ドスの飾りは不名誉の証 

とある群が住んでいる巨大洞窟。 
「こんなところにたくさんのあまあまがあるんだどー」 
「きょうはここででぃなーにするどー」 
「ちっちゃいのはおちびちゃんのおみやげにするんだどー」 
そこに、普段ならば聞こえない声が響いていた。 

「れ!れ!れ!れみりゃだぁぁぁぁぁ!!!」 
「どぼじでれみりゃがここにいるのぜぇぇぇぇぇ!?」 
突然の緊急事態に、群のゆっくり達は大騒ぎである。 
逃げまどうゆっくり達。 
しかし、捕食者はそんな彼女達を主食に生活しているのだから、当然、逃げられるはずがない。 
たった三匹のれみりゃに、洞窟内のゆっくり達の全体の1/4、 
およそ20匹をたちどころに食べられてしまった。 
さらに、「おちびちゃんのおみやげ」として、れみりゃ達の両手には、 
それぞれ一匹ずつ、計六匹の子ゆっくり、赤ゆっくりが捕えられている。 
「れいむのおちびちゃんがぁぁぁぁぁ!」 
「ばりざぁぁぁぁぁ!!!ゆっくりしすぎだよぉ!?目をあけてよぉぉぉぉぉ!!!」 
「みはりのめーりんはどぼじだのぉぉぉぉぉ!?」 
本来、この洞窟の入口には見張りのめーりんがいて、危険があった場合は、 
その独特の泣き声を洞窟内に響かせて、それを知らせるはずなのだが。 
肝心のめーりんは、激務に耐えられず、居眠りをしてしまっていた。 
れみりゃはめーりんを食べることはしない。中身が辛いからだ。 
だから、彼女達はめーりんの横を静かに素通りし、見張りに気づかれずに進入することに成功した。 
この洞窟は、出入り口が一つしかないので、そこさえ守れば、あらゆる危険から逃れることができる。 
しかし、逆にいえば、危険が入ってきた場合、逃げる道がないのである。 
「みんなどうしたの……何でれみりゃがここにいるのぉぉぉぉぉ!?」 
そんな中、ようやく群のリーダー、ドスまりさがやって来た。 
彼女は普段一日のほとんどを、洞窟の奥の自分の部屋で過ごしており、見張りめーりんの鳴き声を聞くと、 
それがどんなに微かであっても、外に出ることができるようになっていた。 
ドスの移動速度は意外に速い。 
見張りがしっかり機能していれば、すぐに駆けつけることができるのだが、今回の場合は出遅れてしまい、 
群に壊滅的な被害を与えてしまった。 
「ゆっくりできないれみりゃは、ゆっくりしないで死んでね!たいあたり!」 
れみりゃ達の手に捕えられている子・赤ゆっくりを助けるために、まずは彼女達に体当たりを食らわせた。 
不意打ちに対処できず、れみりゃ達は吹っ飛ばされ、持っていたゆっくり達を手放した。 
「おちびちゃぁぁぁぁぁん!よかったよぉぉぉぉぉ!!!」 
「おかーさーん!こわかったよぉぉぉぉぉ!!!」 
感動の再会。 
子供達を助けられたので、ドスはれみりゃ達にとどめのドススパークを当てた。 
さすがの捕食種も、これには耐えられない。三匹とも燃えカスになった。 

次の日。 
ドスの部屋に、群のゆっくりがみんな集まっていた。 
彼女達は、口にゆっくりの飾りを咥えている。 
昨日、れみりゃに殺されたゆっくり達の飾りである。 
「じゃあ、次はれいむ来てね」 
ドスが重々しい口調で言った。 
呼ばれたれいむが一匹、ドスの前に跳ねてきた。 
「れいむのおちびちゃんは、ドスがたすけにくるのがおそかったから、れみりゃにあんこをすすられて、 
えいえんにゆっくりしちゃったよ。ドスのせいだよ」 
そう言うと、れいむはドスの背後にまわり、ドスの後ろ髪に、自分の死んだ子供のリボンをくっつけた。 
「次、まりさ」 
ドスがそう言うと、今度はさっきのれいむの隣にいたまりさが、ドスの目の前まで跳ねてきた。 
「まりさのおとーさんは、ドスがたすけにきてくれなかったから、れみりゃのおててにつぶされて、 
えいえんにゆっくりしちゃったよ、せきにんとってね」 
そう言うと、まりさはドスの背後にまわり、ドスの後ろ髪に、自分の父親の帽子に付いていたリボンをくっつけた。 
このようなことを、やって来たゆっくり達が咥えて持ってきた飾りが、全てドスの髪に付けられるまで続けられた。 

ドスはみんなが部屋から自分の巣へ帰った後、深いため息をついた。 
「また、髪が重くなっちゃったよ……」 
この群には独特の風習がある。 
群のゆっくりが、災害や、昨日のような捕食種の侵入で死んだ場合、その死臭の付いた飾りを、 
ドスの後ろ髪にくっ付けるのである。 
そして、その飾りを付ける時、群のゆっくり達は、このゆっくりはドスの不手際で死んだのだと、罵倒する。 
決して、ドスだけが悪いわけではない。群のみんなが悪いのだが、ドスのせいだと押しつけることで、 
遺族が少しでも悲しまないようにしているのだ。 
だから、その罵倒も、本心から言っているわけではない。たまに、本気でドスを非難するゆっくりもいるのだが。 
しかし、ドスは忙しい。こういった事でいちいち落ち込んだり、気が沈んだりしていては、群を維持することはできない。 
新しい見張りを選ばないといけないし(居眠りしていためーりんは、責任を感じて、舌を噛み切って自害した)、 
群の個体数調整ももう一度練り直さないといけない。 
れみりゃに捕えられたり、目の前で身内や友人を殺されたゆっくり達のPTSDのカウンセリングもやらないといけない。 
あと、備蓄食糧の消費が、個体数の激減により減ってしまい、このまま残しておくと、腐ってしまう。 
だから、優先的に備蓄食料を消費していかないといけない。 
ドスは忙しい。 

ゆっくりはすぐ死ぬ。 
「ドスぅぅぅぅぅ!!!れいむのおちびちゃんが、あんよにあなをあけてしんじゃったぁぁぁぁぁ!!!」 
「ゆぅぅ……だからあれだけ小石さんには気をつけろって言ったでしょぉ……」 
飾りが増える。 
「ゆけけけけけ……おぢびじゃん……あまあまぁぁぁぁぁ……ゆきゃきゃ!」 
「何で共食いするのぉ!?」 
飾りが増える。 
「ドス!かくちょう工事ちゅうにいわがおちてきて、さぎょうゆっくりが死んじゃったよ!」 
「ほきょうに手を抜くなってあれほど言ったでしょぉ!?」 
飾りが増える。 
飾りが増えるごとに、少しずつ、髪が重くなっていき、ゆっくりの死臭が濃くなっていく。 

「もう、このドスとはゆっくりできないよ!やくたたずのドスはゆっくりしないででていってね!」 
「そーだそーだ!ゆっくりをたくさん死なせるぐずのドスはさっさとでていくんだぜ!」 
今のリーダードスが就任してから半年後、群のゆっくり達が、ドスの部屋の前に押し寄せ、抗議を始めた。 
不注意でゆっくりをたくさん死なせるドスは役立たずだ。これでは自分達が全滅しかねない。冗談じゃない。 
いや、ひょっとしたら、事故に見せかけて、気に入らないゆっくりを殺しているのかもしれない。 
等々、根も葉もない噂が群中を駆け巡り、ドスを群から追放しようという動きが出たのである。 
普通だったら、いくらこの噂が本当だとしても、さすがに実力差がありすぎるので、どうしても我慢できない場合は、 
自分達が出て行くという方向で落ち着くのだが、何故、ドスを追い出すという無謀な行動に出たのだろうか。 
それは、ドスに付けられた死ゆっくりの飾りのせいである。 
ゆっくりは死にやすいので、すぐに後ろ髪の飾りは増えてしまう。 
そこから発せられる死臭が、ドスのゆっくりオーラで誤魔化せる範囲を超えてしまったのだ。 
結果的に、ドスはこの洞窟から出て行くことになった。 
このドスは心優しく、自分が出て行って問題が解決するのなら、そうした方が良いのだろうと思ったのだ。 
ドスは群のゆっくり達の今後を心配しながら、彼女達の罵倒を背中に受け、山の奥へと跳ねて行った。 

「ゆ!これでじゃまでゆっくりできないくずでやくたたずののろまはきえたよ!」 
「じゃまものがいなくなったから、とかいはなすっきりをしましょうね!」 
「どうせドスはへやの中にごはんをかくしてるんだぜ?さがしてむーしゃむーしゃするのぜ!」 
群のゆっくり達は、今までドスに抑えつけられていた分、好き勝手にゆっくりし始めた。 

一週間後。 
「どぼじでごはんがなくなってるのぉぉぉぉぉ!?」 
「でいぶのおうちがくずれちゃったぁぁぁぁぁ!中にまだおちびちゃんがいるのにぃぃぃぃぃ!!!」 
「ばりざどぼしでおぢびじゃん食べちゃうのぉぉぉぉぉ!? 
ゆ!こっちにごないでね?だれかぁぁぁぁぁ!たずげっ……」 
ゆっくりはすぐ死ぬ。普段だったら、ドスに報告に行って、対策を練ってもらうのだが、もうここにはドスはいない。 
さらに、 
「うー!ここにはあまあまがたくさんあるどー」 
「ちびのあまあまはおちびちゃんのおみやげにするんだどー」 
れみりゃの侵入である。 
「じゃ、じゃおぉぉぉぉぉ!!!」 
今回は見張りのめーりん(後任)が居眠りをしていなかったので、入り口に来た時点で、巣の中へ危険を知らせた。 
「れ、れみりゃだぁぁぁぁぁ!!!」 
「れみりゃいやぁぁぁぁぁ!!!食べられたくないぃぃぃぃぃ!!!」 
いくら見張りが知らせても、洞窟内のゆっくりは慌てふためくだけで、逃げようとしない。 
侵入したれみりゃはたった二匹なのに、ただ蹂躙され、潰されていった。 
「ドスぅぅぅぅぅ!!!たすけてぇぇぇぇぇ!!!」 
「むてきのドススパークでなんとかしてくださいよぉーーーー!!!」 
「どぼじでドスきてくれないのぉぉぉぉぉ!?このやくたたずぅぅぅぅぅ!!!」 
自分達で追い出したことを棚に上げて、彼女達はドスに助けを求めた。 
当然、ドスはもういないので、助けに来るわけがない。 
洞窟内のゆっくりは、みんな等しく絶望の表情を浮かべ、れみりゃに殺されていった。 

【おわり】