさせてね、たくさんでいいよ」母のお願いのお陰で。


おわり