ゆっくりの一方通行の入り口がある。と、興奮して電話口で語られた。熱く熱く語られた。連日語られた。答えを出さない限り更に熱く語られそうなので、それがとても面倒なのでそれが語る一方通行の入り口がある場所に赴いてみる。


 壁は地面に埋め込まれている防音壁。一方通行の入り口ではない。以前に出入りは不可能だろう。なので壁に沿って歩いてみる。

 人間用の出入り口、観音開きの大きな門。門扉の下の隙間は成体ゆっくりが悠々と通れる隙間がある。隙間があるがその隙間に金網が張ってある。

 しゃがんで見る。鳥小屋に使われる細かい金網。細い木棒で四方を囲まれている。網? 手作り感満々なこれが隙間無く何枚か門扉の下に張られている。

 その枠金網を蹴ってみる。内側に折れる。戻る。門扉に蝶番がついているらしい。外から内側にしか動かない様になっている。

 余りに単純。余りに簡単。余りに安価。ゆっくりにも簡単に開けられる安価な軽い素材で作られたゆっくり用の出入り口は蝶番で内側にしか動かない。

 安価だからこそ出来る単純で絶対的な弁。外から内には開くけれど、内から外には開かない。

 過去にもしかしたら賢い個体がいて、外に出ようと体当たりした事があったとしても、細かい金網は柔らかい分修復しやすい。柔らかいがゆっくりの体当たり程度では形を変えるのが精一杯のこの細かい金網に、何体のゆっくりが体当たりしたのだろう。

「気になりましたか? それとも気に入りましたか?」

 無意味な明るい声。これは多分知人が電話口で喚いた妙に明るい……浮かれた職員だろう。

 知人から聞いた話をした途端、饒舌に喋りだした事を適当に聞く限り、知人に熱く熱く語ったのはこれらしい。

 マシンガントーク。これをマシンガントークというのだろう。そう思ってしまう程、一般見学者の案内役手当を貰っている職員の舌は止まらない。止まらないので説明など聞いていなかった。聞かなくても判るくらい当たり前の事しか話していなかった。……聞いていなかった。

 話を切り上げる為に声をかけるのも面倒なマシンガントーク。だから誘われるままに敷地内に入り何となく歩いていた。

「ゆっくりしていってね」

 漆黒の髪、深紅地に真白の抜き。光沢のあるレースの縁飾り。きめ細かい白い肌。真っ白な歯、明るい赤の唇。

 雪のような白い肌、カラスのような黒い髪、血のような赤い唇を持った子供が産まれますように。願ったのは白雪姫の母親の筈だったのに。

 髪に天使の輪があるれいむ。烏の濡れ羽色の髪を持つれいむ。触ったらすいつきそうな肌理細かい真っ白な肌を持つれいむ。真っ赤な唇を持ったれいむ。真っ白な光り輝く歯を持ったれいむ。存在が信じられないれいむ。

「あああ」

 何故か苦悩しているれいむ。私が返事をしない事がそれほど苦痛……

「こんにちは、にんげんさん」

 苦悩の末に出た言葉はそれだった。

 だから、「こんにちは」と答る私を見てれいむが破顔する。

「れいむ、おばかだからにんげんさんへのごあいさつさんはこんにちはさんなのをわすれていたよ。しっぱいしっぱい」

 微笑ましいと笑い返したくなるような全開の笑顔。ゆっくりなのに微笑ましいと思わせる笑顔。お飾りに輝くのは金色のバッヂ。これが喚く知人が言っていた金バッヂれいむのようだ。

 「このれいむは一職員のペットという事になっていますが……」

 職員が説明する前に見目麗しいれいむがまりさに絡まれていた。

「ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね」

 ゆっくり同士が挨拶を交わす。マシンガントークの職員は止めない。

「れいむはきんバッジさんなのぜ、まりさはぎんばっじさんだけど、たーくさんたーくさんはたらくぜ。にんげんさんをゆっくりさせられるぜ」

 人間をゆっくりさせられるのであれば、バッジは引き剥がされないだろう。帽子に残った乱暴に引き千切った跡がまりさの嘘を告発する。

「だからにんげんさんにまりさをしょうかいするんだぜ」

 私達を認め、私達に露骨に視線を向けるまりさは汚かった。性根も多分汚いだろうが、それ以前に見た目が汚かった。

 砂糖細工の髪はべったりと肌に付き、形容しがたいゴミにまみれている。とがっていた筈のウィッチハットは、生涯一度も尖った記憶は持ち合わせた事がないという程皺が寄りへたっている。命の次に大切なお飾りがその状態なのだから本体は言うまでもなく。黒やグレー、茶褐色に汚れた肌は、汚れと変わりないほどやつれ皺が寄れ…… 醜悪だった。

「ばっじさんはどうしたの?」

 素朴なれいむの質問。光り輝くれいむの質問。

「まりさはおちびがほしかったぜ……」

 そこまでまりさが言った時にマシンガン職員がひょいっとまりさを持ち上げまりさの後ろ髪をかき揚げてスマートフォンで撮影する。文字で書くと簡単だが実際やってみると面倒くさい事この上ない行動。それを手慣れた調子で行うところを見るとこれは業務の一つなのだろう。

「加工所公認バッジを修得したゆっくりには一律後頭部にQRコードを印字してあるんです。個体ナンバーしか識別出来ないんですが、加工所末端で調べればバッジ認定検査で登録された飼い主の居住区、マイナンバーまで判る…… あったり前ですね。っと。きちんと飼い主から届けが出ていますね。子供が欲しいと家出した個体」

 説明しながら手の中で暴れているまりさを職員が地面に下ろす。

「まりさはおちびがほしくてげっとわいるどしたぜ。くそどれいはおちびはだめだっていったぜ。おちびはゆっくりできるのに」

 まりさの胸を張っての主張にれいむは首……全身を傾げている。

「れいむ、おねえさんがゆっくりしているのがいちばんゆっくりできるよ。いけんのそういでごめんねー」

 傾げた結果に出たのであろう答えを明るく爽やかに、輝く笑顔で答えきったれいむ。心底人間と共にいる事を幸せ、ゆっくり流に言えば「超ゆっくり」している状態と心底信じているのだろう。

「まりさはれいむといっしょにゆっくりできるぜ」

「れいむはおねえさんとふたゆで、しっじょうさいこうのへぶんじょうたい。しごくのゆっくりぷれいすだから、まりさのはいるせきはないよ。ごめんね」

 飼いゆっくりとして正しい回答を胸を張って答えるれいむ。顔を歪めるまりさ。それでもまりさがれいむに手を出さないのは人間の恐ろしさを知っている為か。

「はい、では所有権を放棄して下さるんですね。放棄宣言を録音させて頂けますとゆっくりフード幸せ味を1kg進呈させて頂きます…… それなり味ですか、それでは5kg…… ゲロまず味なら8kgになります。ええ、需要が多くて、市価相場より少なく…… はい、では……」

 マシンガントークが静かだと思っていたら仕事をしていたらしい。

「れいむとおねえさんのみつっづきじょうたいにみずをさそうなんて、げすまりさにもほどがあるよ」

 多分、人間が後ろを歩いているという状況を忘れているのか、美れいむが屑まりさから離れるためにぴょんぴょんと跳ねていく。

 よくよく見てみればおくるみと言われる製品より短いが生殖器と排泄器を覆う大きさのシリコン製のカップを履いている。

「加工所制作品の密かなロングセラー、ゆっくりシリコンシューズです」
 
 何故か説明が始まる。

「成体、それもトイレトレーニングが完璧に行われている個体にしか使えない。というハンディーがありながらもロングセラーなのは、繰り返し使えて、布製より丈夫。メンテナンスも基本洗って干すだけ。価格も安い。レイパー予防にもなります」

 そして何故か小声に

「乳白色のせいでゆっくりには見えないらしくて、勝手なすっきり防止にも使えるというにか、強制去勢にも使えます」

 しばらく考えってなるほどと納得する。

 だからこそこの美ゆっくりは敷地内とはいえ野良ゆっくりやら捨てゆっくりが集まっているこの研究所の敷地内を自由に動けるのだ。
「もしよろしければこれを被っていただけますか?」

 何処から出したのか。と、突っ込みたくなるような仮面だった。正直に言えばシリコン製なので丸めて持っていたのだろう。それは派手な花や葉を印刷された代物で目や鼻、口はカムフラージュされている。

「すいません」

 少しも済まないと思っていない口調に苦笑いで仮面を装着する。

「れいむでもいいわー!!!、ゆっくりしていってねー!!!」

 レイパーだ。40代前半で洒落でバイアグラを飲んでしまったせいで下着に収納出来なくなった(激痛のせいで。試すのは自己責任)妻帯…… 子持ちの世帯主のように剥き出しの恥ずかしいものをさらけ出したまま(蛇足だが子持ちの世帯主は傷みのあまりのたうち回っている姿を、たった一人の愛娘に見られ「お父さん、馬鹿?」と真剣に尋ねられたらしい)れいむの前に粗末な物を曝け出し飛び出したありすを職員があっさり捕まえる。

「おそら……」

「バッジがついているから写メっと。飼い主情報アクセス。レイパーになっていますけれどどうしますかとメール送信」

 手慣れている。とっても手慣れている。

「うわあ、お返事、早い。どれどれ『今すぐつぶして下さい』」

 ……だろうな。己が可愛がっていた多分都会派ありすがレイパー。つぶす以外の選択肢はないだろう。

 と、下を向けばれいむが真剣に首を傾げている。

「どうしてれいむなんだろう? れいむ、ばーじんおばかなのに。なんでひょうってきさんになるんだろう」

 自分が少なくともこの敷地内にいる野良ゆっくりが嫉妬する美ゆっくりという自覚がないらしい。

「ではこちらでバッジは破棄させて頂きます。登録も抹消させて…… 今後ゆっくり購入の際に不利になる事はありません。……が所有権を放棄して下さいましたので、ありす種に関しては最寄りの加工所に来て下さいませば時価でお譲りします。……勿論去勢済み。バッジはありませんがお好みの…… ええ、勿論、そういう特殊なありすも勿論……」 
  
 どんな特殊ありすが時価売買されるのか判らないが話は円満に終わったらしい。

「ああいうありすをどうするのかと思っていたんですが、需要ってあるんですね」

 朗らかなマシンガントークに「ああいう」の内容を聞いてしまったら負けな気分がするので、好奇心を飲み込む。マシンガントークがちょっと残念そうな表情を浮かべた様に見えたのは自分の願望だろう。

 願望だろうと思ったのは、ニコニコ笑いながらポケットからビニール袋(多分45l)を取り出すとれいぽーありすを放り込むと地面に置いて踏み潰す。躊躇いの無い行動は一撃でありすの命を奪う。

 見事なものだ。先ほどのゲスまりさはこの研究所では問題がないのか、問題にする価値がないのどちらかだが、さほど違いは無いのだろう。

「敷地自体は結構広いんです。というより広い敷地がほしくて郊外に建てたそうです。本当か嘘かは判りませんが。ここは基本的には通常の野良ゆっくり対応です。雑草は生え放題で餌は取り放題。人間が介入するのはあのれいむにプロポーズした個体にれいむの飼い主が個人的にゆっくりフードそれなり味を際限なく与えるだけ」

 そしてマシンガントークが口を閉じる。雑草だらけの敷地を見回す。黙ってマシンガントークの次の語りを待つ。

「あのれいむがお嫁に行くからと、れいむが結婚すると決めた相手に新しい段ボール箱を渡して際限なくゆっくりフードそれなり味を与えると、どうして他のゆっくりを孕ませるんでしょうねぇ。れいむの準備が整うまで新居の準備に励んでくれとタオルやプラスチックの皿など渡して。新居の準備が整う前に他のゆっくりを孕ませる。
 確かにれいむはおくるみのせいですっきりは出来ませんが人間が見ても美ゆっくりです。人間基準ですがゆっくりしています。それなのに他のゆっくりを孕ませる。その心境というのが判らないんですよね」

 マシンガントークが微笑みながら語っていく。だから聞いてみる。本当に判らないのか、と。

 れいむの後ろについて歩いて行く。ゆっくりは顔が見えなければそれが人間だとは気がつかない。きっと犬や猫も顔が認識出来なければゆっくりにとってはそれが何かを判断出来ないのだろう。

「すっきりする理由は判りますよ。際限なく貰えるゆっくりフード、苦労せず手に入れた段ボール、口にすれば貰える家財道具。一気にゲス化が進んで都合の良いゆっくりとすっきりする。それだけですから」

 では何故?

「心境が判らない。なんでれいむに嫌われないと思えるのか?」

 それは……
 
 思い上がりだろうか、ゲス化故の。れいむが自分を嫌ったりしないと決めつけている。

「きっとそうなんでしょうねぇ、野良落ちしたり元々野良だったりするゆっくりは飼いゆっくり、それもバッジのレベルが上がれば上がるほどゆっくり出来ないゆっくりだと決めつけて見下していますから」

 そう、バッジ試験に受かる為にしたくもないゆっくり出来ない事を覚えさせられたゆっくり。それが飼いゆっくり。のはずだが……

「気がつかれました? 嬉しいです。人間に寄り添って生きていく事を最高のゆっくりだと認識する個体です」

 ぺこんぺこんと元気よく跳ねていくれいむを手で指し示す。

「知能の高い餡系統同士から生まれた赤ゆっくりを、人間と暮らす事が一番ゆっくり出来ると理解しているゆっくりに育てさせるんです。犬や猫の素人ブリーターと同じ方法ですね」

 確かにそれが一番金バッジを習得出来るゆっくりを作り出す方法だろう。ただそんな餡系統を作り出す施設や時間など……

「加工所ですからそういう施設も時間もある訳です。というよりこっちの方は副産物で、本来はコンポストとか、バイオ原料とか。食用とか。そういう人間にとって便利なゆっくり。家畜ゆっくりを作り出す研究をしている訳です」

 ゆっくりを使う研究。

 ゆっくりが発生した当初、人間は驚いた。どう見ても生首、人語を話す。意思の疎通が出来る。でもまんじゅう、もしくは大福。それなのに何でも食べて餡にする。そんな「なまもの」が同時に、多量に、各地に発生した。

 それは人間にとっての最高の「パートナー」になる筈だった。筈だった、というのは余りにも余りな性格……性分のせいだった。

 性根が腐っている。そうとしか表現出来ないゆっくりの言動。

 ゆっくりが発生して蔓延してすぐに気がついた。自意識過剰、超過剰。自分の周りにいるものをすべてナチュラルに見下す。

 それも良いだろう。その信念に従って綺麗に生き綺麗に逝けば。

 ゆっくりは綺麗に生きなかった。見下している癖に生き汚い。これで嫌われた。

 声が大きい。大きな声で自分勝手な事をわめく。更に嫌われた。

 でも食べた物を全て餡子に変化させる。死にやすい代わりに多産、というペットというパートナーとしてではなく、道具としてみた時はこれ以上なく有能な存在だった。

 生ゴミを食べさせる。この生ゴミの中には紙類や布類も含まれるが、そういう有機物を食べさせる。身体の中で餡子に変え、餡子を排出する。その排泄物やゆっくり本体を生ゴミとして回収する。ゴミはゆっくりの活動エネルギーの分かさは減っている。餡子となり水っぽくなっているのが難点だが、各自治体のゴミ焼却炉はいかに餡子を効率よく焼却するか。そしていかに一定の熱エネルギーを回収し活用するかを追求した物に変わっていった。

 勿論それ以外の利用法もある。完全な無菌状態で育てられた母体から生まれた食用ゆっくり。加工所産の物は俗に言う赤ゆっくりばかりだが(育てるのにコストがかかるせいらしい)、ゆっくり料理を提供している飲食店では、厳重に衛生管理されたゆっくり農場から、亜成体や成体のゆっくりを買い付け料理に使っている。

 ゆっくりを食べる捕食種というゆっくりの中には何故か身体の中が挽肉に変わる(餡子を食べているのにだ)種類もいる為、ゆっくりを提供している飲食店はそこそこ客入りも良いようだ。

「ゆっくりしていってね!」

 当たり前のゆっくりの挨拶が響く。

「ゆっくりしていってね」

 私達の前を行く驚異の美れいむが自ゆんの前に飛び出してきたれいむに挨拶を返していた。

 銅バッジ。飼いゆっくりである。それ以上でもそれ以下でもない。飼いゆっくりとして最下位の筈の銅バッジれいむはとても可愛かった。

 れいむに可愛いというのはおかしいかも知れないが、綺麗に洗われたに違いない漆黒の髪。ゆっくり達がお飾りと呼んでいる赤地に白い水玉模様のリボンは染み一つない。レースにほころびも無い。肌もつやつやとして皺一つない。銅れいむの癖に、と罵られてもおかしくないほどこのれいむは綺麗で愛らしかった。驚異の美れいむと比べれば確かに劣るが、この銅れいむは分不相応に可愛がられ愛されているのが判る。

「れいむはれいむだよ」

 屈託なく銅れいむが自己紹介をする。飼い主に愛されているのがとても良く判る。相手が自ゆんに悪意を持つはずはないと信じ切っている。それだけ相手を信じられるほど可愛がられているれいむ。

「れいむはれいむだよ」

 金れいむも挨拶する。こちらも絶対に裏切られる筈がないと信じ切っているのだろう。自分は飼い主に愛されているという余裕が隠しきれないほど溢れ出ている。

「れいむ、もしかしてげっとわいるどしたの?」

「まさか。れいむはそんなこうどうりょくっはないよ。たんにうっかりまいごさんだよ」

 銅れいむが笑いながら答え、金れいむが大きく安堵の溜息をつく。
「れいむ、へんなことをきくけれどすっきりはしていないわよね」

「れいむ、おねえさんがえらんでくれるさいこーのだんなさんにであうまで、バージンさんをししゅするっておねえさんとやくそくしているから。そのへんのおねえさんのおめっがねにかかりもしない、まりさにはまむまむをひいらいたりしないよ」

 銅れいむは言い切る。
 
 飼いゆっくりが迷子になる。ゲットワイルドする。につきものの意味の判らない「おちびちゃんはゆっくり出来る」という主張をしないところを見ると、この銅れいむは本当に迷子ゆっくりなのだろう。

「どうしてまいごさんになったの?」

「それはぎんばっじまりさのわるぐちさんになるからいえないよ。どうばっじさんしかとれなかったれいむはしかたないよ」

 本気で仕方ないと思っているらしい。銅バッジれいむは大きく溜息をつき、唐突にマシンガントークが銅れいむを掴むと後ろ髪をかき揚げ、QRコードをスマホに読み込ませる。

「間髪入れずです。仕事が終わり次第迎えに来るそうです」

 メールを送った途端、着信音が響きマシンガントークが銅れいむを下ろす間もなく返されたメールに苦笑いを浮かべながらいう。

 きっと銅れいむの飼い主は地域ゆっくりや愛護団体、加工所からの銅れいむを保護したという連絡を心待ちにしていたに違いない。自分の銅れいむが絶対にゲットワイルドしない。迷子になっているだけだと信じている。

「びっくりしたよ、きゅうにおそらをてにいれて、きゅうにてばなしたよ」

 確かにゆっくりのリズムに合わせられなかった。

「れいむはおちびちゃんがほしい?」

 突然持ち上げられて突然下ろされて軽くパニックを起こしている銅れいむに金れいむが問いかけ

「ほしいよ、きまっているよ。れいむはほしくないの?」

「れいむはこそだてでーぶいでーさんをみたことがないの?」

 質問に質問で答えるのはマナー違反だろうがゆっくりにはそのマナーはないらしい。

「こそだてでーぶいでーさん?」

「どれだけおちびちゃんがゲスでおねえさんやれいむがゆっくりできないかをどきゅめんとりーさんでつくったでーぶいでーさん」

「ええ~」

 銅れいむが露骨に声を上げる。

「おなかがすいたらなくおちびちゃん、おといれさんをむししてそのばでうんうんするおちびちゃん。それいがいはすーやすーやしているおちびちゃん。といれのおせわさんも、ゆっくりフードをかみくだいてだんごにして、おちびさんにたべさせて。うんうんさんをじゆんでだせないから、あぬすさんをぺーろぺーろ……
れいむ、みていないの?」

 金れいむの言葉にドン引きしている銅れいむの表情に気がついた金れいむが銅れいむに聞いている。

 聞かれた銅れいむが無表情のまま何度も頷いている。どこでドン引きしてしまったのか判らないが、この銅れいむは子育てが思っている以上に悲惨な物だという事に気がついたらしい。普通感覚のれいむよりは知恵がある個体らしい。

「いちど、とうめいなはこさんかぞくようをかってもらってからこそだてでーぶいでーをみて、おちびちゃんがほしい。っていったほうがいいよ」

 金れいむが断言し、金バッジ持ちゆっくりのいう事には絶対肯定の銅れいむが何度も頷く。金れいむ、思ったより有能なのかも知れない。単に気のせいいかも知れない。

「でもとうめいなかこさん! ゆっくりできないよ」

「でもとうめいなはこさんにはいらないと、かいぬしさん…… おねえさんがゆっくりできないよ。れいむはおねえさんがゆっくりできないことがしたいの?」

 金ゆっくりの質問はある意味飼いゆっくりとしての最低限の基本だった。これが守れないのであれば飼いゆっくりではいられない。

「おねえさんがゆっくりできないのはいちばんこまるよ。どうしたらいいんだろう」

 この銅れいむと飼い主は最低限の飼育契約は出来ているらしい。銅れいむは飼い主の立場を一番気にかけている。自ゆんがおちびちゃんを持ちたい以上に飼い主の都合を考えている。

 「すまほさんのあぷりさんでおちびちゃんのなきごえというのがあるから、それをよなかになんかいかかけてもらってから、おちびちゃんがほしいかどうかおねえさんとそうだんしとほうがいいよ」

 金れいむがいう。おちびちゃん……多分赤ゆっくりと呼ばれるあの時期の甲高い鳴き声を配布しているアプリ。一体何に使うのだろうか?

「目覚ましに使われる方が多いですね。イライラして嫌々起きられるそうです」

 マシンガントークが説明するところを見ると加工所制作らしい。

「れいむ、れいむかられいむにすっきりを強制した銀バッジまりさの話を聞いてくれるかな?」

「れいむ、れいむにすっきりっをきょうせいしたげすまりさ……じゃあなくてぎんまりさはおねえさんもしっているまりさ……」

「どうしてれいむがおなじまんしょっんさんのぎんばっじまりっさにひみつすっきりっをせまられているうちにまいごさんになったのをしっているの!」

 本気で銅れいむが驚いている。迷子になった理由がじゆんより階級が上のまりさのせい。となればそれ以外考えられないが、ゆっくり的にはその単純な推理……推測さえ不思議な現象らしい。

「さすがきんばっじさんだねぇ」

 必然を述べた金れいむに銅れいむが感嘆し、金れいむが大きく溜息をつく。溜息?

「れいむ、これからはれいむがどうばっじさんだからってすっきりをせまってくるゆっくりは、ぜんぶおねえさんにほうこくしないといけないよ」

「でもおねえさんはかりでいそがしいよ、ざんぎょうさんでいちにち16じかんもはたらいているんだよ。れいむのことでわずらわせたくないよ……」

 お姉さん、即ちOLを16時間も働かせる企業。毎日サービス残業4時間。どんなブラック企業だ。

「ざんぎょうだいぜんがくもらえたからてどり25まん!ていっているけどいえないよ」

 手取り25万。年収400万を超える…… ブラックじゃあないのか?

「かりばまではしって5ふんだからがんばれるっていっているおねえさんをこまらせたくないよ」

 職場まで走って5分。時間外は支給されて手取り25万円。それはブラック企業勤務で搾取されていると言いがたい。それでないと自分が悲しい。単にホワイト企業勤め、ただ社員数が少ないだけ、

「おねえさん、たいへんなのね」

「でもしかくがないからしかたないって」

  資格無しで残業代が全て支給で手取り25万。ある意味超ホワイト企業ではないか。

 いやいや、ここはお姉さんの職場環境を羨ましく思う場面ではない。無資格で残業代全支給で手取り25万円。羨ましすぎるが羨ましく思ってはいけないだろう。

「ぼーなすさんは1かっげつきるし」

 よし、それなら総支給年収400万だ。

「この子と同じマンションに住んでいるまりさっと」

 マシンガントークは一人で勝負をしていた自分を無視して、この愛され銅れいむに言い寄ったあげくに迷子にまで追い込んだ銀バッジマリサ候補を何匹か見つけていた。

「れいむ、このまりさがれいむにすっきりを申し出たの?」

「しらないまりさだよ」

 スマホ画面を見てれいむが言い切る。

「良く見て……」

「れいむはひとっめでわかるよ、ばかにしないでね」

 自信過剰過ぎる発言。だからこその銅バッジ。

 だからマシンガントークが画面に映っているであろうまりさの画像を銅まりさに見せていく。

 銅まりさ、銀まりさは安価故にすぐ死ぬ。という当たり前の常識は一般に知れ渡っていた。もっと安価ですぐにゲス化するれいむはもっとよく知られていたが。だからこそマンションで飼っている人間もそこそこいるのだろう。

 違う、違うと言っていたれいむがある一体のまりさの画像を見た途端黙り込む。無言が全てを語っている。

「加工所発行の銀バッジ持ち…… ちょっと厄介かも」

 マシンガントークの言葉を聞きながら

「どうしてにんげんさんはかそうさんっをしているの? じつはHENTAIさん?」

「ちがうよ、にんげんさんはふぃーるどわーくさんのためにへんそうさんをしているんだよ」

銅れいむの疑問に金れいむが答えているがこの状況は銅れいむの意見が正しいだろう。

「でもこの案件は糞まりさに制裁したいし。でも出てる被害届けは銅バッジばかり…… 知恵はある…… ゆっくりレベルで……」

 マシンガントークがブツブツと呟くとスマホの画面をいじり出す。
「あ、気にしないで下さい、業務では無くて私怨です」

底抜けの笑顔。向けられた笑顔に背筋が寒くなったのは気のせいか。
「これ、使えるかな?」

 そしてまた銅れいむを持ち上げるともう一度QRコードを読み取る。

「よし、使える」

 一体何が使えるんだ?

「にんげんさんだ~」

「にんげんさんがはしってくるよ~ ゆっくりにげるよ~」

 ゆっくり達の声に振り返る。髪振り乱して走ってくる女性。

「おねえさ~ん」

「れいむ~」

 逃げそびれたゆっくり達を蹴り飛ばしながら走り込んだ女性がしゃがみ込むと銅れいむを抱き上げる。

「おねえさん、ゆっくりしていってね!」

「ゆっくりしていってね!」

 人前で泣きながらゆっくりと頬スリする女性。珍しいものを見物している。思わず写真を撮り、糞面倒くさい友人に送ってみる。

 返事は早かった。メアドを聞け、合コン希望。

 何が悲しくてゆっくり加工所の研究所の庭でナンパをしなければいけないんだ?

「このれいむの事でお話があります」

 感動の再会の興奮が落ち着いた女性にマシンガントークが静かに言った。



 「ゆゆゆ、れいむだけでしゃわーさんをあびられるの?」

「れっでーのたしなみだよ。おさんぽのあとのしゃわーさんは」

 驚いている銅れいむをつれて金れいむがシャワー室に行ってからマシンガントークが喋り出す。

 ここが加工所の研究所でゆかびで死亡したゆっくりの身体に生えるゆっくりだけの研究をしている。ので一生銅れいむはゆかび防止剤を飲まなければいけない事。ゆかび防止剤は加工所で用意するけれど飲ませるのが面倒だったられいむの譲渡書を書いて貰えばこのまま置いていって良い……

「私にれいむのゆかび防止剤を買うだけの財力が無いと思っているんですか!」

「いえ……」

「れいむにゆかび防止剤をのませる時間がないと思っているんですか!」

 そっちはちらっと無いかも知れないと思っている。離れるタイミングを逃して一緒に話を聞いているが結構沸点が低いのかも知れない。

「ゆかび防止剤、何故かゆっくり幸せ味1年分をこの金額で」

「! 9割引……」

「証明書をお渡しします。というより顔パスで良いですけど」

 へらへらとマシンガントークが言い女性がいぶかしげな顔をする。
「その代わりあのれいむに銀バッジ試験を受けてもらえません? 勿論費用はかかりませんから」

「れいむですよ?」

「金バッジれいむ、可愛かったでしょう?」

 話の意味が判らない女性がマシンガントークを眺める。

「とっとと話を進めますけど貴女のれいむとあの金バッジれいむは同じ餡系統というのか、同父同母の姉妹です。生まれた時期は全く違いますけれど。驚くのは後にして下さい。金バッジ餡系統、避妊加工済み子れいむ、という商品名だったはずです」

 女性が何度も頷いている。

 マシンガントーク曰く、れいむ種は飼いゆっくりとしての価値は最低だが母体としては最高なので、母体用の金バッジ相当のれいむを加工所で繁殖していて、母体として使っているが、時々母体としては適さないれいむが生まれてくる。それが金バッジれいむで銅バッジれいむだった。

 母体れいむは出産、赤ゆ教育を行う為、飼いゆっくりになったら飼い主をゆっくりさせる事を教え込まれるが、この教育中に飼い主をゆっくりさせる事を極めてしまうものがいる。おちびちゃん至上主義、ゆっくり至上主義に習って飼い主至上主義と呼ばれているそうだ。

 何事にも極端なのがゆっくりだが、「おちびちゃんをつくるよりかいぬしさんにゆっくりしてもらえるとゆっくりできるよ」というれいむには子育ては任せられない。

 なので、餡系統を守る為に完全避妊加工をした後に一般に販売している。銅バッジしか持っていないのは、バッジ試験を受けさせる為の教育をする時間が加工所には無いからだった。

「じゃあうちのれいむも……」

「あ~ 同腹は全員母体資格が無くなっているので、経年による母体の餡子の劣化が考えられるので、金はちょっと」

 目を輝かせた女性にバッサリとマシンガントークが言う。

「ああ、でも銀は確実。何せ飼い主至上主義だから」

「素で銀バッジ、か」

 女性が呟く。意味が判らない自分にマシンガントークが説明してくれる。銅バッジは最低限人間と同居が出来る個体。トイレで排泄出来る。寝床で寝る事が出来る。餌皿から餌を食べる事が出来る。病気を持っていない。この程度でとれる。

 銀バッジはもう少し人間に都合が良いゆっくりになる。大きな声を上げない。一人遊びが出来る。留守番が出来る。野良ゆっくりとは話をしない。毎日お風呂に入る。お飾りを飼い主に渡しても大丈夫。配偶者を欲しがらない。勝手に繁殖しない。など。

 金はそれ以上で文字が読めたり、時計が読める。10進数と60進数を理解している。など小学校低学年の知能を持っているらしい。

なるほど金バッジれいむが「ゆっくりしていってね」と挨拶をした後「こんにちは」と言い直したのはそのせいか。

 でも何故銀バッジを? 疑問に思っていた事を尋ねる。

「ひみつすっきりを迫って銅バッジゆっくりを迷子にさせる銀バッジを捕まえる為」

 ?

 女性も自分も同じ表情を浮かべているのだろう。

「自分から『げっとわいるど』とか『じゆうをてにいれたぜ』とかいう銅バッジならどうなろうと構わないけれど、少なくとも加工所に『うちのゆっくりが行方不明になりました』と捜索願を出される位、お馬鹿ちゃんは守りたいというのか」

 マシンガントークが笑う。

「バッジ付き迷子ゆっくりは普通に地域ゆっくりや他の飼いゆっくりに見つけて貰えて保護されれば何の問題も無いけれど、変な野良に捕まってすっきりしてしまったら。それがれいぽーでも普通の飼い主は引き取り拒否するから」

「私、加工所の人って虐待お兄さんばかりだと思っていました」

「商品にケチをつけられるのが厭なだけのツンデレお兄さんも多いんですけれど」

 はっきり口に出した女性にマシンガントークが苦笑い。

「ただ銀バッジゆっくりと銅バッジゆっくりでは価値が違いすぎるので訴える事は出来ないけれど……」

「銀バッジ同士。それも銅バッジから飼い主が教育した銀バッジの方が飼い主が手間と時間をかけているので裁判上ゆっくりの価値が上になる」

 マシンガントークの台詞を女性が奪い取る。奪い取られたマシンガントークがにっこり微笑む。

「さすが、T公園の黒天使、話が早い」

 え?

「……そう言うのって判るんですか?」

「だって悪目立ちですから」

 マシンガントークの台詞に女性……二つ名を持つ虐待御寧惨が頭を抱える。

「うわああ、内緒にしていたのに~ 後片付けもしっかりしていたのに~」

「ええ、後片付けをしっかりしてくれているので、とっても助かっています」

「この件はれいむには……」

「いいませんよ。あのれいむは愛でお姉さんに飼われて最高にゆっくりしているんですから」

 マシンガントークの笑いながらの答えに御寧惨…… お姉さんは安堵の溜息をついていた。




 考えてみればあなたは誰なんです?

 自分の飼いゆっくりを抱きしめている女性に聞かれる。

 うざい友人の疑問を解く為だけにこの施設にやってきただけのただの通りすがりで、そのうざい友人の希望、メアドを聞く、合コンを開く。をどうやって叶えようかと悩んでいます。に

 「一緒にT公園の後片付けをしてくれたら」

 出来ればまりさの方が好みです。後片付けはウザい方が喜んで。

 「考えさせて下さい、でもお返事はメールの方が良いですよね」

 このメールアドレスはしばらく自分だけのものにしていいだろう、多分。






T公園の黒天使


あああああああああ
れいむがいない、れいむがいない。
ただそれだけで落ち着かない。

絶対に自発的な家出じゃあ無い。それは判っているけれど、じゃあ一体どうしてれいむが消えた?

あああああああ

 もうそれだけでも苛つくのに。

 仕事終わりに上司に押しつけられた田舎パイ5個にビスケット1袋。
 「あなたが飼っているゆっくりって『あまあま』と言って甘いものが好きなんでしょう? だからお土産にして。あっても困るし」

 だから人間が食べる菓子はゆっくりには至福の味すぎて一度それを口に入れると他の物が食べられなくなるから、人間用の菓子は毒以外の何物でも無い。というのを5回位繰り返したところで諦めた。上司にゆっくりの生態を教える事を。

 悪気は無い、絶対にない。ただ、自分が興味が無い新しい事を覚えるのが不可能なだけ。

 だから黙ってにっこり笑って「ありがとうございます」と受け取る事にしているけれど……

 しているけれど、私は典型的な左党。洋菓子は一切拒否。和菓子は饅頭以外はOKだが1つで充分。複数食べられるのはすあまのみ。という超偏食。

  だから私は公園に向かう。この菓子を消費する為に。


 自転車で赴いたT公園は今は珍しい芝生が無い公園。正確に言えば公園では無い。

 河川敷の堤防の下。河原では無く遊水池と呼ばれる場所。昔ながらの雑木林。を、切り開いて作ったゲートボール場。の横に作られた東屋とベンチと簡易トイレだけの空間。を、まとめて地主というのかゲートボール場の持ち主の名前をとってT公園と呼んでいる。単にゲートボール場と言うよりT公園と呼んだ方が上品ぽい。というのが命名理由。

 だから私はその下はタイル張りの東屋の床に握りつぶした田舎パイをまき散らす。と同時に雑木林のあちこちから飛び出してきて田舎パイの破片に飛びつくゆっくり達。

「これはまりっさのあまあま……」

「れいむのあまあまだよ」

「わかってねー」

「いなかもの、いなかもの」

「ちーんぽ」

 1個分の田舎パイの破片より多いゆっくりが砂場に殺到する。赤ゆっくり子ゆっくりなど、体格どころか全てが弱いゆっくりは踏み潰される。ぱちゅりなど弱いゆっくりも弾き飛ばされ潰される。東屋の床が餡子やチョコレート、生クリーム、カスタードクリームで汚れていく。

 充分同族を踏み潰したゆっくり達に粉々に砕いたビスケットをかける。

「れいむはれいむだよ、たべないでね」

「まりさっむーしゃむーしゃするぜ」

「とかいはだわ!」

「でかまら!」

「わかるよー」

 自分より弱いゆっくりに噛みつき食いちぎり、ゆっくり達が歓喜の声を上げる。彼女達には同種はただのあまあまにしか見えないのだろう。実際、お飾りが飛び潰された他のゆっくりの中身にまみれたそれは動くだけの醜悪な何かに過ぎない。

  あまあまバトルロワイヤル。生き残った物も舌肥えしてしまったので最低同族食い、最悪人間のあまあま恐喝。それ以外に生き残るすべは無い。

 力尽きながらも残り数匹になったところで新しい握りつぶした田舎パイを投入!

 「あばあば~」

 多分、あまあまと言う叫び声に集まってきた土手向こうのゆっくり、そして遊水池向こうの住宅街から集まってきた野良ゆっくり達が参戦する。

「でいぶのあばあば」

「いなかもの、いなかもの」

「まりちゃは!」

 又始まるゆっくり流に言えば餡子を餡子で洗う争い。動きが鈍くなれば握り潰したクッキーの粉を振りかけ、個体数が減れば田舎パイを握りつぶしてまき散らす。

 そんなゆっくりを見ても私の心は晴れなかった。

 れいむがいない。私のれいむがいない。

 上司に押しつけられた菓子を片付ける為にゆっくりを利用した。菓子を食う為に共食いをするゆっくりは余りにも馬鹿馬鹿しくて。仕事が忙しすぎて遊びに行けない私の最大のストレス解消だった。

 踏み潰し、食い残されたゆっくりを箒とちり取りで片付ける。食い残されて目だけを動かしている個体。お飾りも髪の毛も無いから何種か判らない個体。下半身(?)を失い動けたら即死出来るのに動けない個体。そんな物もゴミとして片付ける。

 助けて、助けて。

 この状態を作り出した原因にすがるゆっくりを無視している時、誰よりもゆっくり出来る。私のゆっくりタイム……

 突然なったスマホに驚きながら嫌々受信する。突然の電話は上司のもの。

「御免、明日出てくれる? 貴女が起きられる時間で良いから」

 きっとそうに違いない。起きられない、起きられない……
 れいむがいない、起きられない……

「こちら加工所です、あなたが捜索願を出されているれいむを保護しました……」

「いますぐ行きます、迎えに行きます」

 れいむが帰ってくる、私のれいむが帰ってくる。銅バッジなのに、ルアーとして最高級なれいむが帰ってくる。

 私のれいむ、私のれいむ、私のれいむ、私のれいむ

 私のれいむが帰ってくる。 


【おわり】